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October 18, 2006

8年前の論文

 以下は、1998年にファッション産業21世紀委員会がまとめた「ファッション産業21世紀ビジョン」の中で、私がまとめた論文です。最後のアクションプランは、2005年のクォーターフリーをにらみ、当時から7年間でこの程度のことをしておかないと、クォーターフリー後の新しい繊維産業体制では生き残っていけませんよ、という意見でした。
 しかし、残念ながら、当時書いていたことが昨日書いたように変わっていません。あまりに進まない業界の現状に愕然としています。皆様も超長文ですが、一度、目を通していただきたいと思います。今から8年前の提案ですが・・・。


ファッション産業21世紀委員会/日本文化・アジアファッション部会

部会長 坂口昌章

1.目的
 日本文化・アジアファッション部会では、日本のオリジナルファッションの創造とアジア・スタンダードの可能性を探り、グローバルスタンダード・ファッションの一翼を担う戦略立案を目的とする。

2.ファッション産業におけるクリエーション分野の現状と課題

(1)ファッションビジネスの新時代到来
これまで、日本のアパレル業界では、市場調査を行い、その中から売れる商品を分析し、素早く量産し販売するという手法が中心だった。この手法は、一億総中流と言われる横並びの均質的市場、その中でも効率追求の品揃え型平場の売場では有効に機能した。しかし、バブル崩壊と共に、終身雇用・年功序列給制度も崩壊しつつあり、それと共に市場も変質している。モノ不足時代に効果的だった商品訴求型の平場は、ブランド価値を訴求するショップ型売場へと移行しつつある。
こうした時代変化は、アパレル業界に対し新しい対応を要請している。クリエーションという視点から時代の変化を見ると、「内なる国際化時代へ」「分業から統業、プロデュースの時代へ」「ブランド中心の時代へ」の三つにまとめることができる。

a.内なる国際化時代へ
 90年代以降、日本市場には世界の一流ブランドが集積し、海外ブランドの国内市場参入は現在も続いている。また、国内のアパレル企業のライセンスブランドも次々と契約を打ち切られ、外資の直接的な参入が目立っている。
 高級品はイタリア等の欧米ブランドショップ、中級品はアメリカの大型専門店(SPA)のショップ、実用品の平場では、中国等のアジア製品がシェアを高め、国内のアパレル企業のシェアは次第に減少している。こうした状況は、国内市場の国際化、つまり内なる国際化と言えるだろう。

b.分業から統業、プロデュース時代へ
 これまでのビジネスは、標準化した業務を分業化することで、スケールメリットや経済合理性を追求してきた。しかし、日本は高コストとなり、経済合理性だけではアジア諸国等に勝つことはできない。むしろ、トータルな視点による付加価値創造や合理化が問われている。
分業から統業という変化は、専門的な知識や技術だけでなく、各々の段階を統合するプロデュース的なビジネスが重要になっている。

c.ブランド中心の時代
 アパレルビジネスの主役は、商品を企画生産することから、ブランドを企画プロデュースすることに移行しようとしている。つまり、アパレル産業は「製造卸業」ではなく、「情報プロデュース業」と捉え直さなければならない。
また、テキスタイル産業も、欧米のように最終製品にテキスタイルメーカーのラベルを付けさせるような「テキスタイルブランド」を育成するという発想が求められる。
産業政策にブランドという視点を盛り込み、ブランド価値を財務的にも評価し、企業資産として重視するという政策が求められている。

3.クリエーション育成における四つの課題

(1)国際標準化への対応不全
 日本のアパレル産業は、日本市場だけを対象にしており、ビジネスのシステム(企業の組織、意思決定システム、評価報酬システム等)は、日本独自の形態である。
現在でも、建前では市場原理を許容しているが、本音の世界になると談合的な横並びの価値観がが支配的になり、制度改革を送らせる原因になっている。

a.実力主義の人事評価制度への移行は途上
欧米では、市場とリンクした実力主義によってデザイナーは成長する。デザイナー自身も、アシスタントとして、いくつかの企業やアトリエを廻り、経験を積んで独立することを目指している。
最近になって、ようやく一部の企業が職能評価基準の整備や、年俸制の導入など、実力主義の給与制度を採用している。しかし、多くのアパレル企業は終身雇用・年功序列給制度を基本にした横並びの給与体系を堅持している。実力主義の人事評価及び給与制度への移行は未だ途上段階である。

