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August 08, 2006

中国ビジネスと情報システムの潮流

1.中国生産を生かすビジネスモデル
これまで日本企業が展開してきた中国ビジネスは、「世界の工場」としての中国をいかに活用し、「安くて良い商品」をいかに日本で販売するか、であった。そして、いち早く中国を活用した企業は先行者利益を上げた。しかし、誰もが中国生産を活用するようになった現在では、中国生産商品の価格競争が激化し、中国製品を日本に輸入するだけでは十分な利益を確保することが困難になっている。
更に安価な製造コストを求める企業は、中国よりも人件費の安いベトナムやミャンマー、バングラデシュ等での生産を試みるだろう。
日本市場を起点に考えると、「生産拠点の移動」ということになるが、中国生産を起点に考えるのならば、「海外市場の開拓」という可能性も出てくる。日本企画、中国生産の商品を海外市場で販売するというビジネスモデルである。
特に、日本のテレビ、映画、マンガ、音楽、ファッション等が人気を集めている国は有望だろう。この場合は、メディアやエンターテインメントとのコラボレーションによるブランド企画が望まれる。アジアで人気の高いアーティストによるブランドであれば、相乗効果が生まれるに違いない。こうした背景を考えるのであれば、日本アパレル企業は欧米のライセンスブランドを軸とするのではなく、今後は日本オリジナルのブランド開発を軸としたビジネスを展開しなければならない。

現在、日本アパレル企業は中国市場ばかりに目が向いているが、中国市場は競争が激しい。何よりも、中国アパレル企業との競争が待っている。それよりも、中国とFTA を結んだASEAN 市場を攻略するという戦略もあり得るし、極東ロシアに目を向ける考え方もあるだろう。あるいは、世界中のオタク市場など、特殊な市場に向けて、日本企画・中国生産の商品で勝負することもできるのではないか。
いずれの場合も、中国生産を活用したビジネスを日本企業が行うのであれば、中国ではできない卓越した企画機能を持たなければならない。日本の製造業者は「中国にできないモノづくり」を志向しているが、コスト高になることは避けられない。ファッションビジネス全体を考えれば、「中国にできない企画」の方がはるかに実現性も可能性も高い。中国の生産能力を活用するビジネスを実現すれば、日本・中国がWin ・Win の関係になるのである。

2.中国市場攻略の新たなビジネスモデル
一方で、中国生産の商品を中国市場で販売しようという動きも出てきている。日本アパレル企業の多くは中国生産に依存している。日本アパレル企業の中国市場進出とは、中国製品を中国市場で販売することに他ならない。しかし、日本でも問屋の中抜きが始まったように、中国でも同様のことが必ず起きるはずである。
中国のアパレルが直接、欧米のアパレル企業とライセンスを結んだり、海外のデザイナーと契約することも考えられる。あるいは、日本のアパレル企業が使っている企画会社に中国アパレルが直接企画を依頼することも始まるだろう。
もちろん、中国人デザイナーズブランドや、中国アパレル企業も力をつけてくるに違いない。日本資本の小売店が中国アパレルから製品を調達するというケースも考えられる。
私が聞いた「スペインアパレル企業のライセンス契約の事例」は興味深いものだった。
まず、スペインのアパレル企業が企画マップ、プロトタイプのマスターパターン、デザイン、素材構成等の資料を中国側に送る。中国アパレル企業はそれを元に、素材や付属を調達し、サンプルを制作し、スペインに送ってアプルーバルを受ける。ここまでは日本アパレル企業のライセンスビジネスと同様である。
日本では日本アパレル企業がライセンス生産を行い、日本市場で販売するが、そのスペインアパレル企業はEU 市場で販売する分も一緒に中国アパレルに発注し、輸入する。そして、中国市場での販売権を中国アパレルに与えているのである。
つまり、そのブランドは、スペイン企業が企画とEU市場での販売、中国アパレルは生産と中国市場での販売という役割分担をしていることになる。これは双方にメリットのある取り組みと言えよう。驚くべきは、既にそうした取り組みができるほどに、一部の中国アパレルは実力を蓄えているということである。
日本でも同様のことは可能である。日本の場合、小売店と企画会社が組んでPB 開発を行うということでも良いだろう。企画会社が小売店と話し合い、企画を固め、中国アパレルにプレゼンテーションする。中国アパレル企業はサンプルのアプルーバルを受けて、日本市場向け商品と中国市場向け商品を生産し、中国市場での販売を担当する。販売に関するノウハウは、日本の小売店が担当すればいい。
こうなると結果的に、日本のアパレル企業が中抜きされるということになる。これを防ぐためにも、日本アパレル企業は一層の企画力向上に努めなければならない。

