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November 16, 2006

中国法人の現地化と本社の国際化

1.日本の商品企画では売れない
 中国人は、日本のアパレル商品を見て「寂しい」と言う。シンプルな服は安く見えてしまい、装飾で飾られた服は高そうに見えるのだ。
 日本でも「デザイン=装飾」だった時代がある。現在でも「デザイン物」という表現は生きている。シルエットの構築そのものがデザインであるという発想ではなく、フリルや切り換えやリボンを付けて装飾することがデザインであるという考え方だ。日本も高度経済成長時代まではこうした発想が生きていた。
 仮にその頃、ヨーロッパのデザイナーが「日本のデザインの理解は間違っている。シルエットで勝負することがファッションデザインの本質である」と言って、当時の日本市場に進出したとしても成功しなかっただろう。そして、日本のアパレル企業は日本市場を独占し、大きな成功を収めたのだ。
 それぞれの市場には固有の性格があり、それぞれの国や地域では固有の嗜好がある。そういう市場の性格を理解してビジネスを進めることがマーケティングの基本だが、中国に進出している日本企業はその基本を忘れているように見える。

 日本企業に比べると、韓国企業は着実に中国市場に根付いている。日本企業に比べて中国進出した時期も早く、韓国人の派手な色使いが中国人に好まれるということもある。日本製品は色も地味で、形もシンプル。品質が良いのだが、中国市場では外見が優先される。
 また、日本企業は単身赴任で数年間の駐在員生活であり、独特の日本人社会を形成し、地域社会にも溶け込まない。韓国企業は家族ぐるみの赴任であり、地域社会とのコミュニケーションも溶け込んでいる。
 更に、何事にも積極的という意味で、韓国人は中国人と波長が合うようだ。日本人は良く言えば慎重であり、悪く言えば優柔不断。何事も日本本社に相談しないと決まらない。一般的な中国人は「日本人とコミュニケーションを取るのは難しい」と考えている。
 中国人から指摘される日本ブランドの売上不振の最大の原因は、プロモーション不足である。日本でも、60年代後半から70年代はテレビCMをすれば商品が売れた。現在の中国も同様である。消費者は、テレビCMを流している有名な商品は良い商品であると認識している。ヨーロッパの一流ブランドでさえ、認知度を上げるために、かなり泥臭い宣伝広告を展開している。日本ブランドは、ほとんどプロモーションらしいプロモーションを行っておらず、その姿勢もまた、百貨店等から批判されているのだ。
 様々な原因が考えられるが、最も重要なことは、日本企画の商品が中国市場で受け入れられていないという事実である。日本企業は「すぐに売れなくてもいい」と考えているかもしれないが、それでは中国の百貨店がついてこない。実際に百貨店から撤退を迫られた日本ブランドも少なくない。

