中国百貨店業界への提案
要約
・中国北京市で中国全土の百貨店経営者が集まる「第6回中国百貨店フォーラム」が開催された。日本、アメリカからも講師を招いた2日間のシンポジウムで、中国百貨店の課題が浮き彫りになった。
・中国百貨店業界の問題は「大都市部のオーバーストア」「同質化」「価格競争の激化」にまとめられる。いかに個性的な百貨店を構築するか。いかに他店との差別化を図るか。いかに顧客との連携を強化するか。いかに地域百貨店を活性化させるか、等が議論されたが、具体的方策を見いだすのは容易ではない。
・現在の中国百貨店の状況は、70年代後半の日米百貨店業界に類似している。アメリカでは、商品以外のVMD、顧客連携により差別化戦略を展開した。日本はDCブランド導入により、新しい商品MDと売場環境の刷新を行った。
・中国百貨店業界に対して、いくつかの提案をしたい。第一は、「中国人デザイナーズブランドの導入」「ライフスタイル編集平場」の導入による商品MDの差別化。第二は、「ショーウインドーの整備と戦略的VMDの導入」による売場環境の差別化。第三は、WEBと店舗の連携による差別化。第四は、フリーマガジン等の独自のメディアによる差別化。いずれの場合も、日本に蓄積されたノウハウをいかに活用するかが、成功のポイントになるだろう。
●中国百貨店フォーラムの概要
2008年3月26日、27日の両日、中国北京市の亮馬河飯店において「第6回中国百貨店フォーラム」が開催された。このフォーラムのことを知ったのは、昨年の11月。中国百貨店協会の秘書長○○さんへのインタビューの時だった。
○○さんは次のように語った。「日本のアパレル企業はCHICに出展しているが、CHICは代理商を獲得するための展示会。百貨店の経営者は、百貨店フォーラムに集まるが、CHICには行かない。CHICに行く百貨店社員は情報収集が目的であり、意思決定のできる人はいかない。もし、日本のアパレル企業が百貨店に出店したいのなら、百貨店フォーラムの時期に、ホテル内で展示会をしたらどうだろうか。過去に台湾のアパレル企業が同様の展示会をしたことがあり、成果を上げた」
それならば、ということで、今回の参加になったのだが、外国人の受講料は一人500ドル。中国の業界団体はしっかりとビジネスをしている。
26日午前は「開幕式」として、中国百貨商業協会会長範文明氏による「主催者挨拶」、国家商務部商業改革司司長邸建凱氏による「2008年国内小売業の現状と政策」、中国百貨商業協会秘書長楚修齊氏による「2007年中国百貨店業界発展の報告」、日本百貨店協会専務理事平出昭二氏による「日本百貨店の現状と未来」と、4名のスピーカーが登壇した。平出氏は3年連続でスピーチをしているとのこと。
昼食を挟んで午後からは「経営者フォーラム・改革と発展」をテーマに、杭州ショッピングセンター社長の童民強氏、元ノードストローム、チーフバイヤーのGail Cottle女史、北京愛慕下着株式会社会長の張栄明氏が登壇し、それぞれの立場で顧客満足を中心にスピーチを行った。その後、会場からの質疑応答を含む活発なディスカッションが行われた。休憩を挟み、日本から高島屋常務取締役の水野英史氏が「新時代の百貨店経営」をテーマに講演を行った。引き続き、浙江赤トンボ製靴業株式会社理事の銭金波氏が自らの経営及びブランド戦略を、米国サンタクララ大学リーベイ商業学院副院長のDale D.Achabal氏が米国小売業の最新動向について、ベルリンの老舗百貨店カーデーヴェー(KaDeWe)が自社の管理手法について、スピーチを行った。その後はやはり活発な質疑応答。
翌27日は、「百貨店の差別化と個性化」をテーマにセッションが行われた。北京大学光華管理学院教授、何志毅氏の司会の元、広百グループ会長荀振英氏、中国商業連合会副会長万文英氏、北京現代ショッピングセンター会長金玉華氏、米国サンタクララ大学リーベイ商業学院副院長のDale D.Achabal氏、北京富基融通科学技術株式会社副会長丘克氏、元ノードストローム、チーフバイヤーのGail Cottle女史が短いスピーチを行った後、質疑応答を含むパネルディスカッションを行った。