b.フォローアップ型の戦術が主体で、戦略が欠如
これまでのファッション産業は、欧米の資料のアレンジ、あるいは、売れ筋商品のフォローアップ主体の戦術を採用してきた。それでも、豊潤な日本市場を独占することで利益を確保することができたが、国内市場に海外ブランドや海外資本が参入するようになり、市場シェアは縮小している。しかし、フォローアップ型戦術に慣れた多くの企業は、根本的な改革を伴う戦略的な取り組みに到っていない。

c.閉鎖的でルーズな商取引制度
これまでのファッション流通は閉鎖的であり、自由競争よりも信用を重んじた。商品そのものの優劣よりもコネクションを重視した。系列的な運命共同体意識が育まれ、貸し借りや長期の手形決済など、次第にルーズな取引制度が定着していった。
こうした閉鎖的でルーズな商取引は、国際化に馴染まないばかりか、ベンチャー企業の参入等を阻む障壁になっている。繊維業界の取引改善問題は、長年論議されているが、中核企業が既得権を手放さないために改善が遅れている。

(2)プロデューサー(個人)を基本にした組織への脱皮
日本の組織では、チームの総意による意志決定を望むため、会議や稟議による根回しが必要であり、そのことが責任と権限を曖昧にしている。それに対し、欧米の組織は、個々の職種や部署の職務範囲と権限が明確であり、個人の責任を基本にしている。 今後は、日本の企業も欧米企業と競合しなければならず、横並び組織からプロデューサー(個人)を基本にした組織に脱皮することが求められている。

a.異分野のコラボレーションにはプロデューサーが不可欠
ショップの構成には、商品だけでなく、インテリア、照明、ディスプレイ、グラフィックなどの各分野とのコラボレーションが必要であり、各々の分野をまとめる必要がある。ブランドの開発も同様であり、今後、デザイナーは、単に商品をデザインするだけでなく、トータルなブランドイメージを創造し、それを実現するためのプロデュース活動が求められる。日本のアパレル企業でブランド開発が進まないのは、商品をデザインするデザイナーはいるが、ブランドイメージをトータルに創造できるデザイナーがいないことが一因である。

b.プロフェッショナルを育成する環境とシステムの整備
個人が仕事に対し、明確な責任を持つことがプロフェッショナルの条件である。プロフェッショナルな人材を育成するには、職場や教育機関のゆとりある環境、明確な権限と責任、評価システムと報酬などのシステム整備が必要になる。
全ての面で横並びではなく、個を重んじ、個の力が充分に発揮できるようにすることが、今後の組織のあり方になるだろう。

c.実績に応じた報酬と業務責任の明確化
デザイナー等のクリエイティブな職種では、人材の流動性を高め、業界という枠組みの中で人材を育成することが必要になる。また、能力を評価し、それに見合った報酬システムが不可欠である。販売や営業のプロフェッショナルを育成するには、売上とリンクした報酬制度が不可欠になる。
このように、プロフェッショナル育成には、教育システムと評価及び報酬制度の組み合わせが必要であり、業界としてもそれらの制度を早急に整備しなければならない。

(3)西欧崇拝偏重から自国文化(アイデンティティ)の再認識へ
日本では、明治以降「舶来上等」という価値観が根付き、それが敗戦以降、より強化されていった。特に、ファッション商品は,その傾向が顕著である。
一方で、和食、和陶器、ゆかたなど、日本の伝統的なライフスタイルや工芸品を生活に導入しようという動きも根強い。
快適な生活とは、その国の風土に合ったライフスタイルで初めて実現できる。気候風土の観点から洋服の機能構造を見直したり、和様文化を再認識すること。そこから日本オリジナルのファッションビジネスのチャンスが生まれることを期待したい。

a.国際的視点による西欧と自国文化の冷静な比較と評価
日本と西欧のデザイン、美意識を比較すると、非常に対照的であることが分かる。事例として、以下の5つの要素をあげる。

・立体と平面の違い(立体の洋服と平面のきもの、西洋絵画と浮世絵)     
・対称に対する感覚の違い(フラワーアレンジメントと生け花、ゆがみやゆらぎ)
・空間、間に対する感覚の違い(絵画の背景、白壁の美)
・複雑と簡素に対する意識の違い(バイオリンと三味線の造形、簡素な洗練)
・ノイズに対する感覚の違い(虫の音に関する認識、邦楽器と洋楽器の音の差)

b.日本文化を基本にした国際ブランドの創造
 日本の文化、和様の価値観やライフスタイルを基本にしたブランドや商品を世界市場に展開するためには、文化や価値観そのものを商品と考え、戦略的にマーケティングを行う必要がある。日本文化は最大のデザインリソースであり、世界市場を攻略する武器になる。

