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July 23, 2019

フリーランスの定年 j-fashion journal(293)

1.ファッション業界の変化と私の仕事

 フリーランスに定年はないが、周囲には定年がある。人間関係も定年で切れる。そもそも、フリーランスで仕事を取るには、年上の人とのコミュニケーションが欠かせない。今でこそ、自分が定年の年齢だが、30代からフリーランスでやってきた私は、当時の40代、50代に引き立てられて、仕事になったものだ。
 フリーになって最初の仕事は、三越商品本部婦人用品部のコーディネーターだった。これも、当時の三越の部長が引っ張ってくれたお蔭である。ここでは、本店リニューアルというビッグイベントに立ち会った。しかし、その部長が出向すると契約は打ち切られた。
 続いて、東武百貨店の増床リニューアルに関するコーディネーターとして契約。92年のリニューアルオープン後は顧問契約をするという約束だったが、それもうやむやで終わった。
 後から考えると、この時が百貨店業界のピークだった。そこからバブル崩壊後の長い低迷が続いた。
 私は、その頃から、アパレルからテキスタイル業界、繊維産地に軸足を移した。桐生、尾州、浜松、泉州、播州など、全国の産地を行脚し、ジャパンクリエーション設立に参画した。
 2001年、タオル工連が繊維セーフガード発動を要請した。中国からの繊維製品輸入が激増したためだ。私はこの時が日本テキスタイル産業の転換点であり、ジャパンクリエーションの転換点だったと思う。
 2005年、48歳の時に、私はジャパンクリエーションから去り、JFW推進機構がスタートした。JFW体制への移行において、私の役割は終了した。後から考えれば、この時が日本のテキスタイル産業の転換点だった。それから、ジャパンクリエーションの来場者は減少を続けた。
 私はテキスタイル分野の仕事を失い、新たな道を模索した。そして、中国に着目した。既に、生産基地としての中国は確立しており、中国市場進出が次の課題になると考えたからだ。
 2005年から東レ経営研究所の客員研究員となり、中国繊維ファッションビジネス研究会を主宰した。「中国のことは、中国人に聞こう」を合い言葉に中国人社長を招いて講演したり、中国のファッション業界団体やアパレル企業を取材し、交流を深めた。
 2010年、53歳の時に、東レ経営研究所の担当者が替わり、いきなり報酬の減額を迫られ、契約打ち切りとなった。その担当者は自分で中国ビジネス研究会の主宰をしようとしたが、それに失敗し、研究会も姿を消した。
 同時に、私は中国企業相手のビジネスの難しさも実感していた。話は山ほどあっても具体的な契約はまとまらない。中国進出した日本企業は、当初は中国を下に見て、参入は容易と考えていたが、成功した事例は少なかった。
 私は中国に対して、積極的にアプローチするのを止めた。再び日本国内に目を向け、自分より若い中小企業経営者へのアプローチを始めた。
 皮肉なもので、大企業との付き合いを止めようと思っていたら、イオンの話が飛び込んできた。また、中国は成り行き任せにしようと思っていたら、知人から中国企業のコンサルグループへの参加を頼まれた。
 そんなこんなで2017年60歳の現在を迎えている。幸いなことに、アパレル産業がピークの時にアパレル企業に所属し、百貨店がピークの時に百貨店と契約し、テキスタイルがピークの時にテキスタイル業界で仕事をしてきた。そういう意味では、時代の変化を捉えていたとも言えるし、時代の変化に追いかけられていたとも言える。
  
2.フリーランスの定年はあるか?
 
 私は一つの仕事に固執せず、常に変化を求めていた。安定を犠牲にして、可能性に賭けていたとも言える。そのため、常に経済的に不安定だった。
 その結果、2007年、50歳の時に事務所を引き払い、自宅を拠点に仕事を続けている。
 フリーランスの友人達は、私よりも専門分野に特化し、確固とした地位を築いてきた。事務所も構え、従業員も抱え、経済的に安定しているように見えた。しかし、最近の1~2年で彼らの状況も変わってきた。仕事が減少しているのだ。
 原因の一つは、長引くアパレル業界の不況のためだ。しかし、若い世代のコンサルタントには仕事が回っている。企業の世代交代と共にコンサルタントも世代交代しているのだ。友人の一人は、「私は年上の人に評価されて仕事をもらってきたけど、その人達が定年でいなくなった。だから、仕事が来ないのも当然」と言っていた。
 確かに、自分がサラリーマンなら、自分より若い世代の外部人材を登用しただろう。有能な外部の人材は、自分の実績に貢献してくれる。
 自分より年長の人を登用するのは難しい。年長者への指図や相談も遠慮してしまう。また、自分の上司と親しい関係かもしれないし、情報が上司に漏れるかもしれない。自分より若い世代なら、話しやすいし、上司と通じている可能性も低い。
 フリーランスに定年はない。仕事は自分で決めているし、生涯現役を続けることもできる。しかし、仕事を出すのは、定年制度のある企業であり、人間関係も定年で切れてしまう。フリーランスでも定年の影響は大きいのである。
 
