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April 28, 2004

「形の服」と「色柄の服」

 服には二つの種類がある。一つは形の服。もう一つは色柄の服。
 洋服は基本的に形(シルエット)の服だ。生地は無地が基本であり、シルエットを表現するための生地は風合いが重要になる。同じ型紙を使っても、固い生地、柔らかい生地、張りのある生地、ドレープ性のある生地では、全く違ったシルエットになる。風合いに対する追求が激しい反面、色柄に対するこだわりは弱い。洋服の生地の柄を見ても、それほど大きな柄はない。大きな柄のドレスがあるとすれば、それはきものや民族衣装の影響を受けていると考えても良いかもしれない。サテンの光沢やベルベットの光沢はシルエットによって美しく陰影をつける。そういった生地の表面効果に対しても非常に気を使う。
 「形の服」のデザインとは、シルエットを創り出すことに他ならない。布を裁断し、それを縫い合わせることにより、ギャザーやタックを取ることにより、あるいはアイロンの操作で布目を変形させることにより、立体を表現する。立体を表現するためのテクニックを学ぶことが洋服の基本である。

 一方、日本のきものは色柄(グラフィック)の服だ。基本的には決まった幅の織物を使い、シルエットもほぼ決まっている。体型やサイズの差があっても、着付けでカバーすることが可能であり、カバー率は高い。きもののデザインとは、まさに色柄のデザインであり、グラフィックデザインである。グラフィックデザインを布に描く技術が友禅であり、織の段階で色柄を変化させる技術が紋織や綴れ織であり、糸の段階で染色して色柄の変化を表現するのが絣である。そのほかにも、様々な絞り染や刺繍を組み合わせることにより、複雑な色柄の世界を表現する。色柄に対しては、非常なこだわりを持っているが、生地の風合いについては、洋服ほどのこだわりはない。基本的には糸の密度や撚りも一定の基準の中で収まっている。洋服のように、風になびくシフォンやどっしりとしたサテン、ツイードやデニムといったバリエーションは見られない。きものの生地は薄地であり、寒ければ重ね着をする。究極の重ね着が十二単だ。
 洋服の分野にも色柄の服はある。Tシャツやアロハシャツだ。もっともアロハシャツはきものの古着をほどいて作ったことに由来しており、きものファブリック、和布や古布を使った服の元祖ともいえるだろう。
 洋服のデザインを学ぶものは、基本的にシルエットからアプローチする。特に日本人のように色柄の服に馴染んだ人間にとっては、シルエットという概念、立体に対するセンスが弱い。弱い部分をしっかりとカバーしなければ洋服が理解できないからだ。一方で、世界の民族衣装を見ると、色柄の服が多いことが分かる。シルエットは固定され、色柄の変化こそ、服のデザインと考えられるジャンルである。
 ファッション専門学校の学生が、シルエットでも色柄でもなく、その中間的なデコラティブなデザインを好むのは、洋裁という技法を使いながら、実際には色柄の変化を追求している姿と捉えることもできる。西欧人から見ればセンスの悪い服かもしれないが、ある意味で、この種の服は日本オリジナルといえるのかもしれない。そういう系譜をたどれば、原宿や渋谷から生まれる不可解なファッションは形と色柄の狭間に咲いた花ともいえそうである。日本人のアイデンティティを考える上でも、再度、色柄の服について考えてみる必要があるのではないだろうか。◆

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