2.現地企画が難しい理由
 「日本企画では売れないので、現地企画の商品を販売しよう」とという動きも始まっている。一部のアパレル企業では、MD、デザイナー、パターンナーを中国に派遣し、現地企画をスタートしている。しかし、こうした方法で売れる企画ができるかは疑問だ。
 それは企画手法の違いである。一般的な日本のアパレルは、欧米のトレンドを参考にしながらも、基本的には前年実績を土台に、常に店頭の動きに対応している。この手法により、実需期に向けて商品が売れ筋に集中していくのである。
 一方、欧米アパレルは差別化を基本にしている。プロモーションも含めて、いかにブランドのアイデンティティを訴求するか、が重要なポイントと考えている。売場に対応するよりも、デザイナーは新しいコレクションを発表し、それに顧客がついてくるという構造である。デザイナーは売上が悪いと、即、契約を打ち切られるために、市場の動きには注意をしている。しかし、日本のように期近まで引っ張って企画をするのではない。基本的には年2回の計画生産が基本である。
 日本の市場にはパワーがある。欧米トレンドに基づいた商品を出しても、売れないものは全く売れない。反面、ヤング層からの影響を受け、日本独自のトレンドが現れることもある。雑誌に掲載されたファッション情報を自分なりにアレンジする。それが再び、アパレル企業や雑誌に影響を与えるというサイクルを生み出しているのである。
 だから、市場に対応することが非常に重要であり、市場に対応することで売上を確保できるのだ。GAP等の外資企業も「日本市場に対してはローカライズ戦略を強化する」と言っており、これは日本市場の特性を理解したから出た言葉だろう。
 しかし、中国市場は日本市場のようには機能しない。市場を観察し、そこから売れ筋を見極めることも困難である。メディア、メーカー、消費者が互いに影響を与え合うというサイクルは形成されていない。現在の段階では、あくまでプロダクトアウトが基本であり、マーケットインは機能しないのだ。そういう意味では、売れ筋に集中するのではなく、差別化を基本にしたMDが求められていると言えよう。つまり、市場の構造が全く異なっているのであり、その中で日本的な企画手法を行っても通用しないと考えられるのである。
 私は、日本人を中国に派遣するよりも、中国人デザイナーを雇用し、日本で企画させた方が良いと考えている。中国人の伝統や文化、市場の特性や中国人の嗜好を理解した上で、中国市場にはない日本ならではのモノ作りをするのである。もちろん、定期的に日本と中国を往復して、市場の変化に対応ひる必要はある。
 現地化を求められているのは、むしろ営業である。日本の大手アパレルの営業担当者は毎日のように百貨店を巡回している。そうしたきめ細かな営業活動は中国でも重要だ。しかし、日本ではきめ細かい営業活動を行っている企業でも、中国では同様のことができていない。「売上が悪いのに営業担当者は売場を放置しており、何も対策も打とうとしない」という中国百貨店の声は少なくない。
 もちろん、言葉の壁はある。一部の韓国企業は、中国に派遣する人材には事前に徹底的に中国語を学ばせている。現地での生活が満足にできないで、営業の仕事ができるわけがないという考えである。
 このことは、アパレルだけの問題ではない。ある中国人から「日本の家電製品は故障が多く、アフターサービスも悪い」という話を聞いた。日本製品と思うわれているのは、ライセンス製品であり、故障が多くサービスが悪いのも、ライセンシーである中国企業の責任なのだ。それでも、日本のブランドが付いている以上、消費者は日本の製品と認識する。結果的に、日本ブランドのイメージを大きく損なっているのである。
 同様に、現状のままの営業活動を続けると、日本アパレルのブランドイメージが下がってしまう危険性がある。

3.意志決定者の高齢化が若い中国に対応できない
 香港の「IT」というセレクトショップは、上海でもひときわ目立つショップデザインと、感度の良い品揃えで上海の若者の人気を集めている。そのITの店頭には、日本人の写真家による「栗山千明」をモデルにした大きなポスターが飾られていた。東京ストリートファッションの匂いが伝わってくるようなクールな写真だ。一方の日本アパレルの店頭には、ヨーロッパのイメージを出すために、外人モデルの写真が飾られていた。
 大手企業ほど、経営陣や社員の年齢が高い。そして、欧米崇拝が抜けずに、中国人が日本に求めているものを理解していない。上海には本物の欧米ブランドが既に進出している。上海で欧米の真似をしても評価されないのだ。
 中国人が日本に求めているのは、日本オリジナルであり、欧米のコピー商品ではない。また個性が全く感じられないベーシック商品でもない。ベーシック商品ならば、驚くような低い価格で掃いて捨てるほど売られている。
 中国は若い国であり、経営者も若い。日本のように高齢者が裕福なのではなく、富裕層は若い世代である。そんな中国市場では、日本以上に若くて新鮮な感性が求められている。日本ブランドに求めているのは、「ジャパン・クール」と呼ばれる感性にほかならないのだ。
 中国の事業には、日本の経験が染み付いているベテランよりも、既成概念にとらわれない若い世代の方が向いている。但し、日本型組織にどっぷりと使っている人は通用しない。自らが課題を発見し、自ら解決策を考え、自ら行動できる自立した人材が必要である。しかし、そういう人材の多くは日本型組織の中でスポイルされてしまう。奇跡的にそういう人材が見つかったとしても、その若い人材に権限を委譲できるかが課題になる。
 先日、日本の老舗ストッキングメーカーが有名雑誌モデルに企画協力を依頼している様子をテレビで紹介していた。そのモデルと打ち合わせしているのは、ベテランの男性社員である。モデル起用の前に、ストッキングを着用したこともない男性社員が、企画を担当していることこそ問題であり、女性社員を企画の責任者として起用すべきだろう。そして、モデルに対応するのは男性社員ではなく女性社員にすべきだ。このように日本国内でも権限委譲は十分ではない。
 日本人の若い世代に権限を委譲できない会社が、中国人に権限を委譲できるわけがないだろう。現地化を達成するには、権限委譲ができる企業でなければならないし、若い世代が中心となって活躍できる組織を作らなければならない。

