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April 06, 2006

産地リノベーションと産地コンバージョン

 時代は変化する。ビジネス環境も変化する。産業も変化し、産地も変化する。
 これまで産業振興、産地活性化ということで、不況業種や不採算企業をいかに再生するかを考えてきたが、これは変化を容認しないという考え方でもある。産業も企業も時代と共に変化する。したがって、時代に合わせた変化を推進するという考え方に立つ必要があるのではないか。
 これまで、不動産や建築の世界では、「変化」=「スクラップ&ビルド」だった。不要になった工場や事務所は、取り壊し、更地にして、新たな建物を新築する。しかし、この手法は日本独特とも言える。
 ヨーロッパでは、建築物は都市を形成する歴史的要素であり、不要になっても簡単には取り壊さない。外観はそのままに中身を変えることが一般的である。
 最近になって、日本の建築業界、不動産業界でも、リノベーション(改修)、コンバージョン(用途変更)という言葉が流行りだした。建物を壊して新築するのではなく、古い建物をベースに新たなデザインを加え、新しい用途を開発するというものだ。


 リノベーションの意義は、産業廃棄物をなるべく出さないという環境問題だけではない。その土地、建物を含む地域の歴史を継続するという意味もある。たとえば、繊維産地が衰退し、機屋の工場が減っていく。全てが更地になり、新しいマンションやオフィス、駐車場に変われば、地域の記憶が失われしまう。その地域にはどんな産業が存在し、地域住民がどんな生活をしていたのか、という記憶が断絶するのである。機屋の工場をリノベーション、コンバージョンして、集合住宅や生涯学習センターに生まれ変われば、「ここでは昔、織物を作っていたのだ」という記憶が継続する。
 また、古着に魅力を感じたり、ビンテージのジーンズに愛着を持つように、時間を経た建物にも同様の味がある。最近、昭和の町並みを再現したり、レトロなデザインを再現する試みが多く見られるが、新築の建物に古びた塗装をするよりも、古い建物をそのまま生かした方が合理的であり、本物の味が生かせるだろう。
 産業が転換し、産地が転換する場合でも、その古い産業の基盤の上に新しい産業が生まれる。豊田織機から豊田自動車が生まれたように、技術もまたリノベーションし、コンバージョンされていくのだ。その新しい産業の芽を残すためにも、その産業の記憶は継続させなければならない。
 東京・堀留の繊維問屋街もマンション街に生まれ変わろうとしている。あと数年で、ここが江戸時代から続いた繊維の集散地問屋街であったという記憶は失われてしまうだろう。一部でも、繊維の町であった記憶を継続することで、きものや繊維に興味を持つ住民が集めることができる。また、産業史を学べる施設を残すことで、繊維を学ぶ人も集まってくる。現在の企業の利益にはならないかもしれないが、産業のDNAを残すことの意義は決して小さくないはずである。
 新築のワンルームマンションの住民は、地域との関わりが薄い。愛着もなければ、地域の歴史を学ぼうとする意欲もない。それは、建物自身にもその責任がある。地域の歴史を継続する建物の住民は、自然と地域に対する愛着も生まれるだろう。
 地域コミュニケーションの崩壊は、地域の建築物が常にスクラップ&ビルドされる環境にも一因がある。家庭の崩壊には、家族のコミニュケーション空間を排除し、個人の部屋に分割してしまった家の構造にも一因するだろう。
 産地活性化は、これまで産業活性化に偏重していた。今後は、地域活性化にも注目し、地域コミュニケーション、地域文化の継承という視点も必要になるはずだ。◆

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