その後、素早く会場を整え、カシミヤニットブランド「SNOW FORTE」のファッションショーを披露した。ここまでが午前の部。
午後からは、特別シンポジウムとして「地域百貨店の成長戦略」「2007年度化粧品ブランドの市場占有率」「オリンピックが百貨店に与える影響とビジネスチャンス」「ファッショントレンドの傾向と売場対応」の5つのテーマについて、パネルディスカッションが行われた。
夜は会場を移し、7時30分から下着メーカーの愛慕株式会社本社にて、企業視察会と交流会が行われた。愛慕株式会社本社では、前日の晩も中国流行色協会のイベントを行っていた。中国では、公的機関のイベントの冠スポンサーや、イベントに協力することは、会社及びブランドの知名度を上げる絶好の機会である。ビジネスと国家機関は密接につながっているのだ。
●中国百貨店業界の現状と課題
二日間のフォーラムで語られたことは、中国百貨店業界が抱えている悩みと目指すべきビジョンである。しかし、ビジネスの歴史の浅い中国では、ビジョンと目標は設定できても、そこに至る具体的な方法が見えていない。そこで、今回は中国百貨店業界への提言をまとめ、中国語に翻訳して、中国側に届けようと思う。
中国百貨店の現状を整理すると、以下の3つの課題があげられる。
第一は、急激な店舗拡大による「大都市のオーバーストア」現象である。これまで、中国の国営百貨店は都市単位、省単位の会社が運営していた。しかし、国営百貨店の民営化、外資百貨店の増加と共に、全国展開を狙う百貨店が増えている。それにより、沿海部の大都市はもちろん、その周辺の都市でも競争が激化し、これまでの安定した地方百貨店の淘汰が始まるに違いない。
既に、北京、上海等の大都市では、オーバーストア状態であり、政府機関も積極的にスクラップアンドビルドを進めている。同時に、家賃や人件費も高騰しており、大都市の小売店が採算を取るのは困難になっている。それでも、ブランド知名度を上げるために、大都市へ出店しようとするアパレル企業は後を絶たない。百貨店を建設すれば、すぐにテナントは埋まり、百貨店は採算が取れる。消費も拡大しており、消費者の購買意欲は減退していない。
しかし、百貨店で扱っている商品は平均的な市民にとっては高嶺の花だ。消費が伸びていると言っても、百貨店で販売している高級品を買える消費者は決して多くない。百貨店で買い物ができる消費者の比率と、小売業に占める百貨店の比率が問われるのだ。
中国は富裕層が消費をリードしてきたために、高級品を狙うサプライヤーが多い。欧州ブランドも富裕層を狙っているし、中国国内アパレルも欧州アパレルに続くベターゾーンを狙うだろう。
また、日本のブランドショップが中国人観光客で溢れているように、富裕層は海外旅行で買い物する機会も多い。今後、海外旅行が更に気軽に楽しめるようになれば、ますます富裕層の海外流失が起きる。富裕層マーケットは、国内百貨店間競争だけでなく、海外店舗との競争が待っているのだ。
第二は、「百貨店の同質化」である。中国の百貨店は基本的にショップ単位であり、百貨店はテナントのアパレル企業に売場を貸しているに過ぎない。商品リスクも販売員の経費もすべてテナント企業が負担している。そのため、百貨店に出店できる企業は限られている。少なくとも、一定量以上の商品を年間を通じて展開できるだけの規模が必要であり、販売員経費や店舗運営費を負担できる企業でなければならない。
日本では、百貨店が複数の専業メーカーから商品を仕入れ、編集するアイテム別売場が存在する。そのため、ショップは展開できなくても、魅力的な商品が供給できるメーカーならば百貨店で商品を販売することが可能である。
中国のカシミヤニット売場は、日本のセーター売場に近いように見えるが、実態は小さなショップが並んでいるだけで、商品の選択や編集は行われていない。そのため、広い売場を確保しているにも関わらず、似たように商品が溢れている。
