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February 20, 2012

日本のテキスタイル輸出の処方箋 j-fashion journal(2)

■特集「日本のテキスタイル輸出の処方箋」

(1)輸出を伸ばしている企業は多いのか?
 
 2011年12月9日付け繊研新聞「記者の目(小平麻由記者)」の見出しには、「円高でも伸びるテキスタイル輸出企業」「差別化で高収益を確保」「残り続ける日本的な感性」とある。
 記事の内容は、以下の通り、下記7社の取材に基づくもの。
 ①小松精錬の事例:[上期、海外向け自販の国際営業部が前年同期比12%増収。うちスポーツ向けの汎用品は新興国メーカーとの競合激化で減収減益だったが、差別化素材が中心のファッション分野が23%増で、ラグジュアリーブランドを顧客に抱え、付加価値の高い素材を受容する欧州の売上高が22.5%増の19億円と大きく伸びた。利益も「11ある自販ブランドの中でトップ」で、円高局面でも強さが際立つ。4~11月も年間75億円計画に向けて順調で、このまま推移すると56~60%の大幅増収となる。]

 ②第一織物(福井)の事例:[今期(12年7月期)、米国をのぞく全地域で伸びている。増収増益だった前期と比べ30%増収、利益も大幅増のペースだ。ダウンジャケットのブームは過ぎたと見えるが、同社の素材は、生産能力以上の引き合いが数年にわたり継続し、値崩れを起こさない。欧州の客からは、「(後加工やダウンパックなしでダウン抜けがしない)本物のダウンプルーフ機能を持った唯一のテキスタイル」と賞賛され、中国・韓国は欧州で売れているので欲しがる-という構図だ。『本物』の開発に時間をかけ、発売後もバリエーションの拡大を継続する。そして、毎年、需要に対して適量を供給し、価値を維持する。一般的なテキスタイル売りと比較して、利益率は驚くほど高い。]
 ③岡田織物(和歌山)の事例:[フェイクファーの岡田織物は11~12年秋冬向けが、前年同期比倍増の4000万円となり、輸出比率は年商の3割に高まった。12~13年秋冬向けはもう一段増える見込み。売り先は欧州メゾン。発色のいいフォックスや樹脂加工が人気だ。「二流、三流のアパレルは数量は大きいが円高になると途端に買わなくなる。一流は値段が関係ない」と言う。日本はフェイクファーに定評があり、衣料用に強い企業となるとそう多くない。]
 ④天池合繊(石川)の事例:[1平方メートル当たり10グラムの軽さ、フィルム風の外観で知られる「天女の羽衣」の天池合繊も、欧州メゾンへの出荷が5月から続いている。12年春夏欧州コレクションは「セロファン」と呼ばれるフィルム風の素材が多数登場。世界的なトレンドと合致している。新たにストールを紹介したところ、手応えを得ている。]
 ⑤後藤毛織(愛知)の事例:[後藤毛織は一つの記事に4、5種類の意匠糸を使ったツイードを得意とする。糸種を揃えるのはコストがかかり、誰にでもできる物作りではない。国内では価格がネックになることが多いが、中国は値段に関係なく売れるのだと言う。]
 ⑥エイガールズの事例:[丸編みのエイガールズは、プルミエール・ヴィジョン・パリで接触した韓国企業と実績が生まれ、欧州は取引客数を絞り、韓国と米国で拡大する方針。]
 ⑦明林繊維(福井)の事例:[福井の産元、明林繊維は、年商の80%が輸出。うち韓台中向けは貿易業務もこなし、福井から直輸、販売学は10億円。関係は30年になり、韓国へは自社開発品だけでなく産地全体の商品を売り、業績を支えている。]

