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October 09, 2004

最初に情熱ありき

 ビジネスに最も大切なのは、ビジネスにかける情熱であり熱狂である。そして、情熱や熱狂を生みだすのは、ある種のハングリー感ではないだろうか。満腹の時にあるのは弛緩である。人間だけでなく、動物が最も緊張するのは、空腹の時に獲物を狙う一瞬だろう。そして、獲物を手にした時に手とも言えない高揚感にとらわれるに違いない。
 ビジネスも同様であり、利益という獲物を狙う時に、最も緊張し、それを手にした時に高揚感を感じるはずである。常に満腹な動物、例えば家畜のように常に餌を与えられる生活を続けていたら、緊張も高揚もあり得ない。あるのは緩慢な幸福感とでも言えるものか。
 ハングリー感と言っても、食べ物に対する飢餓感だけを指すわけではない。精神的な飢餓もあるだろう。愛情に恵まれなかた人間は、強い愛情を追い求めるのではないだろうか。そして、それを得たときに高揚感を感じるのではないか。

 若者が定職につかず、いつまでも親に寄生しているのは、仕事に対する熱狂がないのだろう。というよりも、生きることに対する情熱もないのかもしれない。生きることへの飢餓感もないし、生活に困ることもないのだ。
 こうした若者を自在にコントロールして働かせることで高収益を上げているのが、一連のIT企業かもしれない。IT企業といっても、技術力のみならず強烈な営業活動に支えられていることは、携帯やブロードバンドの販売でも証明済みである。彼らの営業活動は、すべてマニュアル化され、目標設定され、恣意的に飢餓感を演出され、目標達成した時の高揚感のイメージを植えつけられて、実践されているのだ。ある意味では、新興宗教に似ている。「何をしていいのか」を考えられない人間は、それを与えてくれる存在を崇拝してしまう。そして、従属することに喜びを見出すのである。
 ビジネスとは「野生動物同士の殺し合い」。私は、そんなイメージを持っている。しかし、実際には一部の野生動物が家畜達を操り、家畜達の神となることなのかもしれない。
 我々の世代では、ビジネスには「人、モノ、金」が必要だと信じられている。しかし、現在のビジネスが、家畜の神となることだとしたら、最も大切なことはカリスマ性であり、次はマニュアル化された教義なのかもしれない。そして、布教するためのインターネットというメディア・・・。
 中国のビジネス状況を見ていると、正にビジネスの野生動物という感じだ。野生動物がウヨウヨしている状況では、強くなければ生きていけない。だから、中国に渡って一人で仕事をしている日本人は野生化してくる。しかし、弱みもある。野生動物は団体行動ができない。まとまることができないのだ。
 考えてみれば、日本の高度経済成長とは、野生動物のパワーではなく、飼い馴らされた動物の集団パワーを強みにしてきたのだろう。しかし、最近はその集団の母体そのものが弱体化しており、企業という受け皿では集団が結成できないのだ。集団を形成するには、精神的な求心力が必要になる。
 最近の若者と話していると「私はあまりお金に執着心がないんです」という人が多い。ここでは、ある意味で資本主義が崩壊している。こうした価値観が「ビジネスの野生動物」に太刀打ち出来るのか。私には分からない。しかし、この歪みの中に、冷たいが圧倒的なパワーがたわめられているのは事実だ。それを開放する鍵は何だろう。◆

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