3.年長者のメリットを活かせる分野

 どんなに頑張っても若返ることはできない。年齢のサバを読んでも効果はない。
 今後のビジネスの相手は自分より年下の経営者である。その条件の元で仕事を続けなければならない。それなら、年長者が有利な分野を考えればいい。
 第一に、年長者が有利なのは「先生」という立場だ。経営者の先生。ファッションビジネスの先生。コンサルタントではなく、先生役として若い経営者を教えるという立場に立つ。報酬は減少するが、数を稼ぐことができるかもしれない。
 中国において、私は常にこの立場を意識している。「中国のファッション業界の歴史より、私のファッション業界の歴史の方が長い。したがって、みなさんは私の教え子のようなものだ。何でも質問しなさい」という姿勢で対応している。先生になるには、書籍を書くことが効果的だ。「こんな本を書いている先生です」と紹介されるからだ。
 第二は、クライアントの専門分野以外のコンサルタントになること。アパレル企業の経営者は、アパレルのことは知っている。しかし、テキスタイルのことは知らない。あるいは、中国市場のことは知らない。
 しかし、実際に仕事をすると、テキスタイルのことだけ知っていてもコンサルタントにはなれない。アパレルの実態を理解していないと、どのようにテキスタイルを考えたらいいのかも分からない。これは、中国市場についても同様である。
 第三は、M&Aコンサルタントになること。最近、中国企業、IT系企業、ファンドによるアパレル企業のM&Aが増えている。
 私なら、繊維業界、アパレル業界、ファッション業界専門のM&Aコンサルタントを目指すべきだろう。M&Aという分野は、既存のビジネスとは異なる分野であり、年齢云々は関係ない。しかし、これは買収したい、資本参加したいという企業あっての話だ。 
 第四は、シニア市場の専門家になること。シニア市場は巨大といわれながら、活性化できていない、
 原因のひとつは、企業内の人材は30~40代中心であり、その年代の人にとって、60代、70代の人ライフスタイルが実感できないことだ。
 シニア市場の専門家と言っても、あくまで消費者、生活者の立場が中心になる。プラスαで、「実は、ものづくりの専門家です」「マーケティングの専門家です」といった方がいいだろう。
 五番目は、海外企業との仕事である。海外企業にとって、年齢はあまり関係ない。年長者であろうと、自社の役に立てばいいのだ。

4.定年は、サラリーマンもフリーランスになる

 「先生」「異分野の専門家」「M&A」「シニア生活の専門家」「海外企業のコンサルタント」という分野は、定年後のサラリーマンにとっても、目指すべき方向だろう。
 しかし、以下のようなトレーニングが必要である。
 原稿を書くこと。講演で話すこと。自身の専門分野以外の関連分野を勉強すること。M&Aに関するノウハウを獲得すること。自身の生活を分析し、意見を述べること。海外企業と交流すること。海外市場、海外企業について学ぶこと。
 逆にいうと、「リタイアしたサラリーマンは、それまで身につけたノウハウや知識だけでビジネスができない」ということである。
 フリーランスは部下がいないので、何でも自分で仕事を完結しなければならない。
 最近のテクノロジーを使えば、オフィスがなくても仕事はできる。部下がいなくても仕事ができる。時間管理、金銭管理は自身で行う。
 但し、それらを実践するには、インターネット、スマホやタブレットを十分に使うことが必要だ。それができないのならは、そこから勉強すべきである。
 皮肉だが、最先端のICT企業の業務スタイルこそ、定年後に目指すべきスタイルである。

*有料メルマガj-fashion journal(293)を紹介しています。本論文は、2017.7.3に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

 

