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November 21, 2019

中国の資本を活用した経営再建 j-fashion journal(394)

1.日本企業、中国企業に欠けているもの

 日本の中小企業には技術と経験がある。しかし、資本力と決断力が乏しい。
 中国の中小企業は資本力と決断力はあるが、技術と経験に乏しい。その両者を組み合わせれば、国際競争力のある中小企業が生まれるのではないか。
 具体的に言えば、中国企業の資本を日本企業に注入して、日本企業の体質改善をすると同時に、中国市場や中国企業への技術ライセンス等により成長戦略を描くというものだ。
 中国企業にとって、技術や経験を金で買うという発想は珍しいものではない。時間を費やして技術を身につけても、ビジネス環境が変化すれば役に立たなくなる。それなら、その時間も含めて金で買おうと考える。
 日本企業は、というより日本人は結果よりプロセスを重視する。結果がでなくても、努力する人を評価する。逆に言えば、努力を金で買うという行為には嫌悪感を感じるのだ。
 一方で金がなくて首が回らない企業は少なくない。不良在庫を抱え、資金繰りに苦労している。短期借り入れで一時的にしのいでも根本的な解決にはならない。構造的な構造改革が必要なのだ。
 例えば、不良在庫を一気に処分する。短期借入金をまとめて返済する。それには資金が必要である。日本の銀行は担保のない資金は貸し付けない。それなら中国企業の投資を受けるのはどうだろうか。

2.M&Aも事業承継の一つの方法

 他社の資本を受け入れれば、それまでのように好き勝手な経営はできなくなる。あるいは、社長交代を迫られるかもしれない。
 しかし、経営を続けていれば、連帯保証人として債務を引き受けなければならない。あるいは、自己破産をするかだ。
 考え方を変えれば、他社の資本を受け入れ、会社を存続させることは、社員や取引先の生活を守り、顧客に迷惑をかけないことでもある。
 経営者が変わることで業績が好転するかもしれないし、中国企業との連携により、中国市場への進出や別のビジネスモデルが見えてくるかもしれない。それを自分の手で行うか、それとも他人に委ねるかである。
 発想を変えれば、資本参加やM&Aも事業承継の一つの方法と言えよう。
 
3.中国人と日本人の経営発想の違い
 
 かつて中国は国営企業しかなかった。従って、経営者が自分の子供に事業を承継させることはなかった。自分が経営者としての権力を持っている時にいかに利益を上げるか。いかに個人的な資産を形成するか、が課題だった。「企業の信用」や「企業の継続性」について考えることはなかったのである。
 民間企業が認められるようになり、企業を自分の子供に承継させるケースが出てきて初めて、企業に対する信用の重要性に気がつき、事業の継続性を考えるようになった。そうなると個人の資産だけではなく、会社の資産についても考えるようになる。
 一代限りの経営を前提にすれば、技術を研鑽することよりも、投資を優先するのも当然だろう。彼らには時間がないのだ。
 こうした背景があるので、中国人経営者は簡単に企業を売却したり、買収したりすることができる。
 日本は「もの作り」を重視する。技術を研鑽するには、事業承継が重要である。利益を上げるよりも、事業承継と技術伝承が重要と考える。
 この両者の違いを理解して、事業計画を策定して、運営するのは非常に困難だろう。互いの考え方には根本的な違いがあるからだ。
  
4.中国企業との連携による成長プラン

 日本と中国の経営者の発想も、企業のあり方も大きく異なる。それでも、戦略的な連携の可能性を考えたいのは、それがどのような資本関係であろうとも、互いにメリットがあるからである。
 中国企業は中国国内市場で欧米ブランドとの競合が激しくなっている。また、欧米市場に輸出するには、製品の完成度が高めなければならない。それには、日本企業のノウハウを活用したいところだ。
 日本企業も日本国内市場だけでは成長が見込めない。海外市場進出を考えたいところだが、その経験もネットワークもなく、多くの企業が失敗している。
 中国のネットワークと資本力、日本の技術や管理をつなげることで、初めてグローバル市場で戦える水準になると思うのだ。
 単純に、そんな企業を見てみたいとも思う。現在は時期尚早かもしれないが、少なくとも3~5年の内には実現するのではないか、と期待している。