 以下にいくつかの提案をする。

・作務衣(東洋のジーンズ、固いデニムと差別化した日本の素材)
・茶室(茶室を部屋の一角に設えることを流行させる仕掛けづくり)
・日本趣味の瞑想室(禅と瞑想の実践スペース、掛け軸や花卉もセット)
・きもの(ナイトガウン、きものドレス、伝統工芸や伝統芸能との組み合わせ)

c.脱ライセンス依存のビジネス構築へ
海外のデザイナーやアパレルメーカーからサイセンスを取得し、国内で生産するというライセンスビジネスは、転換期を迎えている。日本の企業にライセンスを与えるよりも、独自で日本市場に進出する海外企業が増え、契約を打ち切られる企業が増えている。今後は、ライセンスに頼らぬ独自のブランド戦略を構築しなければならない。

(4)新時代のビジョンの欠如
豊潤な日本市場を独占してきた国内アパレル企業は、中長期的なビジョンを必要としていなかった。短期的な戦術対応で充分だったのである。しかし、国際化や情報化の進展により、戦略的なビジネスに転換しなければ、国内市場でさえ生き残りが難しくなっている。戦略にはビジョンが必要不可欠であり、企業及び業界のビジョンの構築が望まれている。

a.ドメスティックな課題解決が困難
流通問題や取引問題などのドメスティックな問題は、既得権者の利害が絡んでおり、問題点が理解されていても改善が進まない。そのため、ビジョンを作成しようとしても、ドメスティックな問題に対する改善の議論に終始し、グローバルな時代のビジョン作成に到らないことが多い。

b.計数的な目標設定による経営
 企業のビジョンを尋ねても、売上や利益といった計数の目標しか説明できない企業経営者が多い。今後は、企業の社会的意義や経営の質が問われ、明確なビジョンが必要になるが、現状ではビジョンなき経営が多いのが実態である。

c.工軽視と商偏重
日本の繊維業界は過去に輸出産業であったことや、比較的参入が容易であることから、慢性的な供給過剰体質である。そのため、工よりも商が優先される傾向が強い。
日本の繊維関連工業は世界的レベルだが、ドメスティックな市場で成長してきた流通業、小売業は世界に通用するレベルとは言えない。商の偏重は、世界に通用する工を衰退させ、最終的に国際競争力の低下を招く。今後は、商と工のバランスの良い成長が望まれる。

4.21世紀に向けてのクリエーションの方向性と目標

(1)日本オリジナルのブランド創造
 日本のアパレル産業が自立するためには、オリジナルのブランド開発が不可欠である。以下に、ブランド開発の視点をあげる。

a.テキスタイルデザインによるブランド
 日本のきものに使われている布は、欧米のテキスタイルにはない様々な特徴を持っている。こうした特徴のあるテキスタイルを駆使したブランドは十分な可能性を持っている。以下に日本のテキスタイルの特徴をいくつかあげる。

・洗練された装飾性(織、染、刺繍、絞り、手描き等の多彩な技法が同居)
・伝統的な先染めの柄(縞、格子、絣等)
・名物裂や古代裂などの文様(シルクロードの終着点である日本に伝来した文様)
・草木染を中心にしたナチュラルなカラー(西欧の伝統色と異なる独特のカラー)
・きものに用いられる独特の織組織(紗や絽、唐織、よろけ縞や波おさ、多重織)

b.非日常ライフシーンのファッションブランド
 きものは開放的な柔構造の衣服である。閉鎖的で構築的な洋服の視点からは、リラクシングしたオフタイム用途の服に映る。きものが欧米に紹介された時も、西欧人はナイトガウンとして着用した例が最も多い。この実績を生かし、日本人が持つ繊細な感性を生かしたインティメイト・ブランドを開発し、世界市場を攻略する。

c.文化輸出とファッションビジネス
 ファッションの輸出とは、その国の文化を輸出することに他ならない。日本が世界に日本のファッションを輸出するのであれば、日本の文化を世界に輸出する戦略が必要になる。世界市場の中で、日本オリジナルブランドのシェアを高めることが、21世紀の目標である。

