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May 24, 2004

繊維トレンド5.6月号「グローバル産業への脱皮が求められるアパレル産業」

 みなさん、こんにちは。坂口昌章です。
 東レ経営研究所発行の「繊維トレンド」5.6月号に寄稿しました。
 内容は、日本のアパレル業界への提言という大上段に振りかぶったものです。特に、生産を商社に丸投げしている現状への危惧と今後のビジョンについて書いたつもりです。

グローバル産業への脱皮が求められるアパレル産業
~商社への生産丸投げの次に来る問題点と展望~

1.百貨店の「派遣+委託」、アパレルの「商社丸投げ」
 百貨店の構造的な問題は以前から指摘されている通り、派遣販売員と委託仕入れである。
 百貨店側は不良在庫を抱えるリスクを回避し、同時に販売員の人件費を削減できる。アパレルは、百貨店の売場を自分の店のように自由にコントロールすることが可能になる。完全買い取りの場合、店頭の不良在庫が増えれば新しい商品を入れられないが、委託仕入れであれば、商品を交換することができる。基本的に買い取り条件のアメリカの百貨店では売れ筋商品ばかりに偏り、アパレル側が実験的な商品を展開できないという欠点もある。その点では、「委託+派遣」のメリットは存在する。

 一方で、百貨店は価格決定権をアパレルに握られ、また、自社で売り切る販売機能や商品の選択眼を次第に失っていった。効率を追求し、業務をアウトソーシングしたことで、その業務を遂行する能力を失ったのだ。リスク回避という行為には、必ずこうした危険性が潜んでいる。
 同様のことがアパレル企業で起きている。かつて、アパレル企業は生地を仕入れ、縫製工場に発送し、生産管理、品質管理を行い、工場をコントロールしてきた。現在では多くのアパレル企業がその機能を商社に依存している。また、商品のデザインやパターンメーキングについても、商社傘下の企画会社にアウトソーシンクする例も増えてい
る。アパレル企業は縫製工場の生産スペースを埋めなければならないという呪縛から解き放たれ、また、デザイナー、パターンメーカー、生産管理者を雇用するコストを軽減することができた。
 それらのメリットと引き換えに、アパレル企業内にモノ作りの知識やノウハウが失われつつある。産地、テキスタイルメーカー、縫製メーカーとの関係も希薄になり、完成した製品をセレクトしているに過ぎないブランドも多数存在しているのである。

2.大手小売業の国際競争力とは何か?
 百貨店が場所貸し業になり、アパレルが小売業になる。それでもいいではないか、という意見もあるだろう。顧客からすれば何も困らない。互いに利潤をあげているのだから企業としても問題はない。しかし、ここで考えなければならないのは、そうした業態が国際競争力を持ちえるか、ということである。
 小売店の国際競争力とは何だろう。
 第一は「店舗展開のスケール」である。展開店舗が多いことは、市場シェアが高いことであり、商品調達でも優位に立てる。しかし、日本という限定した市場においては、店舗展開にも限界がある。
 第二に「商品調達力」である。最適の仕入れ先から必要十分の商品をいかに低コストで調達するか。世界中のメーカーを常にリサーチし、常に鮮度の高い商品を揃える能力が求められる。
 商品調達力を高めるには、特定の仕入れ先に依存することなく、自社で仕入れ先を開発し、魅力的な商品を選択するバイイング能力が求められる。
 第三に「物流機能の整備」である。今後は店頭販売だけでなくインターネットを活用した小売りも増える。また、将来的に中国等で店舗展開する可能性もある。それらの場合を考えても、物流機能が整備されていなければ、事業を展開することは難しい。
 現在の大型小売店は納品代行業者や仕入れ先の物流センターにその機能を依存している。
 第四に「接客及びサービス展開の人材育成」である。最終的に顧客満足を獲得するのは接客する販売スタッフである。人材は最大の小売業の資産であり、優秀な販売スタッフを確保し、教育することが販売のサービス向上につながる。
 派遣販売員制度は、リスク回避にはなっているが、販売員教育や人材育成という意味では十分に機能していない。
 第五に「店舗環境、演出力」である。小売店のブランド価値を高め、優秀なテナントを集め、買物という行為に価値を持たせるには、店舗環境の整備が大きなポイントになる。
 ブランドショップの店舗環境と演出力に依存しているだけでは、小売業としてのステイタスは保てないだろう。
 第六に「顧客管理能力」である。上質の顧客に支持されていることが一流小売店の条件であり、そのためには顧客をきちんと管理し、顧客一人一人の満足を高めていく必要がある。
 顧客カード等を発行して顧客管理を行う例も増えているが、デジタルな管理だけではなく、販売員と顧客というアナログな管理がより重要であることを考えると、できれば、自前の販売員が望ましいことは言うまでもない。
 以上のことを総合的に考えると、日本国内市場で最も適したシステムだったかもしれないが、国際競争力という視点では構造的な問題が内在しているといえるだろう。