こうした理由から、中国百貨店で展開されるブランドはどこも似ており、百貨店の看板を外せば、どこの百貨店か分からない状況である。
第三の課題は、「価格競争の激化」である。各百貨店のブランドが同質化すると、バーゲン競争が始まる。隣の百貨店が値下げをするなら、うちも値下げをしよう、という連鎖反応が起きて、年中、割引やバーゲンセールの赤紙が店頭に貼られる。
バーゲンセールが増えると、消費者はプロパー価格を信頼しなくなる。少し待てば安く買えるのだから、シーズン立ち上がり時期の高い商品を買う必要はない。安くしなければ売れなくなり、ますますバーゲン競争が激しくなる。
アパレル企業は、バーゲンでも利益を確保できるように、当初の価格を高く設定するようになる。割高な商品なので、ますますプロパーでは売れなくなる。こうして価格競争の泥沼にはまっていくのだ。
●日米百貨店の脱価格競争戦略
こうした現象は、日本、アメリカの70年代後半の状況に酷似している。80年代になり、日米の百貨店は同質化と価格競争から脱していくのだが、日本とアメリカにはその手法に違いがあった。
アメリカでは、商品の同質化が進むにつれ、商品以外の差別化戦略をスタートさせる。視覚的な差別化、VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)である。商品の品揃えが同じでも集客力の高い店と低い店がある。その違いは視覚的なものによる。きれいで活気のある店には客が集まる。しかし、手入れされていない煤けたような店は活気もなく、客足を遠ざかっていく。こうした現実を踏まえ、「全ての視覚要素を戦略的にコントロールしよう」という考え方が定着し、一定の原則やマニュアルが整備された。これがVMDである。もちろん、VMDを導入するだけで売り上げが上がるわけではない。商品MDと連動したVMD計画を立案し、組織内に専門セクションを設け、販売員へのVMD教育を行い、常に売場の鮮度を保つことが必要である。
日本の百貨店は、当時の最新ファッション「日本人デザイナーズブランド」を積極的に導入することで価格競争から脱した。当時の百貨店は大手アパレル企業の牙城であった。売場はアイテム別平場が中心であり、商品は同質化し、展開什器もありきたりのものだった。デザイナーズブランドは、そこに「トータルコーディネート」という概念と、新しいショップデザインの売場「インショップ」という概念を持ち込んだ。
今では当たり前だが、当時の百貨店では一つのブランドでトータルコーディネートができる売場は少なかったのである。また、ブランド単位の個性的なショップデザインも存在しなかった。平場に対して箱売場と呼ばれ、最新のファッション商品とショップがパッケージで展開されていったのである。
そして、頭ら爪先まで一つのブランドでコーディネートすることが流行し、ファッション雑誌もこぞってそれらのブランドを取り上げた。デザイナーズブランドは「DC(デザイナー&キャラクター)ブランド」と名前を変え、全国の百貨店、ファッションビル、地下街へと拡大していった。
80年代の百貨店のリニューアルのテーマは「DCブランド」の導入であり、それにより、百貨店のイメージも向上し、高年齢の顧客だけでなく、若い顧客が百貨店に集まったのである。
●商品MD差別化の具体的提案
中国百貨店は日米の脱価格競争戦略を学ぶことが有効だろう。
第一に、同質化競争から脱するために、「商品MDの差別化」に取り組まなければならない。私は、「中国人デザイナーズブランドの導入」「ライフスタイル編集売場」の二つのプロジェクトを提案したい。
一つ目の「中国人デザイナーズブランドの導入」から解説しよう。中国国際ファッションウイーク(CFW)のコレクションを見ていても、中国人デザイナーが育ちつつあるのを感じる。百貨店は、最初から売り上げを期待するのではなく、差別化のためのプロモーションと考え、若い世代の中国人デザイナーの商品を取り扱ってはいかがだろうか。