アパレルM&Aの課題と対策 j-fashion journal(292)

1.在庫評価の不思議

 ファッション商品は、鮮度が命。仕入れた直後の新鮮な商品は売れやすいし、長期間店頭で売れ残った商品には魅力がない。トレンドは常に変化し、長期間見ていれば、それだけで顧客は飽きてしまう。
 ファッション商品の価値は、時間と共に劣化する。そこで、アパレル企業では、棚卸評価をする。たとえば、10000円の小売価格の商品を3000円で仕入れた場合、棚卸は3000円で計算する。しかし、売れ残った商品が半額でしか売れそうにない場合、3000円で仕入れた商品を2000円に評価しなおし、1000円は損金として計上する。販売価格5000円の商品を5掛けで卸せば、2500円となり、500円の粗利が出る。もし、3000円評価のままだと、これができない。
 もちろん、販売する前に1000円の損を出すのだから、実際には何も変わらない。しかし、利益があるうちに評価損を出しておかないと、在庫が膨らみ、新たな商品を投入することができなくなる。
 健全なアパレル企業は、常に棚卸評価をして、早めに損金を計上する。そして、鮮度の高い商品を回すことで、売り上げを確保する。顧客にとっても常に新鮮な商品が並んである店には魅力を感じるが、いつまでも売れ残りの商品を置いている店には魅力を感じない。
 ということで、アパレル企業が抱えている在庫が、どの程度の資産価値があるか調査しなければならない。場合によっては、倉庫代が掛かるだけの不良資産の可能性もある。
 帳簿をいくら洗い出しても、本当のことはわからない。商品がわかる人間が、実際に在庫を見て、評価し直すしかないのだが、その時間も確保できないのが現状である。
 
2.隠れ在庫の怪
 
 もう一つ、帳簿には表れない在庫が隠れている場合がある。たとえば、決算前に在庫が多いと、経営不振であることがばれてしまう。その場合、どのようにごまかするのか。
 最近のアパレル企業は商社経由で商品調達を行っている。在庫が膨らみ、赤字を出したくない場合、アパレル企業は商社に泣きつく。「一時的に在庫を預かってくれないだろうか」と。商社にとって、アパレル企業は得意先だ。倉庫代と金利と物流費さえ支払ってもらえば、損は発生しない。簡単に言えば、在庫隠しだ。
 縫製不良や納期遅れで商品を返品することはあるので、怪しいことではないし、帳簿上もきれいに処理される。アパレル企業は棚卸から在庫を消してしまう。しかし、実際にはアパレル所有の在庫が商社の倉庫に隠れているのである。アパレル企業をM&Aする場合、会計士が帳簿を調査しても見つからない在庫が後から出てくるのはこういうケースだ。

3.在庫を海外で販売できないか?

 帳簿に乗らない在庫や隠れ在庫があると、企業資産を正確に把握することは難しい。実態を解明したいのは、税務署も同じだ。アパレル企業は、税務署にわからないように、在庫の操作を行っており、一見して分からないのも当然だ。
 しかし、不良在庫か優良在庫かという判断は、日本市場を基準に評価したものだ。日本市場では売れない商品も、海外市場では売れるかもしれない。もし、M&Aを仕掛けるのが中国企業であれば、中国市場で在庫商品を販売することも可能だ。日本アパレル企業のブランドに魅力があれば、ゼロ評価だった在庫商品で利益を出せるかもしれない。
 
4.ゼロ評価の企業資産

 更に、帳簿に計上されていない資産もある。それは、ブランドの歴史、ストーリー、ロゴ、シンボル、雑誌の掲載記事、デザイン、パターン、ショップデザイン等の資料である。
 中国アパレルが日本アパレルをM&Aしたい理由の一つは、これらの資産なのだ。しかし、日本の経理処理では、これらの資産価値はゼロ評価である。全ては、経費で制作され、商品や副資材の在庫としては計上されるが、目に見えないブランド価値は計上されていない。
 おそらく、日本国内のM&Aであれば、通常の弁護士、会計士、コンサルタントによる評価で良いだろう。しかし、その場合でも、本当の負債が分からないので、買収は難しいとされている。海外企業が買収する場合には、更に、在庫評価を行い、海外市場で販売できるものかを判断した上で、様々なブランド資産を資産に計上して考えるならば、悪い買物ではないはずだ。