 以上の内容を補足しよう。

 小松精錬は合繊織物の染色、後加工では、かねてより世界的に有名。合皮等のコーティング素材では、世界一の技術と評価が高い。日本の合繊技術の要とも言える存在である。
 第一織物は、元々資材専業でヨットのセイル用生地等を織っていた。その高密度織物の技術を生かし、自社ブランドを自社販売している。吉岡社長自らが世界中にトップセールスし、パダゴニア等のアウトドアメーカー、世界中のスポーツアパレルに販売している。
 岡田織物は直接存じあげないが、和歌山の高野口産地のパイルメーカーだろう。日本の中でも特徴のある産地であり、他産地と徹底的に差別化ができている。
 天池合繊の「天女の羽衣」は、世界一薄い織物、スーパーオーガンザとして欧州では有名であり、最近の数シーズンは様々なメゾンからパリコレの舞台に登場している。
 後藤織物とエイガールズ、明林繊維は、アジア市場の有望性を指摘している。日本のアパレルが低価格志向なのに対し、中国、台湾では高級志向が強く、高価格の素材が売れているのは確かだ。
 問題は、日本企業で本格的に輸出に力を入れている企業は非常に稀であり、例外的な存在ということ。ここで紹介された企業は、数多い企業の中から選ばれたのではなく、数少ない輸出実績のある企業を懸命に取材したものである。したがって、見出しに踊っているフレーズも、日本の中のごく一部の会社だけに言えることであり、日本のテキスタイル企業全体に言えることではない。

 これは、2011年12月9日付け繊研新聞(4)「どうなるテキスタイル輸出1」でも確認できる。

 「日本繊維輸出組合の米良章生上級研究員によると、染色・加工して縫製工場にすぐ入れられる状態の織・編物の輸出額は09年が3,295億円、10年が3,346億円。うち、最も大きいのは「持ち帰り輸出」で08年の2,700~2,800億円が、09年は1,630億円、10年が1,500億円と減少し、11年はもう一段減る見込みだ。減少分は中国や東南アジア諸国での生産分に置き換わっている。新興国メーカーの技術力が上がり、アパレルメーカーの値下げ要求もあり、日系企業が海外生産を強化していることが、その理由だ。持ち帰り油脂持つの残りが「純輸出」に相当し、単純計算ではここ2年、1,600~1,800億円台で推移していることになる」

 以上のように、日本全体から見ると、純輸出はそれほど増えていない。むしろ、一段とテキスタイル海外調達が進んでいることが分かる。「記者の目」の記事は、そんな状況の中で、業界を元気づけようという企画だったのではないか、と推察する。

(2)中東の民族衣装トーブ用生地輸出の実態

 2011年12月9日付け繊研新聞「記者の目(小平麻由記者)」の中で興味を引いたのが、以下の部分である。

 「では今後も、日本に残り続けるテキスタイルとは何か。一つは、『メイド・イン・ジャパン』がブランドになっている中東の民族衣装トーブ。韓国製やインドネシア製に比べて規模は見劣りするが、高級品としてピラミッドの頂点にある。白だけで100色以上、風合いも様々あり、染色を請け負う小松精錬によると、これを海外の工場で管理するのは容易ではない」
 同様に、2011年12月9日付け繊研新聞(4)「どうなるテキスタイル輸出1」でもトーブ需要に触れている。
 「(純輸出の)内訳を見ると一つの固まりが、民族衣装のトーブ。09年が335億円、10年は276億円。数量面では日本生機を使用した品種は少なく、韓国などから輸入した生機の日本加工が多い。日本で最終的な加工を終えると輸出の際、国産としてカウントされる。これがトーブ市場でボリュームゾーンに当たる韓国製織・加工生地に対し、競争力を発揮しているという。しかし、円高・ウォン安の為替レート、中東湾岸諸国とのFTA(経済連携協定)発効で、日本製と比べ割安感のある韓国製が選ばれるケースが増えるとの懸念が出ている」

 以上の記事から分かるのは、トーブ用テキスタイルの輸出は、韓国の生機(染色前の生地)を日本の小松精錬等で染色加工して輸出しているということである。私がトーブ用生地の産地を知らなかったことと、小松精錬がコメントしているのはそういう背景だったのだ。
 以上の事実からは、韓国製あるいは中国製の生機を日本で加工した日本製テキスタイルの可能性はまだ高いということが分かる。

 日本の独自性は「糸」にあるのだが、その糸の生産がほとんど海外に移転している。特殊な糸を日本国内メーカーで独占することができなくなっているのだ。糸を機織するだけなら、「糸の撚り、糸密度、組織等」を指示すれば、世界中どこでも可能である。トーブ用生地のような事例は今後も増えるだろう。しかし、その可能性もいつまで継続するかは不明だ。