しかし、発展途上のデザイナーは一つのショップを年間維持するだけの商品供給ができない。そこで、最初は、香港の「IT」のような、デザイナーズブランドの編集平場を提案したい。それぞれのデザイナーズブランドが力をつければ、ショップ集積に拡大するだろう。
最初は、100~200平米程度の売場に10人程度のデザイナー作品を展示販売する。この売場のデザインは、各百貨店で特徴的なデザインを展開することが大切である。デザイナーの個性的な商品を扱うという差別化だけでなく、売場環境の差別化も重要である。
できれば、中国百貨店協会の指導の元で、当初は、1地域1店舗だけにデザイナーズブランド売場を設置することにしたい。若手デザイナーは資本力も弱く、あまり急激に売場を拡大することはできない。また、個性的なデザイナーズブランドは、急激な量的拡大を狙うと、ブランドの個性が失われていく危険性もある。希少価値も重要な要素である。
デザイナーズブランドの導入は、イベントにもつながる。通常のファッションショーは、商品展開の半年前に行われるが、店頭でのプロモーションとしては、商品展開の2~3カ月前に行えば十分だろう。上得意客を集めて、ミニファッションショー開催し、デザイナーが自分の商品を解説し、予約受注を行うのである。こうしたイベントは、百貨店の来店を促し、館全体の売り上げ貢献にもつながるはずである。
二つ目の「ライフスタイル編集平場」は、将来的に百貨店PB(プライベートブランド)戦略につながるものである。
現在の百貨店は、場所貸し(テナント導入)のみである。前述したように、一定規模の企業だけが出店可能であり、優れた単品メーカーの商品、世界の商品の集積、輸入とPBのミックス等の売場展開はほとんど存在しない。
百貨店の差別化戦略の究極の選択はPB展開だが、PB開発を行うには、少なくとも20店舗、できれば100店舗程度のスケールが欲しい。将来的には、中国の百貨店も多店舗化が進むだろうが、現状の店舗はPB開発ができるほど多くない。
そこで、まず百貨店が運営する編集売場を設置し、自社で商品を仕入れ、自社で販売することスタートすることを提案したい。編集平場を展開するには、まず売場のテーマ、顧客ターゲットを設定し、商品の売り上げ、仕入れ、在庫計画を立案し、ブランドを選択し、商品を発注しなければならない。そして、販売員を採用・教育し、店頭のVMD計画を立て、実際に店舗を運営するのである。
これだけの作業を一からスタートするのは、大変なノウハウと労力を必要とする。しかし、PB開発は、これに加えて、商品企画、原材料の選択、工場の選択と交渉、納期管理、品質管理、各店への物流という課題が待っている。まず、編集平場からスタートし、ノウハウを蓄積すべしというのが私の提案である。
この編集平場もまた、100~200平米からスタートするべきだろう。百貨店の立地特性、顧客特性に合わせて、コンセプトを立案し、輸入品と国内製品、アパレルだけでなく雑貨等をミックスした売場を構築するのである。
●売場環境の差別化(VMDの導入)
世界の一流百貨店は美しく演出されたショーウインドーを持っている。ショーウインドーは、百貨店全体が今どんなイベントや商品を展開しているかを紹介するメディアである。中国の百貨店は、ショーウインドーを持っていないか、持っていても、単にテナント企業にスペースを貸しているに過ぎない。百貨店としての情報発信がないのだ。
情報発信するコンテンツがないから、メディアを持たないのか。メディアを持たないからコンテンツが育たないのかは一概には言えない。メディアとコンテンツは互いに影響を与えない、相乗効果で成長していくのである。
中国の百貨店もショーウインドーを持つべきである。ショーウインドーを持つことにより、商品の展開シーズン、イベント、中国の歳時記について考えざるを得なくなる。ショーウインドーで春物商品を紹介しているのに、売場で冬物商品しかないのでは困る。ショーウインドーが存在することにより、全館春物立ち上がり時期を設定する必要性が出てくるのである。