*有料メルマガj-fashion journal(394)を紹介しています。本論文は、2019.6.10に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。 

国産サラブレッドレザーのブランド j-fashion journal(393)

1.国産サラブレットのレザー

 サラブレッド(英 : Thoroughbred)の語源は Thorough [ 完璧な、徹底的な ] + bred [ 品種 ] で人為的に完全管理された血統を意味する。ここから分かるように、サラブレッドは、競走用に品種改良された特殊な馬だ。人間が考え出したレースのために、生まれ、そして死んでいく。
 サラブレッドの最期はどのようなものかご存じだろうか。レースのための馬はレースで走れなくなると、その役割を終える。名馬ならば種付け馬として働けるが、それはごく一部に過ぎない。
 多くのサラブレッドは食用にされる。徹底的に人間のために貢献してくれるのがサラブレッドなのだ。肉は食用になるが、革はどうなるのか。これまでは、サラブレッドの革が注目されることはなかった。
 皮革業界では、牛革の方が高級であり、馬革は一段低いものとして扱われていた。馬の革は牛より薄く傷も多いからだ。
 しかし、その傷こそ、サラブレッドの勲章ではないか。競馬が好きな人なら、人間のために改良され、人間のためにレースで走り、人間のために食べられるサラブレッドを愛さずにはいられない。
 最期に残った革に対しても、愛情を持って接するだろう。そして生前の雄姿に想いを馳せるのだ。
 
2.thoroughbred leather

 サラブレットという言葉には、「正当な、最高の」という意味もある。「サラブレッドレザー」は、最高のレザーという意味も持つ。国産サラブレットレザーは、「由緒正しい国産最高のレザーという意味にも解釈できる。
 サラブレットは毛の色により区別される。これらを製品に活かすことも魅力を増す要素となる。
 「青毛(あおげ)」は、被毛、長毛共に黒色。軽種馬には比較的少ない。この毛色は季節により、毛の先が褐色となり黒鹿毛や青鹿毛のように見えることがある。眼の周辺、鼻の周辺をよく観察して判断しなければならない。
 「鹿毛(かげ)」は、被毛は明るい赤褐色から暗い赤褐色まであるが、長毛と四肢の下部は黒色である。 栗毛との違いは長毛と四肢の下部の色で栗毛は黒くならない。
 「栗毛(くりげ)」は、被毛は黄褐色で、長毛は被毛より濃いものから淡く白色に近いものまである。
 「芦毛(あしげ)」は、原毛色は栗色(栃栗色を含む)、鹿毛(黒鹿毛、青鹿毛を含む)、又は青毛等だが、被毛全体に白色毛が混生し、年齢が進むにつれて白色の度合いが強くなるが、その進度は個体によりまちまちで、その色合いも純白になるものから原毛色をわずかに残したままのものまである。生時は原毛色にわずかに白色毛を混生する程度(特に眼の周囲に多い)で、中には直ちに芦毛と判定し難い場合もある。

3.デジタルプリントと蹄鉄パーツ

 サラブレッドの毛並みの色や艶をなめしと染色にり再現できれば、これまでの牛革とは異なる表情を出すことができる。
 更に、デジタルプリントが可能であれば、毛並みの色を忠実に再現できるかもしれない。
 革製品に使われる金具も重要だ。蹄鉄には、魔除け、厄除け、幸運を招くという言い伝えもある。従って、蹄鉄をモチーフにしたラッキーアイテムも多いが、ここでは本物にこだわりたい。
 蹄鉄から再生した金属パーツ、蹄鉄の形を忠実に再現した金属パーツなどを革製品と組み合わせることにより、ブランドとしてのオリジナリティを表現することができるだろう。