(2)現代生活における日本文化のリポジショニング
 現代生活に対応しない伝統工芸や伝統産業に対しては、技術や文化の継承を目的に保護されているが、一方で現代生活における新たなポジションを得ることも必要である。日本の伝統や文化は日本の風土に適応したものであるという視点から、現代生活の中で生きられるコンセプトの確立が望まれている。以下はその事例である。

a.エコロジカルライフとしての日本文化
 江戸時代の日本は、世界にも稀なエコロジカルなシステムを持っていた。環境リサイクル問題が深刻になるにつれ、日本の伝統的なエコロジカルな生活が注目されるだろう。
きものは最小限の裁断による長方形の布で構成されており、リフォームやリサイクルがしやすい。また、伝統的な素材は全て生分解する。きものをエコロジカルライフの象徴として捉え、新たなポジションを獲得する。

b.風土に合った健康的なライフスタイル
 湿度の高い日本の気候風土においては、開放的な構造を持つきものは快適である。また、身体を締めつけないきものはストレスを軽減し、肩痛や腰痛にも良い。足袋、下駄も靴よりも健康に良い。健康ブームを背景に『健康になりたければきものを』というキャンペーンは有効だろう。

c.高齢化社会と日本文化
 若い時に西欧文化に親しんだ人も、高齢者になると日本文化に親しむ人が多くなる。今後、高齢化が進むにつれ、日本文化のニーズは高まるだろう。
ネクタイとスーツという男性のファッションは企業社会の象徴であり、フライベートな生活を象徴する衣服としてきものを捉えれば、リタイア後の生活着というポジションが得られるだろう。

d.温帯モンスーン気候に対応した平面文化
平面の服を着ると、立体の身体との間に空間が生じる。その空間が湿度の高い温帯モンスーン気候には快適になる。また、たたむと平面になるので、収納の面でも機能的である。平面であることのメリットを持つ衣服という「きもの」のポジションは、現代生活にも通用するものである。

e.日本文化を基本にしたライフスタイル創造
21世紀には、日本文化を基本にした、エコロジカルで健康なライフスタイルを世界に普及させ、世界市場の中で頑固とした位置を占めることを目標とする。文化に裏打ちされたビジネスは、他の国の追随を許さず、安定したビジネスを展開できる。

(3)日本文化を基本にしたクリエーション
日本文化を基本にしたクリエーションを奨励することは、日本オリジナルのファッションビジネスの発展に寄与する。
21世紀のビジネスは、文化が重要な要素になる。日本文化を輸出し、海外における日本文化の拠点整備、及び多角的なイベント戦略による「ジャパン展」等のプロデュースが重要である。

(4)クリエーションを基本にしたファッションビジネス
日本のアパレルでは情報分析から商品企画が始まり、欧米のアパレルでは個人の発想から商品企画が始まる。トレンド情報や昨年実績を基本にすると、情報が同質化しているためにどうしても同質化した商品企画になってしまう。イタリアでは、トレンド情報を入手しても、いかに独自性を加えるかを考える、という。
日本のアパレル産業がグローバルな水準に到達するためには、経営者がクリエーションの重要性を理解し、クリエーションを基本にしたファッションビジネスを志向することである。

(5)西欧の服に対するアジアの服
現在、世界中の人々が欧米の文化を元にした衣服「洋服」を着ている。これは、西欧文化が世界を席巻している証とも言える。本来、衣服とは固有の風土や文化に基づいて発達したものである。西欧の服に対するアジアの服を確立し、独自のポジションを獲得することが、アジア全体の安定したファッションビジネスを保証することになるのである。

(6)西のイタリアに対する東の日本
高度なテキスタイルを生産することのできる国は限られている。蚕が生育できる温帯であることが織物の歴史と技術を育み、きれいな軟水が豊富にあることが染色の歴史と技術を育んだ。こうした条件を満たすテキスタイル先進国は日本とイタリア以外にはない。イタリアと日本がそれぞれのアイデンティティに基づき、独自のテキスタイルセンターとなることが、欧米とアジアのファッション産業を発展させる礎になるだろう。人件費や経済効率だけで繊維を斜陽産業と認定するのではなく、潜在的な産業資源を認識し、産業育成することが求められている。

(7)アジア諸国との連携による文化創造
アジア諸国が経済的にも文化的にも自立することが、アジアの安定につながる。日本は西欧文化を導入した先達として、アジア諸国と連携し、独自の文化を創造する責任を担うべきである。
西欧のカウンターカルチャーとしてのアジアンカルチャーを世界に発信することを提唱したい。

(8)アジアファッションによる世界市場戦略
アジアの独自のファッション文化を創造し、アジア諸国と連携しながら、世界市場を攻略するための戦略を立案する「アジアファッション戦略会議」を組織し、独自のビジネスを展開していくことが望まれる。