もちろん、ショーウインドーを常に美しく保つにはコストがかかる。インクジェットプリントの垂れ幕を下げた方がはるかに容易で低コストだ。しかし、百貨店の高級化、ビジュアルな差別化を真剣に考えるのならば、ショーウインドーの経費は覚悟しなければならないだろう。
ショーウインドーが百貨店全体を表現するメディアだとすれば、次に各フロアの内容を表現するメディアも必要になる。エスカレーター前等に、各フロアを代表する商品を演出陳列する必要が出てくる。各フロアの演出テーマは、ショーウインドーで表現されたテーマと連動しなくてはならない。ショーウインドーの計画と連動して、各フロアの演出陳列を構築するのである。
こうした百貨店のVMD計画を立案するのは専門的な知識と技術を持つVMDスーパーバイザーである。しかし、ショーウインドー、各フロアの演出陳列に連動した、各売場の演出については、売場の販売員が業務を担当することになる。そのため、販売員へのVMD教育が必要になる。
中国百貨店が真剣にVMD戦略を展開するのならば、まず社内にVMDを担当する組織を設置しなければならない。自社にノウハウと技術が蓄積されるまでは、日本からVMDスーパーバイザーを招くことをお勧めしたい。
そして、社内にVMDチームを組織し、全館のVMDを展開していく。VMDスーパーバイザーは、全館のVMD計画立案に加え、社内VMDチームの教育も担当する。各テナントの販売員に対するVMD教育は、VMDチームが行う。それらの費用は各テナント企業に費用を負担させることも可能だろう。
前述したライフスタイル編集平場が構築できれば、そこがVMDのモデル売場になる。そこで訓練したVMDチームが全館に散らばって、VMD活動を担うだろう。
●イベントによる差別化
日本の百貨店でも課題になっているのが、イベントによる差別化である。百貨店で展開される魅力的なイベントは、そのまま百貨店のイメージにつながる。常に、ファッションデザイナーがフロアショーを行っている百貨店は「最先端のファッション百貨店」というイメージを顧客に植えつけるだろう。また、定期的に富裕層を招いてパーティーを行う百貨店は「セレブ御用達の百貨店」というイメージを獲得するだろう。
重要なことは、イベントだけが独立して存在するのではなく、必ず売場と連動したイベントを展開することである。できれば、常にイベントが行えるようなイベントスペースを常設し、臨時の売場を隣接して設置しておくことだ。
しかし、これもショーウインドーと同様に、イベントスペースを常設すれば、常にイベントを企画し、運営しなければならないことになる。もちろん、コストもかかるし、人材も必要だ。
もし、百貨店内部にイブント運営を行う機能が持てないのであれば、外部の企業に委託することも考えて良いだろう。中国には様々な業界団体がありイベントをしている。百貨店で行うイベントは、あくまで物販が基本である。団体が主催するイメージ訴求の大型イベントではない。しかし、大型イベントができないテストマーケティングや消費者の反応を見ることができる。
もし、中国百貨店協会がイベントを開催する百貨店をグループ化することができれば、イベントを全国でラウンドさせることもできる。今月は上海、来月は杭州、再来月は蘇州というようにイベントがラウンドしていけば、イベント業者も十分にビジネスになるはずである。
●WEBを活用した差別化
WEBを積極的に活用しているアパレル企業では、店舗と同じ商品をWEBでも販売している。店頭で確認してWEBで購入することもできるし、WEBで検索してから、店頭で商品を確認することもできる。
インターネットの進化により,何かを探す時にはまずネットで検索するという人が増えてる。中国でも、一人っ子政策が始まってから生まれた1980年以降に生まれた「80後(バーリン・ホ~)」は、それ以前の世代とは価値観も行動様式も変わっている新人類と言われているが、今後の百貨店が「80後」世代を引きつけようとすれば、WEB戦略は重要な課題になるだろう。