4.現地法人を設立しないケースも考える
 かつて、中国生産を行うためには、中国に合弁企業を設立しなければならなかった。同様に、直接中国市場で卸売や小売りを行うのであれば、中国に法人を設立しなければならない。正式な法人でなければ、請求書を作成することもできない。中国で金銭の絡む商取引をする委譲は会社設立が必要である。
 しかし、これは直接進出する場合である。そもそも、中国市場進出とは何を意味するのか。単純に、商品を輸出したいのならば、中国企業を相手に輸出すればいい。その商品を卸売するのも小売りするのも、中国企業であれば容易である。
 中国に法人を設立し、その法人を現地化するのは非常にハードルが高い。給与体系や組織の問題は、現地法人の問題だけでなく、本社の国際化が必要だ。中国進出を機会に本社そのものを国際化させるというのであれば、それもいい。しかし、単純に商品を販売したいというだけならば、現地法人を設立しない方法も考えてみるべきではないだろうか。
 既に、何度か本誌にも紹介しているが、中国のアパレル企業とブランドライセンス契約を交わすという方法もある。ほとんどの中国アパレル企業は、縫製工場を持っている。現在の日本アパレルは商社経由で複数の中国アパレルにOEM生産を委託しているが、それを中国内販の能力を持つ中国アパレルに切り替える。そして、中国販売分のライセンス生産と中国内販のライセンス契約を結ぶのである。
 コスト軽減ばかりを追求すると、輸出向けの奥地の工場に仕事を出すようになるが、内販を前提に考えるのであれば、内販の利益を含めたコストを設定できるはずだ。
 現在のアパレル企業の多くは、生産と営業が分離している。生産コストを厳しく押さえる一方で、内販のための営業コストには無頓着だ。営業コストを掛けずに、ライセンスビジネスの利益が上るのであれば、生産コストは多少高くなっても構わないはずである。
 そう考えると、現在の生産委託先が相応しいパートナーかどうかを、再考する必要があるだろう。商社への生産管理の丸投げも見直す必要が出るかもしれない。安い工場に分散して生産を依頼するのではなく、一社としっかり取り組み、中国内販を行うだ。あるいは、全てを中国生産に依存するのではなく、やはり日本国内の工場も必要であると考えるかもしれない。
 いずれにせよ、縦割りの組織で考えるのではなく、生産、営業両面を含めた経営判断が必要になるのである。