M&Aによるアパレル再生の可能性 j-fashion journal(291)

1.苦境に陥るアパレル企業

 アパレル企業が苦境に陥るとは、具体的にどういうことだろう。
 まず、予算に売上が届かなくなる。その結果、大量の在庫商品を抱える。アパレル企業の場合、そのシーズンに売れ残った商品が次シーズンで売れることはまずない。次シーズンは、次シーズンのトレンドが存在する。素材やカラー、デザインが微妙に変化するので、前年の商品は古くさく見える。
 原価の範囲内で在庫商品が処分できれば、まだ健全な状態だ。原価割れの価格で処分すると損金が発生する。処分せずに、在庫のまま保管すれば経理上は利益になる。しかし、損金を計上できずに在庫処分ができないのは病んでいる状況だ。資金を投入して在庫処分しないと、キャッシュが回らなくなる。
 次に人材の問題。店舗流通からネット流通に軸が変わっていることは分かっていても、社内にITを理解する人材がいないアパレル企業は多い。新たな人材を採用しようにも、予算が確保できない。逆に事業部がなくなり、店舗が縮小し、営業の人材が余っているケースも多い。人材のミスマッチだ。しかし、退職金を確保しなければ、早期退職を進めることもできず、会社の活性化ができず、無気力な雰囲気が支配的になる。人材ミスマッチの解消にも資本が必要だ。
 モノの問題もある。ブランディングやデザインなど、付加価値を高めるには、それなりの人材を揃え、開発経費を確保しなければならない。
 良いテキスタイルを確保するには、良いテキスタイルメーカーと取引きしなければならないし、縫製を良くしようと思えば、良い縫製工場と取引し、それなりの工賃を支払うことが必要になる。業績が悪いと与信管理で取引することができない。どんな仕入れ先とも、取引ができる状態になるには、経営が健全化しなければならないし、それには資本が必要である。
 システムの問題も根が深い。多くの企業のシステムは継ぎ接ぎでごまかしてきたが、そろそろ限界であり、全体最適化を図らなければならない。もちろん、これも資本が必要だ。
 以上のように、経営を改善するには資本が必要だ。それができないなら、現状のまま乗り切るしかないのだが、既にそれが限界に来ている。
 
2.企業存続のためのM&A
 
 多くの日本人にとって、企業は個人の上位に存在する概念だ。個人が企業に所属しているのであって、個人が企業を所有しているのではない。企業は家である。したがって、個人の判断で企業を売却するという発想がない。
 一方、中国人や欧米人は、個人主義で、企業を利益を得るための装置と考える。利益が出なくなれば、売却もあり得る。そもそも、未来永劫企業を存続させる意義も感じていない。企業とは、時代と共に変化していくものという認識だ。
 さて、業績が悪化して、建て直しができない企業は、どうすべきなのか。倒産させれば、仕入れ先等に迷惑が掛かるし、社員の生活保証もできない。社長自身も個人保証していれば、自己破産は免れない。
 もし、企業を売却できれば、建て直しの可能性が見えてくる。少なくとも、仕入れ先に迷惑は掛からないし、社員の生活の保証もできる。オーナー社長も自己破産しなくても済む。
 冷静に考えれば、業績が悪化した企業を売却することは悪いことではない。むしろ、皆がハッピーになるはずだ。