3.「カリスマ経営者と天才軍団」と「結束とチームワーク」
中国人の考え方は、日本人よりもアメリカ人に近い。合理主義で個人主義。従って、組織をまとめるには、卓越した個人の力が要求される。最近、話題のGoogle やMicrosoft 等のIT 企業は、世界中から天才・秀才を集めている。そして、優秀な社員を集めた大企業をまとめるためには、カリスマ的なリーダーシップが求められる。これは中国にも共通している。強いリーダーシップと優れた人材を集めて競争力を獲得するのだ。しかし、裏を返せば、「優れたリーダー」「高い報酬と快適なオフィス環境」「優秀な人材」がいなければ会社という組織が力を発揮しないということである。
日本企業を見ていると、「どうしてこんなダメな人が一流企業にいられるのだろう」という社員を多く見かける。また、大部分の経営者も凡庸であり、アメリカや中国のようにカリスマ的な経営者は少ない。それなのに、日本は会社組織がまとまっている。社員は会社のために一生懸命働くし、会社を核としたチームワークが生まれる。そして実際に利益を上げているのだ。
カリスマと天才で利益を上げる企業モデルと、凡庸な人間が結束し、個人プレーではなく集団のシステムで利益を上げている企業モデルは根底から異なっている。そして、これこそが日本企業の強みと言えよう。
最近、話題になっているGoogle が構築しようとしている世界観は、インターネット上の個人主義社会が基本になっている。そこには、企業が持つヒエラルキー組織や階層構造は見られない。あくまで自立した個人の活動が基本になっている。
アメリカで生まれたコンビニエンスストアが開花したのは日本市場であり、コンビニエンスストアの経営システムを確立したのは日本である。一握りの天才による経営ではなく、パートやアルバイトも含めた普通の人がマネジメントできるシステムを開発するという思想そのものが勝負を分けたと言えよう。先日も上場企業のブックオフのトップにパート出身の女性が就任した。MBA が企業を支配しているアメリカ社会ではあり得ない出来事である。
日本が得意とするシステムは、トップが末端をマネジメントするという思想ではない。すべての末端のスタッフが正しいマネジメントができるような情報とスキルを与え、セルフマネジメントするという思想である。従って、カリスマ経営者も天才軍団も必要ない。個人ではダメ社員と烙印を押されたとしても、チームは正常に機能するようなシステムを構築しているのである。
最近は、護送船団方式、横並び、悪平等といった日本の集団主義のマイナス面が強調されていた。それらの弊害が出ていたのも確かだし、才能のある人間が集団社会の中で適応できなかった事例も少なくなかった。しかし、国際的な競争社会を勝ち抜くには、弱みの克服だけでは不十分である。個人社会の原理では、アメリカや中国の方が有利である。日本が彼らと勝負するには、自らの強みである集団主義を磨いていかなければならない。そして、集団が機能するためには、それなりのツールが必要になるのである。

4.個人主義社会と集団主義社会をつなぐシステム
自立した個人をつなぐという発想で、アメリカのインターネットは発達してきた。Google が目指すのは、すべての個人に対して、無料で世界中の情報を検索、提供することである。彼らは、インターネット上に究極の理想郷、究極の個人主義社会を構築しようとしているように見える。実社会では複雑な組織や権力者が存在しているが、インターネット上は個人が自由に活動できる。その自由な世界を確保し、成長させることで、リアル社会を変革しようとしているのではないか。
個人がインターネットを使って生活しようとすれば、まず、インターネット上のビジネスを考える。従って、多くのインターネットビジネスが開花し、多くのビジネスサービスが登場した。
日本においては、仕事は会社単位で行うものであり、個人は余暇時間の中で活動するに過ぎない。従って、個人生活の中でインターネットを使う場合も、遊びや趣味などの仕事以外の分野が主流だ。
インターネット上の出会いも、アメリカではビジネスマッチングが主流だが、日本では個人の出会い系が主流になっている。アメリカ人はインターネット上でも本名を使うのに対し、日本人は本名を公開することを嫌う。
日本のような集団主義社会では、個人が平等に存在するインターネットよりも、ヒエラルキー組織を基本にした業務システムやグループウエアが有効である。誰もが接続できるWEB の世界ではなく、特定のソフトをインストールしたメンバー同士だけが互いに連絡する閉鎖的な世界。しかも、職制や担当により情報開示がコントロールされることが求められる。すなわち、我々が日常的に経験している会社組織そのものをコンピュータネットワーク上に再現することである。
日本企業に必要なのは、「個人がいかに自由に働けるか」というアメリカ型システムではなく、「いかに集団が効率よく機能するか」という日本型システムであり、緊密な社内コミュニケーションと、取引先や得意先との社外コミュニケーションを連携させることである。すなわち、WEB 化ではなく、グループウエアのインターネット連携化が求められているのである。