4.新しい競馬ファンと乗馬ファン

 このブランドのマーケティング戦略を考える場合、顧客層を絞る必要がある。
 サラブレット関連商品ならば、「競馬ファン」と「乗馬ファン」が考えられる。ヨーロッパの競馬は貴族のスポーツだが、日本の競馬はギャンブル好きと重なっている。しかし、最近では女性も競馬を楽しむようになってきた。ギャンプルというより、気持ちの良い競馬場で美しいサラブレッドを応援する。応援するモチベーションを上げるために、数百円の馬券を購入する。そんなイメージだ。
 競馬業界としても、こうした新しいファン層の拡大を図っているので、この層にアピールするブランド開発ができれば、競馬界にとっても貢献することになるだろう。
 もちろん、乗馬ファンも取り込みたい。乗馬を趣味にする人は富裕層に多く、ブランドイメージを上げるのにも乗馬をしている富裕層にアピールしたいところだ。
 もし、女性の顧客が取り込めるならば、サラブレッドレザーブランドとして、ラグジュアリーな高級バッグの開発もできるだろう。

*有料メルマガj-fashion journal(393)を紹介しています。本論文は、2019.6.3に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。 

働き方改革と企業の世代交代 j-fashion journal(392)

1.働き方改革の背景

 働き方改革といっても、そこで語られていることは昔からのものだ。残業すれば残業手当てを割り増しで支払わなければならない。長時間労働は禁じられている。会社を辞める自由も保証されている。
 しかし、法律で決まっている権利でも、それを行使することができなかった。それを正常化しようということであり、「働き方改革」というより「法令遵守の徹底」というべきなのかもしれない。
 この種のことは意外と多い。法律で決まっていても、法令遵守のチェックができなかったり、処罰規定がないことも多い。
 法令が曖昧なことにはメリットもデメリットもある。
 法律をあまり厳格に適用することは、世の中が窮屈になる。しかし、常識が通用しない時代になれば、法律を厳しくするしかない。
 常識は時代と共に変化し、世代によっても理解が異なるのである。
 取り締まる側の論理では、取り締まりや処罰を曖昧にしておいた方が、権力の影響力が強くなるということもあるだろう。
 働き方改革の背景には、企業への不信感がある。終身雇用が崩壊し、年功序列も曖昧になっている。定年まで生活が保証されるわけでもなく、定年後の生活も退職金で保証されるわけではない。
 それなのに、正社員という立場にあぐらをかき、派遣社員より仕事ができなくても、高い給料をもらうのが当然だと考える人もいる。それをアンフェアだと考えるのも当然だろう。
 企業と個人の関係は昔とは違う。そこに不満があり、働き方改革を促す風潮があると言えよう。
 
2.経営者は変わらず、社員は変わった

 社員の意識が変わると、マネジメントの手法も変えなければならない。会社への忠誠心を強制しても、それなりの待遇が約束されなければ、誰も従わないだろう。
 昔は社長が言ったことを無条件に聞いたかもしれないが、現在はそうではない。同じことを言っても、時代が変われば伝わらないこともある。
 最近、「社員のモチベーションをいかに上げるか」が企業の重要な課題になっている。昔なら、経営者が社員のモチベーションを考えることはなかった。社員は高いモチベーションを維持して仕事をするのが当たり前であり、それは常識だった。モチベーションの低い社員には、「もっとまじめに仕事をしろ」と叱ればそれで済んだ。
 現在は、叱っても褒めても社員の心は離れていく。社長は昔と変わらなくても、社員が変わっている。一生懸命、社員の気持ちをかきたてようとすればするほど、空回りする。社長にはその原因が分からない。社員は次々と退職し、会社の業績は上がらない。そんな悩みを持つ経営者は少なくないだろう。

