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July 25, 2004

日本アパレルの中国市場参入に向けた可能性と課題(繊維トレンド7・8月号掲載)

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日本アパレルの中国市場参入に向けた可能性と課題
~中国の見本市出展の次に打つべき戦略とは~

要点
1.中国の百貨店に日本ブランドを集積するというニュースが数多く流れたが、未だに実現していない。その理由は、中国の百貨店の取引形態、日本企業の出店窓口のエージェントの問題、日本資本の企業が卸売、小売のライセンス取得の困難さ等があげられる。
2.中国の百貨店は日本ブランドを欲している。消費者は衛星テレビ、ケーブルテレビ、ファッション雑誌等により、日本のファッション情報に接しているが、商品には接していない。百貨店の多店舗化により、各店の差別化戦略が求められ、その目玉として日本ブランドが位置づけられている。
3.中国のWTO加盟により、外国資本にも流通開放がなされるが、そのハードルは高い。香港と中国との間で締結された経済貿易緊密化協定で定められた香港企業への優遇措置を超えることはないだろう。当面、完全な開放はないという前提で中国市場戦略を考えなければならない。
4.中国市場参入には、中国企業、中国人との連携が欠かせない。中国ビジネスの成功は、パートナーの選択が第一の条件になる。単なるライセンスの保有だけでなく、実際のビジネスに関するノウハウも重要なポイントだ。中国で上げた利益を日本に持ち帰ることは不可能ではないが、様々な条件を整備することが必要となる。利益を持ち帰るという発想よりも、アジアの中でどのようにキャッシュフローを作るか、という発想が重要になる。

1.日本ブランド集積フロアが実現しない理由
 2003年の春頃から、中国の百貨店に日本ブランドの集積フロアができるという記事が何度も業界紙を賑わせた。ところが、未だに日本ブランドフロアは出現していない。しかし現在でも、複数の案件で「日本ブランドの集積」というコンセプトは生き続けている。
 私自身も昨年からその種の仕事に関わってきた。その経験から、どうして日本ブランドフロアが実現しないのか。また、なぜ現在でも日本ブランドフロアというコンセプトが継続しているのかを説明したい。
 まず実現しない理由だが、第一に中国の百貨店の取引システムがあげられる。中国の百貨店は、完全に場所貸し業である。その意味では、駅ビル等への出店と考えたほうがいい。百貨店が商品を仕入れるのではなく、テナントに固定家賃か売上歩合で場所を貸すという形態であり、保証金も存在する。売上は百貨店のレジで行われるが、そこから家賃、売上歩合等の管理料を差し引いて出店者に売上が支払われる。基本的に商品を仕入れるという形態ではないため、店頭での商品管理、商品リスクは出店者が負担しなければならない。(一部の百貨店では、日本と同様に商品の仕入れ機能を持とうとする動きもあるようだが、まだ具体的な話は聞いていない)
 中国は不動産バブルの真っ只中であり、不動産業を営む財閥グループは百貨店を建設し、テナントさえ集まれば利益を確保できるという構図になっている。したがって、百貨店運営のノウハウをほとんど持たない企業も多いのである。
 第二には、日本企業の出店を担当するエージェントの問題である。中国百貨店が日本企業に対して直接出店依頼を行うケースは少ない。中国の百貨店は「日本企業に出店して欲しい」と考えているだけだ。そこに、「私は日本企業を集めましょう。その代わり、百貨店が手にする利益の一部を手数料として支払ってくれ」という人が出現する。しかし、この段階で正式契約を結ぶ事例は少ない。百貨店側は「出店が決まってから契約すればいい」という考えだし、エージェントも「リスクのない権利ビジネスであり、出店が決まってから報酬を受け取る」という認識を持っているからだ。
 ここに欠落しているのが、フロアコンセプトの立案やゾーニング計画というソフトに対する費用である。話だけで進行しているうちは良いが、具体的なプランを出す段階になると、ソフトに対する費用を負担する人間がいないことになる。エージェントに資本があれば良いが、ノーリスクの権利ビジネスと考えている人はお金を持っていない。この段階で計画がストップしてしまうのである。
 第三の理由は、日本企業に対する卸売権、小売権の許可が認められないことである。中国は2001年にWTOに加盟した。しかし、流通や小売に対して完全に門戸を開いたわけではない。徐々に規制は緩和されているが、現状では、卸売や小売を行うにはライセンスが必要であり、外国企業がこのライセンスを取得するのは困難である。
 つまり、中国百貨店で自社製品を販売するには、こうしたライセンスを取得している企業と連携し、そこの口座を貸りるような形を取らなければならない。この場合、その企業に対する信用が問題になる。信用できる相手であれば全く問題なく、中国市場に参入することができるだろうが、信用できない相手であればトラブルが起きる可能性は高い。
 こうした現状を十分に理解しないままに、中国百貨店、エージェント、日本の出店企業のそれぞれの思惑ばかりが先行すると、どこかの段階で計画は頓挫してしまうのである。
 勿論、現在存在する全ての案件に問題があるわけではない。実際、日本のコンサルティング企業が中国の国営百貨店とテナント誘致等の長期契約を交わしたという情報も確認している。また、日本企業が中国百貨店に出店し、実績を上げている事例も存在する、ことを申し添えておきたい。