3.企業建て直しの処方箋

 企業を売却して、資本注入されれば、企業の建て直しの可能性が出てくる。少なくとも、現状より悪くはならない。
 第一に行うべきは、新時代に対応できる経営者に交代することだ。旧来の商慣習や業界の常識にとらわれず、普通の企業として全うなマネジメントができればいい。異業種の人材でも良いと思う。最近では、経営者専門のリクルートサービスもあるので、そういう人材を登用しても良いだろう。
 トップが変わらない限り、会社は変わらないし、そもそも、旧来の経営者には責任があるのだから交代すべきだ。
 第二は、不良在庫の処分である。資本注入がされれば、在庫評価を落とすことができる。その上で、いくらかでも値がつけば、それが利益になる。
 在庫を抱えていると、何もできない。過去を清算し、新しい体制で出直しためにも、最初に在庫を処分しなければならない。
 第三に行うべきは、早期退職を含む人材ミスマッチの解消である。人間は変化を嫌うものである。変化を嫌う人が抵抗勢力となり、企業再生を阻害する。
 また、新たな事業戦略を推進するには、新たな人材を登用する必要がある。その人材コストを確保するためにも、新たな事業に対応できない人材は,他の企業に移ってもらうことが必要になる。もちろん、新しい事業に対して、必要な人材とそうでない人材を見極める必要がある。
 第四の改善は、継ぎ接ぎだらけのシステムの全体最適化である。
 業績の悪い企業の業務システムの多くは、地代遅れであり、バラバラな時期に、個々の担当者がシステムを導入しているために、全体がつながっていない。そのため、様々な段階で無駄な作業が発生している。そこで、システム全体を見直し、全体最適化を図る必要がある。クラウド化が一つの方向性になるだろう。
 第五は、組織改革とモチベーションアップである。
 企業買収は、社員にとっても大きなショックだろう。不安ばかりが先行し、悲観論が横行すれば、経営再建はできない。
 企業のビジョンやミッションを明確に設定し、それを共有すること。そして、評価と報酬システムを改善し、社員のモチベーションアップを図らなければならない。継続的なワークショップ等により、社員の不安を取り除き、新たなチーム編成を行う必要がある。
 第六は、ブランディングと商品開発の強化だ。経営改善というと、いきなり新ブランドを展開しようという人も多いが、私は反対だ。現在の商品にも、それなりの販売経路が確保されているし、顧客も存在している。それを無視して、全く新しいラインに変えても、そこにも競合は多い。既存のブランドや商品の分析を終えてから、現状の改善を行わなければならない。
 もちろん、必要であれば、新ブランド開発も行うが、その場合は、一からチーム作りをしなければならないし、仕入れ先や販売先も一からスタートとなる。それよりは、既存ブランドのリニューアルを優先すべきだろう。
 第七は、新たな人材導入と新たなサプライチェーン構築である。これは、全く新しいブランドや事業部を立ち上げることを想定するものだ。
 新たな事業部をスタートさせる場合は、M&Aも視野に入れたい。社内で一からプロジェクトを立ち上げるケースと比較して、方法を考えるべきだろう。
 第八は、本社移転を含む経費削減である。新会社のビジョンやミッションを理解し、経営的な視点に立てるようになってから、本社移転を考えるべきだろう。本社が自社物件ならば売却して、よりコストが下がることを前提に、賃貸物件への移転を考えたい。無駄なコストを削減し、有望な新規事業に投資することは経営改善の基本である。
 
4.中国アパレルとの連携

 現在、日本のアパレルをM&Aする可能性があるのは、中国内販アパレルだ。その理由は、上場する中国アパレル業界が多く、新たな投資ニーズが高いこと。中国アパレル業界は全般的に不況だが、その陰で世代交代も起きている。若い企業は上場し、新たな資金調達を得て、業務拡大を考えている。その手段として、有望なのが、日本アパレル企業のM&Aである。
 日本アパレルにとっても、中国アパレルと組むことで様々な可能性が広がる。たとえば、中国アパレルにブランドライセンス供与すること。それだけで、安定したロイヤリティ収入が期待できる。また、自社ブランドの商品を中国市場で展開する場合でも、中国アパレルと連携した方が有利だ。
 これまで、日本のアパレル企業が中国市場に進出しても、多くが失敗している。中国市場の特徴やニーズを把握できず、日本の商品をそのまま投入しても売れないのだ。中国アパレル企業の協力を得ることで、中国市場に対応した商品供給や、販売体制を整備することができるのではないか。

*有料メルマガj-fashion journal(291)を紹介しています。本論文は、2017.6.19に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

 

生活の中の仕事 j-fashion journal(290)

1.定年からの仕事を考えよう

 多くの人は「定年は仕事ができなくなる制度」だと考えている。しかし、実際は「会社組織から切り離される制度」に過ぎない。ポジティブに考えれば「社員という身分から解放される制度」だ。「定年以後は仕事をしてはいけない」という法律もないし、「会社に所属せずに仕事をしてはいけない」という法律もない。
 私のようにフリーランスで仕事を続けてきた人間にとって、「会社から離れたからという理由で仕事をしないのはいかがなものか」と思う。60歳という年齢は最も仕事ができる年代だ。まだ身体も動くし、頭も働く。多少記憶力や判断力は鈍っているかもしれないが、その分、分別はあるし経験もある。交渉力、問題発見力、問題解決力もまだまだ高い。
 仮に70歳まで健康でいられれば、60歳ならあと10年ある。10カ年計画が立つ。企業だって10年あれば、売上がゼロから数十億規模に成長することは珍しくない。80歳まで考えれば20年もある。20年という期間は、一般のサラリーマンが会社で過ごした期間の半分である。40歳から60歳までだ。「これだけの時間があれば、何でもできる」とは思えないものか。
 仕事もなく趣味もなく、どうやって20年を生きていくというのか。
 