3.デジタル情報格差と世代間ギャップ

 社員の働き方だけでなく、会社の仕事の流れも変わっている。全てはデジタル化され、そのデータはインターネットで通信される。アナログの時代に蓄積されたノウハウが価値を失い、技術や職業が消失することもある。デジタルに関する知識や技術がないと仕事が回らない時代になったのだ。
 デジタルに関するスキルは、世代によって格差がある。デジタル化の波から逃げてきた世代と生まれた時からデジタルデバイスに囲まれて育った世代とでは、格差があって当たり前だ。この格差は仕事を遂行する能力にも影響する。ベテランなのにデジタルスキルがないために、新人に教えを乞うことも少なくない。
 今や、社員の世代間ギャップをどのように埋めるかは企業の重要な課題である。しかし、この課題を高齢の社長は解決できないことが多いのだ。
 パソコンやインターネットを活用すれば簡単にできる仕事を、アナログで延々と処理させられるような会社に若い社員は働きたいと思わないだろう。
 デジタルに関する情報格差が企業の優劣にも影響するのである。
 
4.世代間コミュニケーションイベント

 働き方改革とデジタル化の進展により、企業の世代交代が進むだろう。今後は、企業規模の違いよりも世代の違いが重要になる。
 逆に言うと、高齢の経営者は、自ら経営の世代交代を目指さなければ生き残っていけない。企業の生き残り戦略として、世代間コミュニケーションが非常に重要になるだろう。
 最近、会社で運動会を開催するのが流行っているが、それも世代間コミュニケーションの手段の一つかもしれない。あるいは、会社単位でパーティーをしたり、旅行するのも良いだろう。
 あらゆる世代が楽しめるアナログな社内イベントを考えることは、ビジネスチャンスにつながるかもしれない。 

*有料メルマガj-fashion journal(392)を紹介しています。本論文は、2019.5.27に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。 

令和に起きることを予測できるか? j-fashion journal(390)

1.センサーとAIによる自動化

 令和の時代は、センサーとAIによる様々な自動化が進むだろう。自動車の運転だけでなく、電車の運転も自動化される。路線バスも無人化が進む。
 現在、問題になっている高齢者の自動車事故もセンサーと自動運転のシステムにより、アクセルとブレーキの踏み間違いや逆走も防止策が取られるだろう。
 ルーチンワークも自動化される。単純な事務作業はなくなるだろう。
 「昔は一台のコンピュータに人間が一人ずつ張りついていたのよ」と言われる時代が来るに違いない。
 昔は製糸工場でも織物工場でも一台の機械に一人の工員がついていたものだ。それと同じことがホワイトカラーの分野でも起きるのである。
 
2.農業テック、漁業テック

 仕事は都心の会社で行うものというスタイルが崩れるだろう。事務作業が自動化されれば、仕事の内容も変わるからだ。
 日本は製造業から、安心安全な高級食材を輸出する国に転換するだろう。漁業も農業もドローン、センサーとAIの活用により、農業テック、漁業テックが進む。一次産業の再構築は大きなビジネスチャンスを生み出す。漁業も農業と同様に養殖による安定した収入が可能になり、水質や餌のコントロールは自動化が進む。
 天然の魚はより高級な食材として、これまで食用とされなかった魚も次々と開発される。
 農業も漁業も更なるブランド化が進み、流通も再構築され、高度なサービス業と観光業との連携が進む。
 
3.自給自足支援ビジネス 

 安心安全を追求していくと、自給自足生活を理想と考えるようになる。しかし、自給自足生活を実践するには、様々なスキルが必要になる。それを支援するビジネスも出てくるだろう。また、ベランダだけではなく、室内の空きスペース、以下の周囲の空間でも植物を栽培するための支援も可能になる。
 工場型の農園も増えるが、家庭型の農園も可能になる。友人同士が作物を交換するようなコミュニティも生まれるだろう。
 
