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July 25, 2004

見本市( 繊維トレンド7・8月号掲載)

◆見本市とビジネスサイクル
 世界のファッションビジネスは年2回の見本市、コレクションを軸に回っている。
 日本でも有名なパリコレクション、ミラノコレクション、ニューヨークコレクション等はオートクチュール、プレタポルテの作品を発表するファッションショーだが、一般的なアパレル製品の見本市もまた同時期に開催されている。アパレル製品の見本市は基本的に店頭展開の半年程度前に行われる。春にその年の秋冬コレクション、秋に翌年の春夏コレクションが開催される。
 その半年前、つまり店頭の一年前にテキスタイルの見本市が開催される。春に翌年の春夏のテキスタイル商談を行い、秋に翌年の秋冬のテキスタイル商談を行う。その更に半年前に、つまり店頭から一年半前に糸の展示会が開催される。
 つまり、各段階で半年ずつのリードタイムを設定しており、そのスケジュールを基本に企画、生産、販売が回っているのである。

 日本においては小売り段階でシーズンが細分化されている。一般的に年間6~8回のシーズンに分かれ、シーズン毎に展示会を行っている。海外のように見本市で集中してビジネスをするのではなく、日常的に会社を訪問し、セールス活動をしているのである。

◆年間2シーズン性のメリットとデメリット
 海外が年間2シーズン制でビジネスを回しているのに対し、日本では年間6~8回に細分化したシーズンでビジネスが回っていることになる。両者にはそれぞれのメリットとデメリットがある。
 年間2シーズン制のコレクションや見本市を軸にしたビジネスでは「集中」が求められる。一回のコレクションで半年のビジネスが決まってしまうのだから、デザイナーには大きなプレッシャーがかかる。その分、緊張と集中が発揮され、クリエイティブな商品が生み出されるのである。
 一方の年間6~8シーズン制では、一回のコレクションでビジネスが決定されるわけではない。シーズン途中で修正を繰り返し、次第に企画的中率を上げ、実需期に奥行きのある商品供給が可能になるのである。
 一般的に考えれば、リードタイムを圧縮し、短サイクルで企画、生産、販売を行うシステムの方が優れていると言える。コンピュータの進化により、店頭の情報が一瞬で生産段階に伝達される昨今においては尚更だろう。
 しかし、企画の内容や質で考えると、緊張と集中、そして売れなければデザイナーは契約解消になるという厳しい環境の中から優れた商品が生まれるのも事実である。効率を追求するのか、クリエーションやクオリティを追求するのかによって、ビジネスのサイクルは変わってくるのだ。
 ファッション業界には欧米崇拝主義者が多い。日本の独自性と欧米を公平に見るのではなく、最初から欧米はファッションの先進国であり、日本は遅れているという考え方である。この人たちにとっては、展示会を6回も8回も行うことは後進性の現れであり、年間2回のコレクション、見本市こそグローバルスタンダードで優れた制度だということになる。
 こうした考え方は行政や業界団体にも根強く、過去に何度も年2回の展示会にトライしているのだが、結果的に実際の商売と乖離しているために、実質的な商談には結びついていない。展示会や見本市はビジネスサイクルに組み込まれなければ意味がないのだが、リアルなビジネスサイクルを見直すことがないために、こうした矛盾が起きているのである。

◆製造小売業の台頭と脱見本市の流れ
 アパレル企業が卸売主体からSPA業態のように自ら小売店まで運営するようになるにつれ、ビジネスのサイクルはますます細分化されるようになっている。最早、展示会を開催するのではなく、店頭の数カ月前に月々の店頭を構成していくのである。これは年間12回のシーズンで商品MDを組み立てることに等しいだろう。
 海外のアパレルの経営者が最も嫌がっているのは、日本の市場が細分化されたシーズンで動くことである。これをされると、日本だけのために商品企画を組み立てなければならない。見本市というシステムが崩壊し、それぞれの企業の企画生産サイクルも変えざるを得ないのである。逆に言うと、戦略的に季節を細分化することが日本国内のアパレル企業を保護することにもつながるのだが、欧米崇拝主義者達にはそういう発想はないらしい。
 実は、見本市システムを崩壊させるような動きは海外にも出てきている。展示会で受注し、受注した分だけ生産し、卸売を行うという業態から、自社でショップを運営するモデルに変わりつつえるためである。
 自社でショップを運営するのであれば、自社の企画を見本市で公開することの意味がなくなる。むしろ、商品企画の漏洩を防ぐためにも公開しない方が良い。また、世界的な店舗展開により、中小企業が中心だったヨーロッパのアパレル企業も大企業へと変貌している。企業規模が大きくなることにより、見本市でテキスタイルを調達しなくても、独自にメーカーとパイプを築くことが可能になったのである。こうなると、テキスタイルメーカーも大手アパレル企業とは見本市ではなく、2社間の取引に移行していく。見本市で受発注するのは、中小企業のみであり、大手企業、あるいは大手企業と取引のある企業は見本市に背を向け始めているのである。