2.中国の百貨店が日本ブランドを欲しがる理由
 中国のファッション市場は三つに分かれている。トップが欧米の一流ブランドであり、専門の高級ショッピングモールを形成している。第二が百貨店であり、中国のアパレルの他、台湾、香港、韓国等のブランドで構成されている。百貨店で展開されているブランド群は、地方都市ではフランチャイズ店として路面店で展開される例も多い。第三は、市場を含む一般の小売店であり、非常に安価な商品が展開されている。
 ほとんどの百貨店は同じようなブランド構成であり、日本のナショナルブランド全盛期を思わせる状況である。現在、ほとんどの百貨店は新規出店計画を持っている。数年のうちに現在の2~3倍の店舗数に成長するのは確実である。そうした多店舗化に伴い、各百貨店では差別化戦略が課題になっている。その差別化戦略の目玉として「日本ブランド」が捉えられているのである。
 中国の消費者にとって、日本ブランドの注目度は高い。情報源の第一はテレビドラマである。衛星放送、ケーブルテレビにより、日本のドラマが放映されており、その中に出てくる日本ファッションが注目されている。また、中国語訳されている日本のファッション雑誌は7割の記事が日本語版の直訳であり、小売店では目にしないが、日本で販売されているブランドについては熟知しているのである。日本ブランドは、実際に店頭で購入することはできないが、情報だけで憧れを増幅しているのである。
 こうした日本ブランド人気に目を付けて、中国企業が日本語のブランドを展開している例も目につく。JAPANファッション、原宿ファッション等と表示したいくつかの日本語のブランドは、日本では全く目にしたことがないものである。
 偽物でも人気を集めるのだから、本物の日本ブランドが集積されれば、注目を集めることは必至であると考えるのは自然だろう。しかも、百貨店の人も外国企業に対する法律を熟知しているわけではないのである。
 今後の中国ファッション市場は、欧米の一流ブランドと百貨店ブランドの中間にあたるベターゾーンが隙間市場として注目されるだろう。台湾、香港アパレルもそのゾーンを狙ってくるはずである。勿論、中国のアパレル企業も多ブランド化を進めてくる。日本ブランドは期せずして最も期待されるゾーンの中核に位置しているのである。