4.多国籍社員のいる中小企業

 自動翻訳の精度は着実に上がっている。ポケトークから始まり、SNSの自動翻訳機能も使える。自動翻訳機能付きのワイヤレスイヤホンも開発されそうだ。
 AIの進化により、自動翻訳の精度も格段に向上するに違いない。
 自動翻訳が進めば、異なる言語の人達が、全員母国語で会話すれば良いことになる。
 これが進めば、中小企業でも多国籍の社員を採用できるし、それによってグローバルなビジネスに進出することも可能になるだろう。
 特に、伝統工芸の分野で言語の壁がなくなれば、技術を継承する後継者としても期待できる。
 
5.一人一台アシストロボット

 AIスピーカーにモニターが付くようになった。スマホに搭載されたAIも性能が上がっている。秘書の機能を持つAIソフトもある。
 これが進化してくれば、個人用のデータを集積し、個人の考え方を理解するAIアプリが登場するだろう。それを10年単位で使い続けることにより、膨大なデータが収集され、真の意味でパーソナルAIが育成される。
 更に、卓上型ロボットと連携し、表情と身振り手振りが付くようになるだろう。音は、スピーカーから流しても良いし、ワイヤレスのイヤホンから流しても良い。
 ロボットとクラウドAIが連携すれば、ロボットがいない場所でも様々なコミュニケーションが可能になる。

6.ロボットパートナー

 「中国で11万円のAI搭載ラブドールが発売」というニュースが飛び込んできた。体温は37度に設定されている。触れば柔らかく温かい。そして、AIによる音声認識で会話ができる。
 これまでは二次元のアイドルに恋していた人も、三次元の恋人に乗り換える人も出てくるかもしれない。
 ベータ対VHSというビデオテープの規格戦争は、アダルトコンテンツが成否の鍵を握った。AI戦争もアダルトコンテンツが鍵を握る可能性もある。
 現在は女性型ロボットが中心だが、男性型ロボットのニーズも高いだろう。こうなると完全に外界と断絶した引きこもり生活も可能になるかもしれない。AI搭載の柔らかく温かいロボットと会話し、セックスする生活。それが普及すれば、結婚制度のあり方も変わるかもしれない。
 
7.見えないスマホ

 平成の時代に生まれ、発展したスマホも、令和の時代に姿を消すだろう。
 画像はメガネ型モニターで確認してもいいし、スマホ本体の機能はスマートウォッチに吸収することも可能だろう。ゲームを楽しみたいなら、ゴーグル型端末も良い。スマホは機能を特化した製品に分解され、様々な端末が開発されるに違いない。
 時計とメガネとイヤホン。これらのいずれかにスマホは吸収され、それぞれが連携する。顔認証技術が進化すれば、おサイフケータイ機能も必要ない。その代わり、全ての人々のデータは管理され、蓄積される。
 ここまで来ると、利便性を追求するのか。それともデジタルを捨てて、アナログに生きることが良いのか、という議論が出てくるに違いない。デジタルは環境に埋め込まれ、意識されることがなくなるのではない。一見するとアナログ時代と変わらないが、見えないデジタル技術が生活をサポートするようになるだろう。
 
8.アナログ回帰

 デジタルが進化すると、デジタル特有のカドが取れて、滑らかな曲線が表現できるようになる。ある意味で、アナログに近づくのだ。
 アナログに近づけば、デジタルとアナログの境界も曖昧になってくる。アナログの良さをデジタルで表現することもできるし、逆にアナログに回帰しようという動きも出てくるだろう。
 アナログ回帰のトレンドは既に表れている。例えば、野球もテレビで観るよりも、球場に出かける人が増えている。音楽もパッケージで聞くだけでなく、ライブやフェスに出かけて五感で感じることが重視されている。
 一方で、3DやVRにより、ライブに近い体験を再現する動きもある。
 アナログの楽しさは、コミュニケーションの楽しさに通じている。デジタルも十分なコミュニケーションが伴えばアナログに近づくと言えるだろう。
 