◆ブランドイメージ訴求のための見本市
 その反対に、発展途上国は見本市を重視している。一つには、見本市から発信される情報を元により低価格の商品を開発し、販売することができるようになる。二つ目には、自社の製品を世界市場にアピールする好機と捉えているのである。
 勿論、先進国の一流ブランドが、全くコレクションや見本市に背を向けているわけではない。直接的な商談ではなく、ブランドイメージのアピールのためにイベントの場を利用するようになっているのである。実質的な商品をプレゼンテーションするとコピーされる恐れがあるが、実際には市場で売れないがブランドイメージをあげるための商品を出しておけば、その心配はなくなる。
 日本においては、商談につながらないイメージ訴求だけの展示会を後進性としているが、欧米の展示会や見本市はむしろ「日本化」しているのである。
 また、ショップ運営が主体になった欧米のアパレル企業は、日本のように店頭を中心にした細分化した企画、生産システムに移行しようとしている。企画の面でも「日本化」が始まっているのだ。

◆日本の問屋業態上陸を恐れるヨーロッパ企業
 ヨーロッパのテキスタイルメーカーは、今、日本の大手生地問屋「T社」のような業態が上陸することに恐れを抱いている。見本市のサイクルにとらわれず、きめ細かい営業を行い、受注生産だけでなく自社リスクの生地を積み込むようになると、テキスタイルビジネスをそっくり持っていかれると恐れているのだ。しかも、日本の生地問屋やテキスタイルメーカーが当たり前のように行っている品質管理、納期管理は欧米でも評判が高い。最高級のイタリア製品のデザインや品質に対する高い評価とは裏腹に、品質のバラツキ、納期の不安定さは日本の業者ならば知らない人はいないだろう。まして、中級品からベター商品については日本製品は圧倒的に優れている。こうした商品が日本型の流通システム、ビジネスシステムと共にヨーロッパ市場で参入すれば必ず一定以上のシェアを獲得するに違いない。
 「日本の見本市は商談が行われない」という指摘があるが、多くの場合、開催サイクルに問題がある。年1回の開催では商談が行われないほうが自然であり、新規顧客獲得の場、出会いの場として機能すればいいということになる。民間が主催しているアパレル展示会「フロンティア」は年間6回開催される。会場では活発な商談が行われ、展示会がビジネスのサイクルに組み込まれている様子がうかがえる。

◆コンベンションビジネスとしての見本市
 見本市をコンベンションビジネスという視点で捉えると、別の課題が見えてくる。大規模な見本市は、それ自身が巨大なビジネスチャンスである。世界各国が「いかに優秀な出展者を集めるか」を競い合っている。優秀な出展者とは欧米、日本の付加価値の高い商品を生産している企業であり、付加価値の高い商品が出展されれば、質の高いバイヤーを集めることができる。それにより、国際見本市としての一定のポジションが得られるのである。
 残念ながら、日本の展示会には展示会間の国際競争という視点が欠如している。製造メーカー自身が運営主体であり、海外の競合企業の出展を望まないのだ。
 現在の状況を見ると、アジアの繊維ファッション産業の中心は「上海」になりそうな勢いである。日本企業も巨大な中国市場を見据え、上海の見本市への出展を積極的に進めている。そこには、日本のコンベンションビジネス戦略という視点は見られない。◆

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