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February 05, 2007

WEB2.0時代のファッションビジネスとは

◆深刻な企業間デジタルデバイド
 現在の小売業は「何を販売しているか」よりも「システム化されているか否か」が問われている。システム化とは「どんぶり勘定ではなく計算可能なビジネス」であること。コンビニや一部の大手専門店では、各店頭のPOSによる単品データがリアルタイムで本社に送信され、売上・在庫・利益等の推移を見ながら、値下げ・店間移動・追加発注・返品等の意思決定をクイックに行っている。販売管理システムを導入していても、伝票発行マシンだけに使われているというケースも多い。単品管理という思想を持たないシステムでは、「月に一度の棚卸しで各店の在庫内容に気がつく」ことも珍しくない。日々動いている店頭において、日々の判断と月に一回の判断、人間の勘による判断と科学的な数字に基づく管理とでは、経営の質そのものが異なってくる。
 中小企業経営者がシステムの重要性を理解しても、コストが高いためにシステム導入を諦めている企業も多い。ある専門店企業は、6年前に70店舗展開を基本にしたオフコンによる販売管理システムを構築した。しかしその後、10店舗以下に店舗が縮小。オフコンのシステムをパソコンにリプレースするだけで3000万円と言われた。

 リプレースの作業は、開発言語の違いなどにより手間がかかるが、価格がが通らないという割の合わない仕事だ。新規システムの導入には積極的でも、リプレースに逃げ腰なベンダーが多いのもうなづける。だからと言って、10店舗以下の店しか持たない専門店企業が数千万円のシステムを新規に構築する余裕はない。おそらく、同様の悩みを抱えながら、古くて使いづらいシステムを再リースでしのいでいる企業も少なくないだろう。
 大手システムベンダーは、とっくの昔に繊維アパレル業界に見切りをつけている。複雑怪奇な取引慣行と標準化されていない業務。しかも、中小企業が多く利益を上げている企業も少ない。システムエンジニア不足の中、他の業界に行けば、数千万円、数億円という仕事が転がっているのに、誰が好んで繊維アパレル業界のシステム作りに取り組むだろうか。システムベンダーから見ると、一部の大手アパレルや商社等を除けば、繊維産業はニッチ分野であり、中小システムベンダーの領域なのだ。
 そして、大企業と中小企業のデジタルデバイドはますます拡大していく。このインフラ問題を解決しないままに、商品や販売先、業態を変革しても成功しないだろう。
◆ピカピカの個人用パソコンと、ボロボロの業務用パソコン
 オフィシャルな場面では閉塞感が漂っている一方、プライベートな場面では、ブログやSNS、ロングテール現象などに代表される「WEB2.0」という新しい概念が話題を集めている。(WEB2.0については「ウェブ進化論/梅田望夫著(ちくま新書)」「ウェブ人間論/梅田望夫・平野啓一郎(新潮新書)」「WEB2.0的成功学/近勝彦(MYCOM新書)」等に詳しいので参照していただきたい)
WEBが誕生した当初、WEB構築は専門家の仕事だった。企業がWEB構築のために数千万円かけることも珍しくなかった。しかし、ブログの普及によってその常識は崩れた。WEBは個人が作り、個人が自由に更新するものになり、経費も限りなくゼロに近づいた。
WEBサーバーの料金も下がっている。私は、一昨年まで月5千円のレンタルサーバーを使っていたが、一昨年、月5百円のレンタルサーバーに乗り換えた。回線の太さもセキュリティも全く問題はない。パソコンの価格も同様に下がっている。デスクトップならば7~8万も出せば十分、中古ならば2~3万円で探せる。このように個人ユースの世界では劇的に環境が改善されているだ。
一方、企業ユースの世界では、未だにWINDOWS 98を使っている企業も存在する。会社のパソコンには業務用システムがインストールされており、OSを変えられない。リプレースすると高額の費用がかかる。結果的に、個人用のパソコンはピカピカ、業務用のパソコンはボロボロという不思議な光景が見られる。
基幹業務システムが導入されている企業でも、多くの場合伝票や帳票の処理に留まっている。伝票が発行されるのは、取引が成立してからのことであり、伝票発行マシンとしてのシステムならば、単なる営業事務の省力化になるだけで売上は上がらない。システム導入は結果的にコストが増えただけであり、「システムの話など聞きたくない」「システムは触ってはいけない」というシステムアレルギーが多いのも当然だ。
 実際の業務用ツールとしては、FAX、電話、携帯電話、システム手帳が主役だ。パソコンが使える人は、エクセル等の表計算ソフトを駆使している。そして、仕事の連絡も個人用メーラーで行っている。本来、業務用システムとは、こうした担当者個人のツールも含むべきだ。業務用システムの話になると途端にセキュリティに厳しくなる人が、普段は携帯やメールで会社の機密事項を連絡している。携帯は無線であり、盗聴の危険性もある。また、個人用メールはサーバー管理者が閲覧することも可能だ。
◆「システム1.0」から「システム2.0」へ
 私は、WEB1.0からWEB2.0という進化を業務用システムにも起こしたい、と考えている。「システム1.0」から「システム2.0」の進化だ。
WEB2.0の概念をシステムの世界に例えてみよう。