5.当面取り組むべき重要な課題

(1)専門職の社会的地位向上(オープンな評価システム)
今後のファッションビジネスでは、プロフェッショナルな専門職の育成が必要である。そのためには、彼らの社会的地位を向上させ、やりがいのある仕事として認知させること。オープンな評価システムと、能力や実績に見合った報酬システムの構築が必要である。企業間を流動する人材が増えると共に、業界内での共通基盤の整備が求められる。

(2)クリエイティブな人材を育成する教育システム
人材教育には、学校などの教育機関が行うOFF-JTと企業内で行うOJTがある。これまでは、学校教育は教養や純粋な学問が目的であり、職業教育や産業教育は終身雇用の環境の中で企業が担当してきた。
リストラによる終身雇用の崩壊は、この構図を変化させた。企業は即戦力を求め、学校に対しても実践的教育を要求するようになっている。学校も、若年人口の減少から、社会人教育や生涯学習に取り組まざるをえない状況になっており、教育システムは大きな転機を迎えようとしている。

a.学校による産業教育、職業教育
現在、大学、専門学校等では、産業界で働いた経験のない教職員が大多数である。学校の役割が変わるにつれ、学校と産業界の大規模な人材交流が必要になる。その一歩として、教職員のインターンシップ制度の整備等も検討すべきである。

b.企業内の人材育成システム
今後、企業は即戦力を求め、人材の流動化が一般化する。人材は設備と同様に企業資産であり、人材への投資とその回収という発想が生まれて来るだろう。特に、情報やサービスが主要な業務になるほど、人材育成が重要になるに違いない。
国際競争に勝ち抜くためにも、企業内の人材育成を支援することが必要である。

(3)ファッションを中心にした異業種ネットワーク
ファッションをアパレル製品生産という狭義に捉えていたのでは、ライフスタイルや文化をビジネス化することができない。今後のファッション産業は、最も生活者に密着した産業として他産業との連携を強め、様々な形態での異業種交流が重要になる。積極的な異業種交流を推進することが求められる。

(4)テキスタイル、小売店による日本人デザイナー育成システム
デザイナーの育成は、原料から小売りにいたるまで、全てのサプライチェーンの活性化につながる。テキスタイル業界はデザイナーのコレクションに素材を提供し、小売店は売場を提供するなど、業界全体が具体的にデザイナーを支援していくシステムの構築が求められる。

(5)教育機関の国際交流推進
市場が国際化するにつれ、人材の国際化が進むだろう。これまで、国内のアパレル業界に人材を供給してきたファッション専門学校もまた、カリキュラムや教育システムを国際化していく必要がある。そこで、海外の専門教育機関と積極的に交流し、新しい時代に対応できるようにしなければならない。

(6)ビジネスに則した産学連携
産業教育、実践教育のための教材開発、教育システム開発等を産学連携で行わなければならない。また、産業側は学校に情報を積極的に公開し、事例研究を委託するなど、繊維ファッション産学協議会等を通じて新しい産学連携のあり方を構築していく。

(7)伝統的意匠の発掘、再評価、データベース化
日本の伝統的意匠を発掘し、誰もが使えるようにデータベース化する。その場合、著作権により利益をあげるという視点ではなく、国民にフリーウエアを与え、新たな産業を生み出すという視点が必要になる。

(8)繊維ファッション産業全体でのデザイナー支援システム
デザイナーの育成と活性化は、産業全体の利益につながるという認識を持ち、産業全体でデザイナー支援を行うシステムを構築する。

(9)日本のテキスタイル、縫製技術等を世界のデザイナーに紹介する事業
日本のテキスタイルや縫製技術は、世界のアパレル企業やデザイナーに充分知られていない。これらの情報を戦略的にプロモーションすることにより、日本の繊維関連メーカーの底上げを行う。

(10)「ジャパンクリエーション」の発展と国際化
テキスタイル総合見本市である「ジャパンクリエーション」を更に発展させ、グローバルスタンダードのビジネス基盤を整備する。また、海外でのプロモーションや段階的な海外企業の出展を促し、世界規模の見本市に発展させる。

(11)アジア諸国との文化研究、文化交流、ファッション交流
日本の繊維ファッション産業の発展には、アジア市場が重要な鍵を握る。単に、経済的意味ばかりではなく、アジア諸国と交流しながら世界市場の中で西欧以外の文化を基本にした産業を育成し、アジア諸国が共に発展することを目指す。