2.有償の仕事と無償の仕事
 
 多くのサラリーマンは、仕事に対して誤解があると思う。サラリーマンは、仕事の成果に関係なく給料を受け取れる。したがって、無償の仕事をした経験がない。たとえば、コンサルタントが企業から相談を受ける。会社を訪問するだけで、交通費も人件費もかかるが、多くの場合、それだけでは報酬は支払われない。企画書を作って提案しても、報酬を受け取れないことさえある。契約しなければ報酬は支払われないし、それ以前の仕事は全くの無償で終わる。
 サラリーマンだって、こういう場面を見たことはあるだろう。自分の身の上に置き換えて考えていないだけだ。我々の意識では、仕事には有償の仕事と無償の仕事があり、報酬にも、生活できる程度の正当な報酬と,生活できないどころか、原価割れの不当な報酬もある。それらを織りまぜて、生活している。
 新しい分野、まだ経験を積んでいない分野では、こちらから無償の仕事を引き受ける。ある意味「無償の学校」に通うようなものだ。無償の仕事を通じて、経験を積み、ノウハウを取得してから有償の報酬の仕事にしていく。無償の仕事によって、自分のノウハウは蓄積されていく。与えられた仕事、できる仕事だけでは、アウトプットばかりでインプットがなくなる。最終的には、時代の変化に対応できなくなる。
 サラリーマンには、こういう発想がない。利益を上げていない無駄な会議の資料作成でも、給料は支払われる。仕事をすることは、就職することであり、報酬が確定することだと思っている。
 定年後に、確実な報酬を求めれば、肉体労働が主になる。サラリーマン時代に培ったノウハウや人脈が活かされる仕事はないし、自分の価値を高めるような仕事もない。そんな仕事を10年も20年も続けられるものではない。結局、仕事を辞めてしまう。勿論、退職金を使った悠々自適の生活も悪くない。しかし、「本当にそんな生活で満足できるのか」と思うのだ。
 
3.束縛されない自由な仕事

 仕事は生活にリズムを与えてくれる。生活に刺激を与えてくれる。そして、仕事を通じて、社会との関係を確認できる。
 会社組織を離れたということは、会社の規則に縛られないということだ。一日、好きな時に働いて、好きな時に休む。会社まで通わなくても、自宅でも、カフェでも好きな場所で仕事をすればいい。
 嫌な上司も使えない部下もいない。全て、自己責任であり、自分の仕事だ。
 問題は誰も仕事を与えてくれないということだ。「どのように仕事を見出すのか」からスタートしなければならない。
 フリーランスの先輩として、私の仕事の方法を紹介しよう。イメージとしては、新規事業開発部長になった気分でいい。事業内容は自由。スタート資金は少なく設定した方が良い。売上や利益は少なくても良いが、継続できること。社会的貢献や公的利益という発想があれば、行政や企業からの支援や協働も期待できる。まず、社会的ニーズにはどんなものがあるのか、を考えよう。できれば、消費者起点に考える。基本は自分自身の生活を起点にすることだ。
 
4.自分の生活を起点に考える

 私は週に何度か買物をする。一人の時もあれば、妻と一緒に行くこともある。私が行く、SCモールには、沢山の専門店が軒を連ねているが、多くは若者向けの商品を扱っている。しかし、顧客層の年齢は高い。顧客とテナントが完全にミスマッチだ。
 量販店の売場も以前よりは頑張っているが、やはり安物か、若者向き。若者向きと言っても本当の若者が買えるものは少なく、若者ぶった中途半端な商品だ。
 高級ブランドの店には気に入る商品もあるが、高過ぎて買えない。
 シニア市場は有望と言われながら、こうした状況が続くのは、企業内の30代、40代の社員に、60代以降の顧客の気持ちが実感できないからだ。ここにビジネスチャンスがある。
 もし、あなたがシニア向けビジネスの新規事業開発室にいたら、どのように情報収集するだろうか。シニア市場向けの情報を検索するだろう。その時、どんな情報が発信されていれば、連絡を取るだろうか。逆の立場で考えれば、あなたがどんな情報を発信すれば、企業が連絡を取るのか。
 インターネット時代のビジネスでは、まず、ネット上に情報発信することから始まる。あなたの存在がネット上にアップされていなければ、誰にも気づかれない。

