システムでビジネスが変わる
ITの進化により、我々のビジネスは変化していく。しかし、テクノロジーの進化に比べて、ビジネスの進化の速度は極めて遅い。我々は経験を元に仕事をすることが多く、実務を合理化するためにテクノロジーを使う。その段階の実務とは、テクノロジー以前のプロセスで行われているのであり、新しいテクノロジーを使った理想的な業務プロセスではないからだ。
たとえば、電話やFAXというありふれたテクノロジーでも我々は十分に使いこなしていない。
転送電話のシステムを使って、転送秘書サービスという業種が生まれた。オペレーターをグループ化し、複数企業の電話に対応することが可能である。「事務所を開いたら電話番が必要」という常識も過去のものになっている。転送秘書サービスを活用した注文の受付業務やヘルプデスク、コールセンターも可能である。更に、インターネット回線を使ったIP電話を活用すれば、電話料金も低く押さえることができる。遠隔地でも電話が取れるようになり、時差を活用した24時間オペレーションも可能である。
同報FAXにより、データベース上の顧客にダイレクトメールならぬダイレクトFAXが普及したのも最近の話である。しかも、FAX回線を長時間ふさぐことなく、インターネット経由で同報FAX送信するサービスも生まれている。
最近になって、携帯電話による通信販売が普及してきたが、多くのアパレル企業や小売店では現在でも携帯による通販など考えもしないだろう。携帯の機能を使いこなせない個人も多いのだから、当然かもしれないが。
そう考えていくと、我々の周囲には様々な新しいメディアやテクノロジーが登場し、それに関連した数多くのサービスも存在するのだが、実際のビジネスに活用している例は極めて少ないのである。
ITバブル崩壊と言われるが、それはあくまでIT業界の話であり、我々のようなオフラインの業界ではようやくIT活用が始まったばかりと言っても過言ではない。
たとえば、最近のラーメン屋さんは食券システムを使っていることが多い。これを単に、食い逃げ防止や従業員の不正防止、衛生上の配慮と考えていたら大間違いだ。
複数のチェーン店の券売機がインターネット連携すれば、全国のラーメン店の売上がリアルタイムで把握できる。時間別、店舗別、メニュー別の売上分析が可能になるのだ。FC展開であれば、売上歩合の手数料等を徴収することも可能だ。また、メニュー別の売上が正確に把握すれば、食材の自動補充もできる。いちいち、各店から肉屋や八百屋に電話で発注する必要はなくなるのだ。
また、時間別の混雑具合が本部で把握できるために、正社員とアルバイトの比率、パートタイマーのスケジュール管理もコンピュータが割り出してくれるだろう。
このようにインターネット連携の食券システムを導入しただけで、どんぶり勘定だったラーメン店経営が科学的な経営になる。
食券の券売機が単独で存在しても何も起きない。しかし、それがインターネット連携することで、全く新しいビジネスモデルが生まれるのである。同様のことは、あらゆる業種業態で起こりうる。テキスタイルメーカーが、縫製業者が、アパレル企業が、産地がインターネット連携することで何が生まれるのか。これを考えるのは、IT業界の人間ではないし、システムエンジニアでもない。現場で仕事をしている我々が考えなければならないのである。◆
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