良い人だから、お礼は言わない
日本人は均一に出来ている。すごく悪い人もすごく良い人も少ない。中国人は幅が広い。すごく悪い人からすごく良い人まで揃っている。ビジネス上で出会う中国人の多くは、少し悪い人と少し良い人だ。すごく良い人もいるのだが、なかなか出会えない。
私の知人、Yさんのお父さんはその昔、中国で生活していた。Yさんが大人になって中国に旅行に行く時に、お父さんがこう言った。「あの近くに友人がいるから、訪ねてごらん」
Yさんのお父さんが最後にその友人と会ったのは30年前。30年経って、昔々の友人の娘が訪ねて来たのである。勿論、事前に手紙で連絡はしてあったが、まるで自分の娘のように手厚く歓迎してくれたそうだ。彼女はお礼を述べてから「こんなに良くしてもらっても、私はまだ若いので何もお返しができません」と言うと、そのお父さんの友人はこう応えたそうだ。
「私はあなたのお礼を期待しているわけではないし、あなたが何もできなくてもいい。でも、私の子供があなたの世話になるかもしれない。私の子供でなくても、他の中国人があなたの世話になるかもしれない。あなたが親切にされたことを覚えてくれて、あなたが誰かにそれを返してくれればそれでいいんです」
中国人は何かをもらっても、簡単にお礼を言わない。涼しい顔をしているだけ。何かをもらって、あまりお礼を言うと、「また、下さい」とねだっているように感じるらしいのだ。だから、黙っている。でも、恩は忘れない。何かあったら返そうと思っている。
それを誤解する日本人も多い。「中国人は何かしてもらってもお礼も言わない」という評価を下してしまうのである。どうも、日本人と中国人の人間関係はスケールが異なるようだ。
中国の歴史は、常に外部から侵略された歴史である。だから、身内しか信じない。でも、身内だけでは商売もできていし、生きていけない。だから、人のつながり、人の紹介を大切にする。良い人に紹介してもらうと、10年来の知己のように迎えてくれる。私も中国で大勢の良い人に出会った。
商売抜きで中国人と付き合うと、良い人に巡り合う確率は高くなる。良い人との関係を築き、それから商売を考えることが、中国の常識だ。
日本人だって、「これ買って、これ買って」と見知らぬ外国人に迫られたら、良い気持ちはしないだろう。個人では当たり前のことでも、なぜか会社単位になるとやってしまうんですね。◆
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