(12)アジアスケールの団体組織化と各コレクションのアイデンティティ構築
アジアの交流の母体となるアジアスケールの団体を設立する。各国のコレクションが明確なアイデンティティを構築し、アジアファッション全体の相乗効果が向上するような戦略立案を行う。

8.今後のアクションプラン(2005年までを想定)

 現在、ジャパンという言葉は漆の意味を持っている。今後は「ジャパン」という言葉に、西欧とは異なる独自の文化、価値観、美意識を込め、ジャパン・アイデンティティを確立することを提案する。世界にジャパンを輸出し、西欧に対するアジアのアイデンティティを確立することは、国際貢献にも通じる。

(1)ジャパン・クリエーション(日本文化に基づいた日本オリジナル創造)

a.日本オリジナルのブランド開発
ブランド開発のための情報サービス商標登録面での助成などの事業化。

b.伝統的デザインのデータベース化
自由に使える伝統的デザインデザインコンテンツをデータベース化する事業。

c.エコ・ファッション研究開発
環境リサイクル等を配慮したファッションの研究、商品開発を助成する事業。

d.きものワードローブ研究開発
現代生活を基本にした新しい和様のきものワードローブを開発する事業。

e.ジャパンスタンダード策定
国際標準より厳しいジャパンスタンダードを策定し、ジャパンクオリティを訴求。

f.業務及び評価基準策定
繊維ファッション業界の各職種の標準業務のマニュアル化と評価基準の策定。

g.ファッション関連の知的所有権保護
テキスタイル、アパレルデザイン等の分野における知的所有権保護に関する検討。

(2)ジャパン・プロモーション(日本の文化、産業、ファッションを世界に発信)

a.ジャパンテキスタイル・プロモーション
日本のテキスタイルを世界のデザイナーに紹介。新人デザイナーには素材提供も。

b.ジャパンテキスタイル情報サービス
テキスタイルメーカーと企業やデザイナーを双方向に結ぶ情報サービス事業。

c.ジャパンクリエーション・ウイーク
テキスタイル見本市だけでなく、アパレル、繊維機器等の見本市、コレクション、シンポジウム等を集中的に開催。

d.「ジャパン展」プロモーション
世界の拠点都市で、日本の伝統、文化、技術、ファッション等を紹介する事業。

e.アジア・ファッション・フェア
アジアのファッションを世界に発信する総合的なイベント。

(3)ジャパン・エデュケーション(グローバル時代に通用する人材育成)

a.産学連携ファッションビジネス研究
ケーススタディを中心にしたファッションビジネス研究を産学連携で推進。

b.選抜学生ファッションコンテスト
大学、専門学校等の学生を全国から選抜し、分野毎に競い合う人材育成イベント。

c.産業教育システム整備
社内教育、学校教育のシステム、教材開発。

d.日本文化の教育プログラム開発
日本文化、日本の伝統的デザイン等を学ぶ教育プログラム、教材の開発。

e.日本型インターンシップ制度整備
学校、企業間での最適な教育システムの開発と独自のインターンシップ制度を整備。

(4)ジャパン・ネットワーキング(日本からアジアに広がるネットワーク)

a.デザイナー・ネットワーク設立
WEB上でデザイナーを組織化し、同時に客観的な評価システムを開発する。

b.デザイナー支援の産業ネットワーク
素材提供、売場提供、空間提供等の支援を促す税制措置や助成のシステム整備。

c.和様デザインネットワーク設立
(異業種も含む)和様デザインの研究と商品開発のためのネットワーク組織化。

d.和様デザインのブランド開発
和様デザインコンテンツを利用したブランド開発とビジネス化の推進。

e.アジア諸国とのデザイナー交流
アジア諸国のデザイナーを日本に紹介するなど、各国のコレクションを支援。

f.アジアファッション戦略会議開催
アジアファッションで世界市場を攻略する戦略を立案する組織とシステム作り。

(5)アウトソーシング型運営
事業の推進にあたっては、事業案件ごとに業界関連団体や企業等から推進母体の運営企画案を公募する。推進母体として認定を受けた後、推進団体を組織化し助成を行う。推進団体は期限を決め、効果が上がらなければ助成は打ち切り、再公募する。このように推進機関そのものに競争原理を導入し、アウトソーシング型の運営を行う。
こうした環境作りが、実践的なシンク&ドゥ・ネットワークの組織化につながる。現在、行政が担当している事業も、民間へのアウトソーシングの可能性を探ることが望ましい。

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