3.中国の流通自由化の中身とは?
 多くの日本企業は、中国市場に魅力を感じている。今年から、積極的に上海や北京のアパレル見本市に出展するだろう。そして、日本企業への流通開放を待っているのである。
 しかし、日本企業が考えるような全面的な流通開放は行われるのだろうか。率直に言って、私は全面的な開放は当面ないと考えている。
 その根拠は、香港に対する中国政府の流通開放政策にある。中国と香港は今年の1月1日より実質的な二国間自由貿易協定である経済貿易緊密化協定を締結した。香港から中国への輸出が無関税となり、香港企業が中国国内に流通小売等の法人を設立することができるようになったのである。ここで設定された条件こそ、香港の次の段階に外国企業に適用される基準であると考えられるだろう。残念ながら、香港企業に与えられた基準は日本企業が期待するものとはかなり格差がある。
 例えば、香港企業が中国で委託販売、卸売会社を中国に設立する条件は、申請前3年間の平均売上高が3000万米ドル(中西部に設立の場合は2000万米ドル)以上、申請前年の資産が1000万米ドル以上、最低資本金は5000万人民元(中西部では3000万人民元)以上である。
貿易会社の場合は、申請前3年間の対中国貿易の平均金額が1000万米ドル(中西部に設立の場合は500万米ドル)以上、最低資本金は2000万人民元(中西部では1000万人民元)以上。
小売サービスでは、申請前3年間の年平均売上高が1億米ドル以上、申請前の資産が1000万米ドル以上、最低資本金が1000万人民元(中西武では600万人民元)以上である。[香港貿易発展局資料より引用]
日本のアパレル企業で、この条件をクリアできるところは皆無と言っていいのではないだろうか。逆の言い方をすれば、開放と言ってもこの程度であると認識する必要があるということだ。
結論から言うと、中国市場攻略は本格的な流通開放を待っていたのでは遅い。許認可の対象は実績のある企業であり、実績を作るには開放前に中国との取組を始めるしかないのである。

4.中国企業、中国人との連携が不可欠
 中国市場への参入を、「中国の見本市出展から始める」のは間違いではない。しかし、見本市以降のビジネスの取り組み方を考えておかなければ、最終的にコピー生産するための見本を提供するだけの結果に終わるだろう。
 ここまで述べてきたように日本ブランドに対する市場ニーズは高い。ショップの運営も人件費が安い分だけ日本よりも有利である。日本での投資金額と比較すれば、かなり低コストで市場参入のチャレンジを実践することが可能なのだ。問題は参入の方法である。
 中国市場の法的な壁をクリアするには、既にライセンスを持った企業と連携するか、中国企業として中国人を社長にした法人を設立することが必要である。
 既にライセンスを持った企業には、日本企業、台湾企業、香港企業、中国企業がある。どの国が良いと言うよりも、信頼できる相手と組むことが成功の第一歩である。また、ライセンスを持っていても、日本からの輸出、あるいは中国国内の縫製工場からの商品調達、香港からの輸出等のノウハウ、あるいは、百貨店へのデリバリーのノウハウ、ショップ運営のノウハウ、販売員の管理ノウハウ等がなければ事業に成功することは困難である。
 パートナーの選択を誤れば、代金の回収不能、様々な法的なトラブルに見舞われ、中国市場でのビジネスの将来も絶たれてしまうだろう。あらゆる人的ネットワークを駆使して、信頼できるパートナーを選ぶことが求められる。あるいは、中国市場でのビジネスを軌道に乗せている企業と取り組むことである。最初は利益率の追求よりも安全第一で取組み、ビジネスに慣れた段階でより利益率の高い取組みに移行するという段階的な考え方が必要だろう。
 中国国内の小売りビジネスであげた利益を日本に持ち帰ることも難しい。中国企業と日本企業で合弁企業を設立し、その企業の利益から内部留保分を差し引き、出資比率で配当として受け取るという方法が最も一般的だろう。その他にも、中国国内の資本の移動は比較的容易なので、縫製工賃等との相殺も考えられる。いずれの場合も、直接的な海外送金は難しいという認識を持つべきである。アジアビジネスに本格的に取り組むのであれば、利益を持ち帰るという発想ではなく、本社を香港や中国に移転し、アジアネットワークでのキャッシュフローを考えることも有効だろう。このあたりのノウハウは、完全に違法ではないが完全に合法とも言えない「グレーゾーン」の話になることが多い。海外送金に必要な手続きやそれを可能にするライセンスも存在するが、かなりハードルは高い。
 仮に、多額の資本を投入し、独資で法人を設立したとしても、中国人社員の雇用、行政との折衝、中国の商慣習の理解、消費者特性など、日本人だけで運営することは困難である。中国市場参入とは中国人相手のビジネスであり、中国に工場を設立するのとは意味が違う。中国での利益を日本企業が独占するという発想を持たずに、中国企業、中国人とビジネスと利益をわけ合うという発想が必要である。◆

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