5.SNSからの発信で社会とつながる

 会社員の時には、「SNSなんて暇人のやるものだ」と思っていたかもしれない。しかし、会社から離れた個人にとって、SNSは社会とつながるための有力なツールだ。個人情報が漏れるのが怖がる人も多いが、私は積極的に個人情報も公開するべきだと思う。勿論、全てを公開するのではなく、他人が読むことを前提として文章を書くこと。愚痴、ヘイトスピーチ的な書き込みはしない方がいい。
 SNSを理解するには、とにかく個人としてやるしかない。いきなり、ビジネスを目的にすると、つまらない書き込みばかりが並び、誰も相手にしなくなる。まず、個人が楽しむことだ。
 まず、facebookから始めてみよう。大人の利用者も多い。関連書籍も沢山出ているし、周囲の友人や知人、家族でfacebookをしている人に話を聞いてみよう。facebookで、知人、友人を検索してみると、何人かの知り合いが見つかるはずだ。見つかったら、友達申請を行う。相手が了承すれば、その人のコンテンツが見られる。facebookでは、無料で自由にグループを作ったり、参加することができる。様々な愛好家がいて、それぞれの意見を発信しているので、市場調査に適している。
 facebookを活用すれば、会社や商品をPRすることもできるし、広告もできる。今後は、個人主体のビジネスが増えるので、他人より先にノウハウを身につければ、それを発信するだけで、ビジネスにつながる。

*有料メルマガj-fashion journal(290)を紹介しています。本論文は、2017.6.12に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

 

January 08, 2019

ブラック企業という概念は、どのように生れたか j-fashion journal(289)

1.サラリーマンと職人

 今は、サラリーマンになることが当たり前の時代だが、1950年代はサラリーマンはエリートだった。サラリーマンのイメージは、背広を着て鞄を持って会社に行く姿だ。小学校に上がったばかりの私の記憶では、近所で見かける背広の後ろ姿はとてもカッコ良かった。
 私は東京墨田区の生れだが、ほとんどの家のお父さんは中小企業の経営か、中小企業の下請けか、中小企業で働く商人か職人だった。
 今でこそ「職人」はほめ言葉だが、当時の「職人」いう呼称はどちらかと言えば蔑称に近く、職人と呼ばれるのを嫌った人も多かった。手に職をつけた職人は、働き口に困らなかったし、条件の良い勤め先が見つかれば転々と勤め先を替える、その日暮らしの人が多かったからだ。
 サラリーマンになるには、大学を卒業し、大企業に就職しなければならなかった。そうすれば、月々決まった給料を受け取れる。終身雇用なので、定年まで一つの会社に勤めることができる。

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二巡目の青春をどう生きるか? j-fashion journal(288)

1.定年は、個人生活の始まり

 学校に行く前は親に従い、学校では先生に従う。就職したら上司に従い、昇進しても組織の論理に従う。結婚すると、多くの男性は奥さんに従う。日本人男性のほとんどは、誰かに従う人生を過ごしてきた。
 目標も自動的に設定されていた。勉強するのは、良い学校に入るため。次は、良い会社に就職することが目標となる。就職後は、出世することが目標。更に、年間売上目標や月別の目標が設定される。目標を自分で考える必要はなかった。常に路線は敷かれていたし、期待の通りに行動すれば良かったのだ。
 定年を迎え、会社から解放された途端、誰も指示してくれないし、目標もなくなる。そして、「何もやることがない」「何をやっていいのか分からない」「趣味がない」という悩みを抱える。
 仕事をしている時には、時間ができたら「本を読みたい」「映画をみたい」「旅行に行きたい」などと思っていても、実際に仕事がなくなると、それらの意欲もなくなる。仕事があるから、余暇がある。余暇にやりたいことは、仕事の合間にやりたいことだ。仕事がなくなると、余暇への欲求もなくなる。
 定年を迎えるとは、個人に戻ることだ。個人の目標を設定し、個人の生活が始まる。
 