「システム1.0」は、システム部中心で構築され、多くは人件費削減や作業の合理化を目的に導入された。各部門は各部門の責任の上に、独自のシステムを構築した。物流管理システム・経理システム・給与システム・販売管理システム・生産管理システム等々である。縦割り組織と同様にそれぞれのシステムは独立し、使い切れないほどの高機能を備えている。コストも高い。組織の壁とベンダーの壁がシステム連携を妨げ、その穴を埋めるために、担当者が独自に会議用のエクセルシートを作成したり、更にグループウェアを導入しファイルの共有等を図っている。
業務用システムには高価なサーバーを使い、専用線でつなき、万全のセキュリティ対策を取っている。一方、通常の業務では前述したように、携帯やメール、個人の手帳に依存しており、セキュリティ対策も甘い。個人流出事故の多くは、会社の業務を個人用パソコンで行ったり、業務用ファイルを個人用パソコンにコピーしたことに起因している。
「システム2.0」は、縦割り組織に準じたシステムではなく、取引先とも連携したネットワーク型システムである。また、各部署の合理化だけでなく、経営戦略に直結した経営判断のためのシステムてもある。システム構築もシステム部ではなく、現場の担当者中心で行う。担当者が使っているエクセルシート等の読み込みを可能にし、カスタマイズの要求には即座に対応する。出来上がったシステムをリースするという発想ではなく、ベータ版システムをリースし、常にバージョンアップとカスタマイズを繰り返しながら、各社仕様のシステムに磨いていくという発想だ。
低コストで運用するために、民間用のレンタルサーバーを活用し、中小企業でも個人でも使える料金を設定する。また、セキリティに問題のある個人用メーラーに代わるデータベース機能を備えた業務用メーラー機能も重要な要素になるだろう。これによりメールの情報と業務用システムが連携する。FAX送信機能、携帯へのメール送信機能も持たせ、パソコンのない取引先への連絡も可能にする。
以上の条件を満たすには、様々な技術が必要だが、その多くは既に開発されている。問題は思想である。現在のシステムベンダーは現在のビジネスで十分に利益を上げており、システム2.0 に取り組む合理的な動機はない。私が述べているのはあくまでユーザーサイドの意見でありベンダーサイドではない。
それでも、システムの流れは確実に変わるだろう。既に、システムも国際競争が始まっている。見積もりは、国内の人件費を基本にして算出し、実際は人件費の低い海外にアウトソーシングするという事例も出てきている。そのあたりに綻びが生じ、システムの相場が下がる可能性は高い。システムの価格破壊の条件は静かに整っているのだ。
私自身も、小規模な中小企業向けシステムをシステム開発者と共に、いくつかの実験を重ね、既に基本的な部分の検証は終了している。問題は使用者のリテラシーである。システム2.0を実現するためには、扱い易いシステムの提供と使用者のリテラシーが条件になる。どんなに簡単なシステムでも、それを使いこなすには一定の教育が必要だ。エクセルやパワーポイントは操作性も高く完成度の高いアプリケーションだが、それでも数多くのガイドブックが販売されている。極論すれば、手帳の使い方を解説した本さえ存在する。業務用システムとなれば、業務の教育とシステム操作の教育が必要であり、それを解決するには教育機関や人材派遣企業とのタイアップも考えなければならないだろう。
◆システム連携による新業態の可能性
解決すべき課題は少なくないが、それと比較しても余りあるメリットがシステム2.0にはある。でもシステム取引している企業間がシステムで連結されることで、ビジネスそのものが劇的に変化するのだ。
例えば、現在の卸売りは、小売価格を基本にした納入掛率が基本だ。しかし、取引先とのシステム連携により利益配分ルール化と納入掛率の変動相場制が可能になる。現在の取引条件は、刻々と変わる小売店の坪あたりの経費、個々の商品の商品原価率などが、ブラックボックスの中で見えないことを前提にしている。それが見えるようになれば、取引のルールも変わるはずだ。
小売店は最低利益の保証を要求する。それを超える利益についてはルールに基づいた割合でシェアするという考え方だ。小売店が完全にシステム化され、日々の経費が見えるようになれば、日割りの利益を算出が可能になる。納品時あるいはルールで定められた期間の売上・経費を分析し、その上で掛率を自動的に算出すればいいのだ。
こうなると、買取も委託もあまり重要な問題ではなくなる。小売店と卸業者がリアルタイムで売上・在庫データを共有するようになれば、委託条件でも商品リスクは軽減されるからだ。これまで店頭情報は小売店の命と考えられ、それを公開したり共有することは考えられなかったしかし、システムがそれを可能にした。小売店は決して損をしない仕組みを手にすることができるし、卸売業者もシーズン末に大量の返品に頭を悩ませることがなくなる。互いに怪我が大きくなる前に対策を講じることができるのだ。
逆の発想に立つならば、仕入先とのシステム連携を条件に、完全委託のセレクトショップも可能だ。漫画雑誌で人気のあるマンガが巻頭に来るように、売場展開の場所はスペースは一定のルールにしたがって変動させる。各社の商品の売上・在庫データは、店頭と小売店が共有し、商品の返品や納品は納入業者がコントロールする。新着商品の情報を携帯やブログで配信すれば、更にWEB2.0型の業態に近づくだろう。
期間限定のショップ、期間限定の品揃えもシステム連携により容易になる。それらの業態を組み合わせて、新しいショッピングセンターや商店街ができるかもしれない。システム2.0は、ビジネスコンセプトを一新するだけのポテンシャルを持っているのだ。

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