3.アパレル企業の国際競争力とは?
 同様に、アパレル企業の国際競争力について考えてみたい。
 第一に「ブランド力」である。日本の大手アパレルの特徴の一つとして、ライセンスブランド比率の高さがあげられる。元々、日本のアパレル産業はアメリカのアパレル企業のライセンスから始まったと言ってもいい。国内のオリジナルブランドという意識が明確に出てきたのは、70年代半ばから始まったDCブランド以降である。
 ライセンスブランドはライセンサー企業との契約であり、永遠に続くとは限らない。ライセンサー企業の戦略転換やM&Aによる経営者の交代などにより、ライセンス契約を打ち切られる事例も数多いのである。多くのアパレル企業は、既存のライセンスブランドの既得権を守りながら、新ブランド開発を目指しているが、その成功率は高いとは言えない。
 第二に「商品開発力、商品生産力」である。異業種にも工場を持たないファブレスという業態は存在する。縫製工場を持たない日本のアパレル企業もある種のファブレスである。しかし、元々ファブレスであったアパレル企業が、更に生産管理や商品企画をアウトソーシングしているという事実が問題なのである。
 ショップ運営まで行うSPA型アパレル企業は、ブランド・プロデュースこそコアコンピタンスと位置づけ、工程別コスト分析を行った結果、生産管理をアウトソーシングするに至った。服の仕立てや素材よりも、ショップデザイン、接客サービス、広告宣伝、マーケティング戦略等を重視してのことだが、これはヤング向けカジュアルに限定した戦略だった。
 しかし、服の仕立てや素材の差別化が重要な要素となるミセス向け商品についても、消費者への生産丸投げが増えている。仕立ての良い服は欧米の一流ブランドに任せて、自分たちはその下のランクを狙うという戦略だろうか。
 価格訴求の商品、ヤングカジュアルのボリュームゾーンは、将来的に中国、台湾、香港、韓国等のアパレル企業との競争が待っている。日本国内だけを見れば、商社に生産管理を振ることで海外生産が可能になり、価格競争力を獲得することができたアパレル企業も多い。しかし、日本の商社と中国のアパレル企業のどちらに価格競争力があるのかを冷静に考えるべきだろう。
 第三には世界市場を対象にした「マーケティング力」である。最早、アパレルビジネスはグローバル化している。日本のアパレル企業の顧客は同時に欧米のアパレル企業の顧客でもある。世界の生産基地で商品調達を行い、世界規模で店舗展開を行っている企業と国内限定の企業が競争する場合、どんな要素で優位に立つのか、という戦略を明確にしておかなければならないだろう。
 日本市場は日本語という非関税障壁が存在する。同時に、日本の顧客はファッション雑誌等の情報媒体の影響を強く受けるという特性を持っている。日本語の雑誌への影響力は日本企業の方が優位に立てるはずなのだが、ファッション雑誌に欧米の一流ブランドがあふれているのが事実である。

4.商社への丸投げを新たなコラボレーションに高める
 本来、衣服とはそれぞれの国や民族が固有の文化として維持してきたものである。それがグローバル経済の中で文化の一元化も進んでいると見るべきだろう。
 日本の繊維産業も世界市場を対象にした輸出で成長した。しかし、日米繊維交渉決裂、円高、低コストの新興工業国の台頭という状況の中で輸出産業としての繊維産業は低迷し、高度経済成長をなし遂げた日本市場を対象にしてきた内需型のアパレル業界や流通業界がリーダーシップを取るに至った。そして更に、欧米の一流ブランドの日本市場への本格参入、中国製品の輸入増加という新たな状況を迎えているのである。
 同時に、中国を中心にアジア市場が成長を遂げ、高額品、ブランド商品の需要が増えてきている。中国は生産基地としてだけでなく、新たな市場として注目されている。
 日本への評価を変化を遂げている。物真似ばかりをしていると欧米に言われ続けてきた日本ではあるが、品質の高さ、デザインの良さ、独特のカワイイ文化等が日本の独自性として次第に評価されるようになっている。
 こうした状況は、国内市場だけを対象にしてきたアパレル産業や流通産業に対し、グローバル市場、特にアジア市場に対応する新たな産業としての脱皮を促しているとは言えないだろうか。
 生産管理業務を商社に丸投げすることをマイナスに捉えれば、日本のアパレル企業は国際競争力を失っていると判断せざるを得ない。しかし、これをプラスに捉え、日本固有のコンテンツをファッション商品に活かすアパレル企業と、国際的な生産オペレーションを担当する商社というコラボレーションによりグローバルマーケティングを展開するという理解に立つことも可能だ。

5.日本独自のファッションマーケティング戦略を
 グローバルマーケティングという視点では、独自性が最大のポイントになる。アメリカの既製服産業、ヨーロッパのデザインを取り入れることで成長してきた日本のアパレル企業だが、今後は欧米にはない独自性を身につけなければならない。欧米に近づくだけでは、最終的に欧米との競争には勝てないからだ。
 欧米のファッションビジネスは年2回のシーズンを基本にしているのに対し、日本のアパレル企業は更にシーズンを細分化して対応している。こうしたきめ細かい季節感をマーケティング戦略としてアピールすることも考えなければならない。QR生産と合わせれば、欧米にも追随できないSCMが完成するだろう。
 日本独自のコンテンツを活かしたブランド開発も望まれる。日本独自のコンテンツとは伝統工芸やきものの世界だけではない。日本独自のポップカルチャー、アニメ、マンガ、ゲーム、エンターテイメント等も含まれる。こうした異業種、異分野とのコラボレーションにより、欧米には存在しないテーマのブランド開発を行うのも有効だろう。
 日本のファッション市場の特徴の一つは、目まぐるしい流行の変化だが、これもプラスに捉えることができる。最も情報化が進んだファッション市場であり、様々な情報メディアと連携することで、独自の動きを創り出すことができるのだ。
 ファッションビジネスの競争は異文化間競争である。アパレル産業が日本独自の文化を活かした産業になるのか、それとも欧米のコピーにとどまり価格競争だけに走るのか。中国を巻き込んだ新たな展開の中で、日本のアパレル企業のグローバルマーケティング戦略に期待したい。◆

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