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April 17, 2005

4月16日上海反日デモ見聞記

 4月16日、偶然、上海出張。しかも一日予定が空いていたので、反日デモを見物に出かけた。「何かあったら危ないからやめた方がいい」と言われたが、日本人襲撃の指令がた出ているわけではない。現地人に間違えられることも多いし、日本語を話さなければ大丈夫だろうという自己判断。危ない様子ならそこから引き返せばいい。
 人民広場に向かう途中、次第に警官の姿が多くなる。一部には武装警察の姿も見えるが、それほどの緊張感はない。途中、デモ隊の尻尾をつかまえ、追いかけていく。デモ隊のスピートは意外と速く、追いつくのが大変なくらいだ。周囲の人は冷静に見物している感じ。道路を一つ隔てれば、全くいつも通りの風景が広がっている。欧米人観光客、ローカルの観光客も多い。違うのは、街中で全く日本語が聞こえてこないこと。各企業からも、レストランなどで大声で日本語を話さないようにとの警告が出されている。
 人民広場の近くの歩道橋でデモ隊を撮影。皆、とても楽しそうだ。天気も良いのでピクニック気分。声を合わせて大声で歌っている。歩道橋の見物人に向かって「皆さんも参加してください」と呼びかけている。大勢の人たちが声を合わせて歌うと腹に響く。今は冷静だが、反日という明確な主張を掲げている以上、このまま流れ解散というのでは納得できないのではないか。「石の一つも投げたいだろうな」と思う。

 今回のデモは、インターネット、携帯メールで呼びかけられている。北京でデモがあった9日からメールが入るようになったと言う。中国人の知人は携帯メールで5通、インターネットメールで5通、計10通のメールを受け取っていた。
 メールの内容は、デモの集合日時と場所、コースの概略。加えて、「5月1日から一カ月間日本製品の不買運動をしましょう」という呼びかけだ。これはマスコミもほとんど報道していないようだ。
 デモ以前から、上海市内の日本アパレルのショップでも、日本製品であることを確認してから買い控える人が出てきている。しかも、ごく普通の女性の反応である。また、タクシーの乗車拒否など少しずつムードが悪化している。
 当日、街頭では日本製品不買運動のビラも配られていた。ご丁寧に日本製品のブランドと会社名のリストが紹介されている。ほとんどが電気製品や自動車。日本料理の好きな中国人も多いが、「日本食を控えましょう」という呼びかけはない。私も昼食に「味千ラーメン」を食べたが、店内もいつも通り賑わっていた。
 私は昼でデモ見物を終えたが、その後、デモ隊は日本企業の集中する虹橋に向かい、新聞の報道通りに日本料理店のガラスを割り、看板を外し、日本領事館に投石をした。夜になっても、上海の日本人社会は携帯で連絡を取り合い、情報収集に努めていた。「日本人住宅街の方に何人かが向かった」「市場で数人が暴れている」等々。
 ムラ社会のような環境で生活している日本人は、他人に嫌われていると思うだけで落ち着かない。漠然とした不安が広がっている。
 それと対照的なのが、中国人の態度だ。参加した人、見物した人は、本当に楽しそうだった。子供を抱いた女性もデモに加わっていた。考えてみれば、「反日」というテーマは中国人にとって何の不安も感じない。皆、無邪気に楽しめた感じである。
 暴徒化したのは一部であり、多くの人はその騒ぎさえ知らないのだ。上海市民にしてみれば、ほとんどの人が今回の騒ぎを知らないと思う。
 この日本人と中国人の印象の違いは大きい。中国では反日デモはほとんど報道されず、日本ではセンセーショナルに報道されている。おそらく、デモに参加した人もどんな理由でデモをしているのかは理解していないだろう。そんな疑問を挟まないでもいられるほどに、反日というテーマは一般的なのだ。これも、反日教育の成果か。
 今回のデモは、確実にコントロールされている。それでは、一体誰が何の目的でコントロールしたのか。今回のデモで得をするのは誰だろう。
 ここまで考えて愕然とした。日本及び日本ビジネスに関わっている人以外、「反日」というテーマはほとんど影響がないのだ。
 中国政府はガス抜きになる。中国の反体制勢力がいるとすれば、反日行動が反体制に発展する可能性もある。北朝鮮も中国が反日というのは歓迎だろう。韓国も反日というテーマでは共感するだろうし、韓国だけでやるよりは中国も行ってくれた方が角が立たない。アメリカも自分の影響力を駆使しやすくなる。親日的な台湾も日本が中国を嫌えば心強いだろう。タイやベトナム、アセアン諸国は、日本の中国一辺倒が改まれば、新たな資本投下も期待できる。日本政府でさえも、内政から目を逸らすことができるかもしれないと期待する向きもあるだろう。
 日本はアメリカばかりを向いている。「アジアの中の日本という考え方にならないとアジアの中で孤立するだろう」という警告は、もう何十年も前から言われてきたことだ。まさか、それが本当になるとは・・・。
 最悪のシナリオは、中国側と日本側が感情的な情報をまき散らし、憎悪の相乗効果を高めることだろう。イラク戦争やテロに対して、日本は「報復の鎖を断ち切らなければならない」と主張してきた。今度は、日本が中国との憎悪の鎖を断ち切ることを期待されるのだ。インターネットや携帯は情報を伝播する機能は高い。しかし、その影響力により起きた事件を収拾する機能は低いのである。
 今回の騒動が、誰かに利用されているとしたら、こんなに不気味なことはない。日本のマスコミも知らずにそれに協力しているかもしれない。我々の感情論も同様である。
 日本人は冷静に大人の対応をすることが求められている。間違っても報復を考えてはならない。しかし、一方で明確に正論を主張することも必要なのだ。(ちなみに次回は5月4日にデモするとの情報あり)◆

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