 一方で、私が日本の最大の強みであると考えている染色加工メーカーが次々と廃業を決めている。尾州の艶金、浜松の大和染工など。また、染色加工場も海外生産にシフトする動きがある。そうなれば日本のテキスタイルの強みはほとんどが失われてしまうだろう。
 勿論、「記者の目」で紹介された、ごく一部のオンリーワン企業は生き残るに違いない。それでも、各社とも産地の分業体制の中に存在している。産地機能が崩壊すれば、糸の調達、染色加工等で苦労することは避けられない。

(3)日本テキスタイル輸出最大のネックは価格

 2011年11月17日付け繊研新聞(4)「ジェトロがテキスタイルの欧米市場開拓セミナー」という囲み記事の中で輸出の条件について、以下のように記載されている。

 [北米市場で24年間、日系繊維会社の生地を販売するカツ・ニューヨークの河崎克彦社長は「開発品に興味を持たれ、値段を聞かれた時、『まだ試算していない』という返事は最悪。小売業やアパレル製造業と対等に話すには、QCDS(品質、コスト、納期、サービスの頭文字で製品評価の指標)の項目全てにおいて完全装備が必要」と強調した。
 商品力があっても、意識の問題でビジネスにつながらないケースが多いため、事前の下調べや準備が必須と指摘。米企業は日本市場のリサーチを欠かさないため、対策として①1年後に現行品の4割安いものを先回りして準備しておく②小売価格100ドルの製品にはまる生地値は小売向けで1メートル当たり6.39ドル、アパレル向けは4.8ドルを上限に設定する③その場で即決即断する判断力や社内でエース級の営業担当に任せる-などを挙げた。販売機会ロスなど、相手の抱える問題を解決しつつ、売上を一緒に伸ばす方法を提示する必要も説いた。]

 同記事の最後にはこんな記述もある。

[パリのデュブロン・レイコ氏は著名な見本市があり世界中の情報・資料が集まるため、リサーチには適するが、実際の販売は運賃や関税、国内税でFOB本船渡し価格)の3、4倍になり、価格面で難しいと説明。生地幅やストックの有無、ミニマムロットなど基礎情報は、口頭ではなく、資料として生地に添付することが重要とした。]

 以上の記事から、価格面が最大のネックであることが分かる。1ドル80円で計算すると、小売向けで511円、アパレル向けで384円。基準はダブル幅である。とても、国内生産のテキスタイルでははまらないだろう。逆に言えば、この価格で出せるのならば、国内外を問わず、世界中に売れるはずだ。

 今年7月、私は中国紹興の軽紡城を訪問し、現地の生地卸商と共に中国アパレルを回り、日本のテキスタイルを見せた。やはり、問題は価格だった。中国アパレルが使う生地は、20元~50元程度。現在の為替レートだと、240円から600円ということになる。一般のアパレルは、80元(960円)を超えるものは見ないと言っていた。高級アパレルなら100元の生地も使うことがあるが、その割合は1%程度ではないか、とのこと。ほぼ、アメリカのアパレルと同じ水準である。

 西脇産地の某産元社長の話では、欧州高級ブランドでも、「シャツ地は120番双糸の先染で7~9ユーロでなければ買えない。それ以上なら諦めろ」と言われたとか。3倍になるのなら300円で出さなければならない。とても国内製品では対応できない価格である。

 以上を総合して考えると、世界のテキスタイルの価格相場は、中国製品が基準になっていると言っていいだろう。中国製が普通で、もっと安い商品は東南アジアやインドで調達。日本製品は異常に高い超高級品という位置づけである。

(4)価格対応以外でやるべきことは何か?

