デジタルアーカイブ
デジタルアーカイブとは、有形無形の文化資産、資料等をデジタルデータとしてで保存することを指す。繊維ファション産業においても、民族衣裳、コレクションで発表された作品、テキスタイル資料等をデジタルアーカイブ化し、様々な活用が期待されている。
企業内においても、過去の資料が散逸したり整理されないまま放置されていることが多い。テキスタイル資料に限定しても、アパレル企業のMDやデザイナーは展示会の度に、数多くのスワッチサンプルを集める。これらを全て保存しておきたいと思っても、やがて膨大な量になる。実際に使用した生地の控えを保存しておくのだけでも大変なのだ。
同様のことは、テキスタイルコンバーターにも言える。「どこの誰にどんなスワッチサンプルを届けたのか」を完璧に管理することは難しい。産地メーカーも同様だ。試織した生地の控えを全て保存し、どんな問屋やアパレルからスワッチサンプル請求があったのかを管理するのは困難である。
これらがデジタルアーカイブのデータベースとして保存され、検索することが可能ならば、商品企画や社員教育等に活用できるだろう。
しかし、デジタルアーカイブの実現には課題も多い。デジタルアーカイブの仕様は、対象、活用目的、利用者等によって異なる。美術品や文化財のデジタルアーカイブであれば、高精細なデータの保存が必要である。一方、ビジネスで使われる画像は、それほど高精細でなくても良い。
綿や合繊の白生地の場合、画像よりも糸の種類、太さ、撚糸、打ち込み密度、織組織、後加工等のデータに価値がある。プリントやジャカードは柄や配色が分かる画像だけでなく、加工技術や機械等のデータも重要である。
つまり、デジタルアーカイブの構築とは、それぞれに異なる仕様の複数の画像、テキスト、プログラム等を一括して管理できる汎用型のデータベースの構築に他ならない。これが第一のポイントである。
文化財であれば、精細な画像だけでなく、場合によっては、設計図や関連資料、X線写真や赤外線写真も必要だろう。
アパレル製品であれば、デザイン画、パターンのCADデータ、素材データ、生産管理や品質管理のデータ、売上や消化率等のデータが検索できた方が、企業としては使い勝手が良いはずだ。
テキスタイルであれば、機屋に必要なデータ、染色整理工場に必要なデータ、コンバーターに必要なデータ、アパレルに必要なデータ、学生に必要なデータは全て異なるだろう。また、合繊、綿、ウール、シルク等の原料によっても登録すべき項目は異なるはずだ。
デジタルアーカイブを実用化するための第二のポイントは、時間と相手を選択的に情報開示することである。たとえば、ビジネスに活用しているカタログ情報も、一年後なら開示していい。あるいは、競合他社には開示したくないが、学生ならば開示してもいい。同じ組合員には開示しても良いが、組合以外には開示したくない。国内には開示してもいいが、海外には開示したくないなど、それぞれに様々な事情を抱えているのである。
第三のポイントは、デジタルデータのアナログ、現物等の使い分けである。デジタルデータは万能ではない。テキスタイルの風合いを計数で表す研究もされているが、一般的とは言えないだろう。全てをデジタルで解決するのではなく、デジタルとアナログ、現物見本との使い分けが必要だし、使い分けない限り実用には至らないのではないだろうか。
第四のポイントは、コストである。数の少ない美術品や文化財であれば、コストが掛かったとしても高精細な画像を保存しなければアーカイブの意味をなさない。採算を考えるとしても、長期的な視点が必要である。
ビジネスで使われているサンプルをデジタルアーカイブ化するのであれば、毎年膨大な数量のサンプルを入力、保存しなければならない。この場合は、必要最低限の解像度を設定し、入力のコストを極限まで抑えないと、デジタルアーカイブの維持、運営の採算が合わないだろう。
できれば、ビジネスで活用したデジタルデータをそのままアーカイブ化することが望ましい。デジタルアーカイブのためにコストをかけるのではなく、ビジネスとしてのデータを活用するという発想である。


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