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AI時代のファッションビジネス j-fashion journal(287)

1.ファッションの仕事が変わる

 世間では「AIブーム」らしい。実際、ベンチャー企業は「AIやってます」というと、お金が集まるとか。
 人間とAIのどちらが優秀かは、ケースバイケースだろう。しかし、AIブームの現在、人間のコンサルの意見より、AIを活用して導き出された意見の方が信頼されるに違いない。そんな風潮である。
 ファッションビジネスにおいて、どんな場面でのAI活用が考えられるだろうか。
 店頭販売においては、たとえば、顔認証とデータベースを連携すれば、販売員の持つタブレットにその情報を表示することができる。過去の買物履歴が分かれば、より効果的な接客ができるだろう。また、AIによるリコメンドサービスができれば、人間の販売員がお勧めするより信頼性が高まるかもしれない。
 更に、店頭販売情報がクラウドに蓄積されれば、AIが自動的に店間移動や商品発注が行うことができる。
 VMDにおいても、在庫状況によってAIが最適な商品のレイアウトを教えてくれるかもしれない。
 ネット販売では、更にAIの活躍が期待される。アマゾンで買物をしている人は、過去の購買履歴や閲覧履歴に基づいた広告が表示されるのを経験しているだろう。
 また、最近では問い合わせにチャットを使っているケースが増えているが、24時間体制で対応するには、AIの支援が欠かせない。
 

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セラピースクリーンの提案 j-fashion journal(286)

1.季節感を演出する生活空間の喪失

 日本人が落ち着く空間とは、どんなものだろう。農村の民家か。あるいは、京都の寺院だろうか。
 若い世代の中には、コンクリートの打ちっぱなしやガラスで囲まれたモダンな空間を好む人もいるかもしれない。しかし、年齢を重ねるほどに、日本の自然、日本建築に惹かれる人が多くなるのではないか。
 日本建築は、「木と紙と土」でできた建物と、庭で構成される。庭は自然を取り入れ、季節感を感じさせる。建物も素材の色や質感をそのまま活かしている。非日常空間を演出する寺院建築等は、木に彩色したり、漆を塗ることもあるが、それは特殊な事例だ。
 多くの日本人の生活空間は自然の素材と色で構成されていた。唯一、季節を演出する空間として組み込まれたのが「床の間」だ。自然の素材の中で、床の間という特殊な空間に「掛け軸」と「活け花」で季節を演出した。

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パーソナルWEBショップ j-fashion journal(285)

1.リアルなコトのカタログ

 シニア世代のみなさん、欲しい商品はありますか?というより、欲しい商品が見つかりますか?
 「モノを欲する」ことは、「どんなことがしたいか」に由来します。「どんなことをしたいか」がないと、モノは欲しくありません。それでも、生活している以上、モノは必要です。必要なモノを購入するという行為には、心が動きません。買物は労働になります。
 「買物が楽しい」と感じるのは、買い求めたモノを使ったコトを想像するからです。想像しても何の感動もないのであれば、モノなんて何でもいいし、何でもいいのなら安ければいい、ということになります。
 良い商品を安く作るという思想からは、感動のない商品が生れます。それがコモディティ化です。
 最初に、ワクワクするコトがあり、それの準備でモノを揃える。モノが揃ったら、さぁ、ワクワクするコトの始まりです。

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ハッカソンのようなネットショップ開発はできないか?

1.ハッカソンって何?

 ハッカソンはハック(hack )とマラソン(marathon )を合成した言葉。OpenBSDの開発者やサン・マイクロシステムズのマーケティングチームによって、自主的に考えだされたものだ。
 ハッカソンは、イベントの主題に関する1つもしくは複数のプレゼンテーションで始まる。その後、参加者達は個々の関心ごとや技能に基づきアイデアを出したりチームを結成する。ハッカソンの作業は数時間から数日間続く。長時間に及ぶ場合には、ピザや栄養ドリンクで軽い食事をする。寝る時も寝袋などで雑魚寝する。
 最終的には、チームごとの結果を示したデモンストレーションが行われる。コンテスト形式の場合は、審査員が優勝チームを選出し賞を授与する。
 好きなものが一カ所に集まって、寝食を共にしながら、一つのテーマについて集中的に議論し作業を進めまとめ上げる。仲間同士が合宿して集中的に仕事するというイメージに近い。
 

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