5.中国進出の目的は何か?
 プルミエールビジョンに出展した日本テキスタイル企業が注文に応じられず、キャンセルされるケースが増えているという。産地の生産基盤が弱体化しており、「着分納期が間に合わない」「原反納期が間に合わない」という事態が発生しているのだ。せっかく欧米アパレル企業から商品企画の優秀さが認められているのに、生産機能が整備されていないためにビジネスチャンスを逃しているのである。
 香港や台湾のメーカーであれば、中国に工場を持っているので、いくらでも対応できるだろう。一方で、中国のテキスタイルメーカーはプルミエールビジョンに出展することもできないし、欧米アパレルに認められるだけの企画力もない。
 もし、日本のテキスタイルメーカーが香港や台湾のメーカーのように、中国との連携を深めていればビジネスにつながっていたはずだ。それは日本にとっても中国にとっても利益になるのだ。
 そういう意味で、「メイド・イン・ジャパン」にこだわり、中国との連携が遅れたことについては、素直に反省する必要があるだろう。現在のままでは、結果的に日本のテキスタイルメーカーは更に淘汰が進んでしまう。
 こうした事実を踏まえて、再度、中国進出の目的について考えてみたい。中国の生産機能を活用するということは、日本市場に向けて安い商品を供給することだけが目的であってはならない。なぜなら、単価の下落が市場規模を縮小させ、結果的にビジネスの衰退を招く可能性があるからだ。単価が下落した分だけ数量でカバーできればいいが、そうはならないことは実証されている。
 中国の生産機能を活用することは、世界市場を見据えたビジネスの可能性を開くことである。メイド・イン・ジャパンの製品がどんなに素晴らしくても、生産パワーと価格が見合わなければビジネスにはならない。「中国に生産を委託すると真似される」という不安ばかりを考えて連携を拒むよりは、「どうしたらコピーされないのか」「どのような契約を結べば、相互の利益になるか」を研究するべきではないだろうか。
 その世界レベルのビジネスの中で、やはり中国に法人を設立しなければならないというのならば設立すればいい。検討を重ねた結果、香港に設立した方が良いという結論が出るかもしれない。あるいは、法人設立の必要はないのかもしれない。
 「中国生産さえすれば利益が上る」「中国市場に進出すれば利益は上る」というのは、既に幻想である。再度、自社の足元を見つめ、日本と中国の双方に身を置いて企業戦略を考え直す時期に来ているのではないだろうか。

6.現地法人の現地化と本社の国際化
 中国生産で安い商品を日本で販売するというビジネスモデルは、生産地を海外にシフトしただけの国内ビジネスである。特に、商社に海外での業務を丸投げしているアパレル企業は、何も変わってはいない。
 むしろ、中国に進出した縫製工場の方が、中国人社員を雇用し、欧米の仕事も受注するという意味で、国際的な企業に脱皮するケースも出ている。
 日本に進出している外資ブランド企業の多くは、日本現地法人であるジャパン社のトップに日本人を据えている。その条件とは、専門技術や専門知識の有無ではなく、英語力と欧米ビジネスを理解していることである。日本が中国法人に求めるのも同様の条件だろう。日本語を理解して、日本とのビジネスに慣れていること。しかし、そんな人材が遊んでいるわけはないのだ。
 「現地化を進めようにも、人材がいない」という声を聞く。それならば、まず中国で中国人を採用し、日本本社で数年働かせ、信頼ができるようになってから、中国に派遣して、現地法人の責任者にすればいいだろう。中国人を雇用することは、中国人の発想を知り、中国ビジネスのヒントを得る近道である。現地化には、信頼できる中国人の存在が不可欠である。それには、まず、中国人を雇用することからスタートすべきではないか。それにより、本社の国際化と将来の現地化への備えになるはずである。
 現地法人の現地化を進めるには、十分な権限委譲と、国際的な評価報酬システムを整備しなければならない。言い換えれば、経営システムを国際化しなければならない。「中国では日本のやり方が通用する」という思い込みは危険だ。中国人のビジネス観は日本よりもアメリカに近い。国際化の備えなしに中国進出するよりは、日本国内にとどまることをお勧めしたいと思う。◆

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