 先程の記事の中に、「試算していない」「必要なデータが添付されていない」という点を改善して欲しいという意見が出ていたが、事情の分からない人には俄には信じがたいだろう。しかし、これが現実なのだ。
 日本のテキスタイルメーカーの多くはOEM生産である。展示会のブースには、試作品と過去のアーカイブが混在して展示されることが多い。展示されているサンプルはあくまでたたき台サンプルであり、アパレルや問屋がそれらを見ながら商談を開始する。価格を見積もるのも、そこがスタートなのである。
 欧米のテキスタイルメーカーは、自社企画製品の見本を展示会で販売する。そのシーズントレンドに対応した色柄を設定し、そのサンプル製品を展示し、受注する。勿論、価格表の作成は絶対条件。着分の準備、たて糸の用意、整経までは終わらせており、受注が入ればすぐに生産開始となる。
 日本のテキスタイルメーカーも海外展示会に出展するのであれば、海外のビジネススタイルを踏襲しなければならない。ここまでの準備は最低条件である。
 私は更にブランディングが重要と考えている。なぜなら、日本のテキスタイルは超高級品だからだ。超高級品には、通常のボリューム商品とは売り方が異なる。展示会のブースデザインも、見本帳、ハンガー、スワッチサンプルの台紙のデザインも考えなければならない。勿論、テキスタイルのカラー設計は重要である。無地ばかりでなく、プリントや刺しゅうなどの後加工も必要かもしれない。それらを総合して、テキスタイル・ブランディングが不可欠になるだろう。
 価格の問題は、個別企業で解決できる問題ではない。しかし、中国の人件費と物価は上がり続け、長期的に見れば元高になる可能性は高い。かつて、日本が急激に円高になり、インポートブームに沸いたように、ある時突然、日本製品が中国市場に浸透するかもしれない。しかし、そこから準備したのでは間に合わない。
 私は、今のうちにブランディングを構築すべきと考えている。実際に、北陸の合繊テキスタイルメーカー2社と契約を交わし、テキスタイル・ブランディング構築に挑戦している最中である。

(5)世界のデザイナーの素材開発拠点にする

 欧州のメゾンのテキスタイル担当者には二つの職制がある。一つは、展示会で生地をピックアップする担当。もう一つは、イタリア等の産地に出掛けて素材開発を行う担当。勿論、後者の方がステイタスが高く、ベテランが担当する。
 私は、日本のテキスタイルは開発してこそ価値があると思っている。メーカー担当者は、技術者ではあってもプロのデザイナーではない。作ったものをそのまま使うのではなく、一緒に開発することで面白みが出てくる。
 しかし、欧州のテキスタイル担当者は、日本のテキスタイルはピックアップしかできないと考えている。エージェントは、単純に生地の注文を取るだけであり、メゾンの希望を聞いて、メーカーに指図することはできない。地理的に遠いので、簡単に出掛けることもできないし、スケジュールも合わない。
 確かに、日本企業は欧州のコレクションのスケジュールを考慮したプレゼンテーションを行っているわけではない。展示会のスケジュールに合わせてサンプルアップしているだけだ。
 しかし、コレクションの素材開発と展示会とは全く別物である。もっと早く、プレゼンテーションを行い、修正したり練り上げる時間が必要になる。
 例えば、輸出振興策として、次のようなイベントはできないだろうか。
 ①コレクション後の早い時期に、テキスタイル担当者を日本に招待し、日本の個性的なテキスタイルメーカーを紹介する。この時点では、過去のアーカイブがあればいいだろう。そして、マッチングを行う。
 ②2~3カ月後、日本のメーカーがヨーロッパで最初のプレゼンを行う。今度は、単純なアーカイブを見せるのではなく、最新の試作品をプレゼンする。その前後に、担当メゾンのコレクション用イメージビジュアルを受け取る。これに基づいて、カラーリングや柄を設定する。ビジュアルのやりとりや試作品のチェックは、インターネットあるいは国際小包を利用して行う。
 ③コレクション用着分生地はできれば無償提供し、その代わりにプロモーションに活用させてもらう。あるいは、最初からこの条件を呑んでくれることを条件にした方が良いのかもしれない。
 ここでは欧州のデザイナーとしたが、この流れはアジア各国も日本も同様である。デザイナーコレクションで発表されることで、最終的にはボリューム商品の販売につながるだろう。あるいは、中国等のテキスタイルメーカーに向けて、ライセンス生産のプレゼンテーションを行うのも有効である。日本で開発したテキスタイル製品を中国メーカーが量産し世界に輸出するという手法もあり得るだろう。勿論、日本メーカーはロイヤリティ収入を受け取り、更なる開発を行うのである。

*有料メルマガj-fashion journal(2)を2カ月遅れで紹介しています。本論文は、2011.12.12に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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