日中百貨店の問題点の一つは、商品を検索できないことだ。検索できないということは、どんな素晴らしい商品があっても、実際に店頭に行かなければ分からないということである。顧客が押し寄せるような集客力のある百貨店は問題ないが、集客力の低い百貨店では、商品MD改革の前に、顧客に情報発信を行い、まず顧客を誘因しなければならない。
理想は、百貨店で販売されている全ての商品がネットで検索でき、ネットで購入できることである。しかし、それを実現するには、百貨店がデータベースを構築するなど、課題も多い。
それ以前にも、WEBや情報システムを活用することでできることは多い。テナントのアパレル企業の社長やデザイナーのコメントをWEBで紹介することで、顧客の意欲を刺激すくことも可能だろう。日本の一部では行われているが、各テナントの店長に新着商品情報等を紹介するブログ作成を推奨し、百貨店のWEBにリンクすることも、検索はできないまでも、常に最新情報を紹介する方法にはなりうる。また、百貨店のWEBに割引クーボンを掲載し、プリントアウトして持参すれば、割引をするサービスや、顧客の携帯に割引クーボンを配信するなども考えられる。
実は日本の百貨店もWEBや情報通信技術の活用は遅れている。中国百貨店が先行する可能性も大きいのではないか。
いずれにせよ、今後の百貨店戦略の中でWEBの活用は大きな意味を持つに違いない。
●百貨店独自のメディアで差別化
日本にも中国にもフリーマガジンは数多く存在する。フリーマガジンとは、広告収入で制作し、無料で配布する雑誌である。
百貨店はコンテンツの宝庫である。様々なブランドが集積され、大量の商品が販売されている。それぞれの店長はトレンド情報や商品知識を持っているはずだ。私は百貨店内を定期的に取材するだけで十分に雑誌が成立するだけのコンテンツが集まると考えている。
百貨店の強みは、商品と一緒に確実にフリーマガジンを配布できることだ。街頭の専用スタンドに置いてあるフリーマガジンよりも、確実に富裕層に届く媒体であり、広告も取りやすいに違いない。また、テナント企業自身が有力な広告スポンサー候補になりうるのだから、広告も取りやすい。
百貨店がフリーマガジンを発行することは、自らのメディアを持つことである。もちろん、前述したWEBとの連携も可能であり、様々なイベントやサービス情報を紹介することができる。カード会員に郵送すれば、それが百貨店の広告になり、集客戦略につながるのだ。もちろん、広告の営業、取材~制作は、アウトソーシングすることもできる。広告収入が期待できれば、百貨店は経費がかかるどころか利益も上がるはずだ。
競合他店より先んじてフリーマガジンを発行することは、有力な差別化戦略になるはずである。
オリジナルフリーマガジン以外にも、既存のファッション雑誌等との提携も可能だろう。テナント企業との協力が得られれば、カタログ通販の可能性も広がるはずだ。
これまで、百貨店の差別化はあまりにも商品MDに偏重していた。百貨店自身がある意味でメディアであり、百貨店メディアが複数のメディアとの連携を図る「百貨店マルチメディア戦略」を考えるべき時期に来ているのである。
以上のどの差別化戦略においても、日本に蓄積されたノウハウと日本に存在する専門家の能力を活用することが、中国における成功ポイントになるに違いない。◆


Comments
天津伊勢丹は先にマーガジン出して去年に売上なんと上海伊勢丹より上でした。
「中国人デザイナーズブランドの導入」上海伊勢丹は結構前から導入したような気がします。エレベーター上がったすぐ前に置いてありますね。東華大学の先生のデザインが多いようです。
中国の百貨店さんは世界各地の百貨店見に行って、ショーウィンドの写真撮って帰って真似します。
坂口さんの中国百貨店業界への提言は中国語になったでしょうか。
Posted by: HANDING | April 13, 2009 at 05:32 PM