5.人的システムと人的連携
日本人同士のコミュニケーションでは、いくつもの暗黙の了解が存在する。「他人に迷惑をかけてはいけない」「初対面の人でも名刺交換をすれば、まずは信用する」「会社員たるもの、家族やプライベートな生活よりも、会社の仕事を優先する」等々である。
日本の常識だが、これが海外で通用するとは限らない。例えば中国では、基本的に信頼できるのは、自分と親族であり、基本的に他人は信用しない。極論すれば「他人は敵」なのだ。当然のことながら、他人の集合体である会社よりも、家族を優先する。家族が入院すれば、会社を休んで見舞いに行くのは常識である。
そもそも、会社とは個人が経済活動を行うための装置であり、利益は個人に還元するものだと考えている。日本のように創業百年などという会社は存在しないし、先祖代々の仕事という意識もない。従って、会社の売買にも抵抗はないし、一流会社の名刺を出しても信用しない。信用するか否かとは、個人を対象にするのであり、会社を信用するからその会社員を信用するという発想はないのだ。
商売は基本的に信用している人としか行わない。他人が飛び込みで営業に来て、いきなり商品を説明しても商売にはならない。まずは、個人対個人のつながりを確認するところから始まる。親戚であるとか、同郷であるとか、同じ大学であるとか、信頼できる人の紹介であるとか、共通の友人がいるとか・・・。とにかく、縁のつながりを確認することが優先するのだ。
こうした日中の人間関係の違いは、前述したシステムの違いに相当する。誰もがつながれるWEB のような開放型システムと、親族間の閉鎖的なシステムである。それらを使い分けながら、ビジネスを進める必要があるだろう。開放的な人間関係で重要なことは、自分の主張を明確に発信すること。また、ボランティアなどを通じ、積極的に地域社会に溶け込むこと。社交上手であること。
閉鎖的な人間関係、信頼できる身内のような人間関係で重要なことは、決して嘘をつかず、個人を裏切らないこと。また、会社の仕事よりも何よりもその人との関係を優先すること。例えば、先約があったら、それをキャンセルしてでも身内を優先すること。
この二つを使い分けなければ、人脈は作れないし、二つの異質な社会をつなぐビジネスはできないのである。

6.閉鎖的取引のシステム化
展示会システムにも開放型システムと、閉鎖型システムが存在する。開放型とは、欧米の見本市のように基本的には誰にでもオープンに販売する展示会である。価格リストを用意し、定価販売を行う。
閉鎖型展示会とは、日本の多くの展示会のように信用取引を基本として、取引口座のある相手とだけ売買を行う展示会である。
欧米の展示会も、実態はかなり閉鎖的である。展示会にすべての商品が展示されるとは限らないし、有力な取引先には展示会前に商談を進めている。しかし、基本がオープンであるということだ。
日本では、そもそも合同展示会で発注するという習慣がない。発注作業は取引先と相対で行うのが一般的である。また、定価販売ではなく相手によって価格を変えることも日常的に行われている。最近になってオープンなインターネット販売を行う卸売り業者も出てきた。しかし当然のことながら、扱い商品の多くは定番的な商品であり、差別化商品の扱いは少ない。
差別化商品の取引には、絞り込んだ相手だけと商談するシステムが必要である。合同展示会に名刺交換を行い、別途、相手先に訪問して商談するというのは、極めて合理的なスタイルである。もちろん、定番的な商品の在庫を構えてオープンに販売する形態であれば、展示会で発注することも可能だ。しかし、それならば、インターネットで年中販売する方が更に合理的である。
差別化商品の取引を支援する情報システムとは、WEB 型ではなく、インターネット連携されたクライアント・サーバー型のグループウエア・システムである。しかも、取引の伝票処理をシステム化するのではなく、プレゼンテーションそのものをシステム化しなければならない。
もちろん、クライアント・サーバー型のシステムにも課題はある。取引相手にもソフトをインストールしてもらうことが必要であり、そのシステム費をどちらが負担するのかが問われるだろう。しかし、発想を変えれば、こうしたシステムを構築することは展示会をオーガナイズすることに等しいのであり、出展経費と入場料を支払うのであれば、その経費でシステムを開発運営することも夢ではない。
こうしたシステムは、中国とのビジネスにも必要とされるだろう。日本人の苦手な人的コミュニケーションの代替手段としてのシステム活用である。

7.まとめ
中国は、日本と異なるシステムで動いている。というよりも、世界的に見れば、日本の方が特殊なシステムで動いているのかもしれない。
また、インターネットの発達の方向性を見ても日本とアメリカでは大きく異なる。これも社会システムの違いであり、日米の生活者の発想や価値観から生じたことに違いない。
これまで日本は、欧米のキャッチアップを目指しており、こうした日本の特殊なシステムこそ改革すべきものであると言われてきた。しかし、観点を変えれば、日本には独自の個性があるからこそ、欧米人には真似のできない発想があり、そこにこそ国際競争力があるともいえるのだ。
インターネットや情報システムの分野でも、思想が異なればシステムも異なるはずである。私は、Google やMicrosoft にはできない日本独自の発想でシステム開発を行うべきであると考えているし、それは可能だと確信している。
日本、中国、アメリカという各国の思想の違い。すなわち、国のシステムの違い。ビジネスのシステムの違い。それらと情報システムを並列にして、三題話のように論じてみよう、というのが今回の狙いである。まだまだ消化不良ではあるが、更に考察を重ね、新しい時代のビジネスモデルの可能性を探っていきたいと思う。

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