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May 16, 2004

スロービジネスのすすめ

 最近流行っているもの。スローフードにスローライフ。その延長でスロービジネスはどうだろうか。
 いわゆる小商いで生活する。国際都市で最先端のビジネスにチャレンジするのではなく、地方都市や東南アジアでゆるいビジネスをする。ゆるいビジネスと言っても馬鹿にしたものではない。言い方を換えれば、ニッチ市場戦略ということにもなる。
 そもそも競争の激しいビジネスは、競合相手が多いから競争が厳しいのである。皆が目をつけるビジネスだからギラギラしている。いかにも儲かりそうであり、参入したくなるのだ。しかし、あまり儲かりそうもないゆるいビジネスには誰も参入する気にならないだろう。しかし、競争の少ないオンリーワンのビジネスならば利益も期待できる。

 様々な産地の人と関わってきたが、彼らに東京の厳しいビジネスを持ち込むことが本当に良いことなのだろうか、という疑問を感じている。産地の人の多くはビシネスマンではない。地道に一つの仕事をやり続けてきた人たちなのだ。彼らの仕事を東京のサラリーマンに要求してもできないように、東京のサラリーマンがやるような仕事を彼らに要求してもできないのではないだろうか。
 ビジネスをゲームと考えること。アメリカでは当たり前だ。ゲームだから参加するのも自由だし、脱退するのも自由。アメリカ人の中には、数年間ファイナンスの仕事に専念し、大金を手にした後にあっさりと職を捨てる人がいる。ボランティアの仕事や大学に戻るのだ。ファイナンスの仕事はハイリスク・ハイリターンだがやはりストレスも半端じゃない。一生続けるような仕事ではないと思うのだろう。若い時に集中し、ヒジネスというゲームを楽しみ、その後は人間らしい生活を送るという考え方だ。
 日本人は仕事を生きがいと考える人が多い。だから、儲からなくなっても簡単には辞めないし、辞めることは自分の存在意義を否定することにつながってしまう。リストラされた人が自殺してしまうのは、こうした仕事観があるからだろう。
 一生続けるという前提で仕事を選ぶのであれば、あまり厳しい仕事は無理だ。飽きずに、コツコツと続けられる仕事が良いの。しかし、国際競争、市場原理の導入により、仕事はビジネスになり、競争の社会になってしまった。専門知識や専門のノウハウがなければ生き残れない世界である。「コツコツと続たい」という意見は、「甘い」の一言で否定されてしまうだろう。
 そこで、「スロービジネス」という発想が生まれてくる。多くの利益を望まない、生活をベースにした継続できる仕事。株式会社の思想ではなく、家業の思想。利益のためではなく、生活を維持するための仕事。毎日、なんとか暮らせればいいじゃない。競争に打ち勝つのではなく、競争からは早めに降りましょうよ、という精神である。
 正直言って、日本、特に東京でファッションビジネスを展開するのは厳しい。高い専門性、国際競争力が必要とされる。しかし、日本の地方や海外に行けば、もっとゆるい仕事が存在する。生活費が低いからそんなに高い利益率を追求しなくてもいい。厳しい仕事をすれば幸せになれるという保証もないし、その確率が高いわけでもない。むしろ、消耗する人が多いのではないか。もっと豊かな人生の設計があるのではないか。横並びではなく、オンリーワンの人生には競争では得られない喜びがあるような気がするのだが。◆

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