9.デジタルシルバー

 デジタルネイティブとは、学生時代からインターネットやパソコンのある生活環境で育った世代、70年代後半以降に生まれた世代とされる。令和元年の時点で40歳前後。30年後には70歳前後となる。この世代がデジタルシルバーになるだろう。
 令和になり、シルバー世代もスマホを使う人が増え、ネット通販で買い物する人も増えてきた。今後30年で、ネット通販も当然になり、更に現在の若者のようなライフスタイルを、シルバーとなっても体験するに違いない。
 シルバー世代もゲームをして、ラップを歌い、ダンスをする。自分の健康もスマートウォッチやトイレのセンサーからデータを収集し、管理するだろう。オタクシルバーも元気に活動し、レジェンドと呼ばれるだろう。
 デジタルに親しんだシルバーは、働こうと思えば、高齢になっても働くことはできる。逆に高齢だからという理由だけで、できないことは少なくなる。

10.外国人との養子縁組

 高齢者でも働けるようになれば、経済的に余裕ができる。そうなると、養子縁組が盛んになるかもしれない。
 外国人労働者の定着や治安維持にも、日本人との養子縁組を奨励するかもしれない。
 自動翻訳機能の進化により、誰でも外国人とコミュニケーションを取ることが可能になる。そして、高齢者の国際結婚も増えるかもしれない。初婚は日本人と、高齢婚では外国人を選ぶことにより、異文化体験ができる。
 早急な移民増加は社会を混乱させるが、養子縁組をして、日本人として教育していけば、より摩擦は軽減されるに違いない。それにより、ゆるやかな多民族国家になっていくのではないか。

*有料メルマガj-fashion journal(390.391)を紹介しています。本論文は、2019.5.13~5.20に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。 

令和に起きることを予測できるか? j-fashion journal(390)

1.センサーとAIによる自動化

 令和の時代は、センサーとAIによる様々な自動化が進むだろう。自動車の運転だけでなく、電車の運転も自動化される。路線バスも無人化が進む。
 現在、問題になっている高齢者の自動車事故もセンサーと自動運転のシステムにより、アクセルとブレーキの踏み間違いや逆走も防止策が取られるだろう。
 ルーチンワークも自動化される。単純な事務作業はなくなるだろう。
 「昔は一台のコンピュータに人間が一人ずつ張りついていたのよ」と言われる時代が来るに違いない。
 昔は製糸工場でも織物工場でも一台の機械に一人の工員がついていたものだ。それと同じことがホワイトカラーの分野でも起きるのである。
 
2.農業テック、漁業テック

 仕事は都心の会社で行うものというスタイルが崩れるだろう。事務作業が自動化されれば、仕事の内容も変わるからだ。
 日本は製造業から、安心安全な高級食材を輸出する国に転換するだろう。漁業も農業もドローン、センサーとAIの活用により、農業テック、漁業テックが進む。一次産業の再構築は大きなビジネスチャンスを生み出す。漁業も農業と同様に養殖による安定した収入が可能になり、水質や餌のコントロールは自動化が進む。
 天然の魚はより高級な食材として、これまで食用とされなかった魚も次々と開発される。
 農業も漁業も更なるブランド化が進み、流通も再構築され、高度なサービス業と観光業との連携が進む。
 
3.自給自足支援ビジネス 

 安心安全を追求していくと、自給自足生活を理想と考えるようになる。しかし、自給自足生活を実践するには、様々なスキルが必要になる。それを支援するビジネスも出てくるだろう。また、ベランダだけではなく、室内の空きスペース、以下の周囲の空間でも植物を栽培するための支援も可能になる。
 工場型の農園も増えるが、家庭型の農園も可能になる。友人同士が作物を交換するようなコミュニティも生まれるだろう。
 
4.多国籍社員のいる中小企業

 自動翻訳の精度は着実に上がっている。ポケトークから始まり、SNSの自動翻訳機能も使える。自動翻訳機能付きのワイヤレスイヤホンも開発されそうだ。
 AIの進化により、自動翻訳の精度も格段に向上するに違いない。
 自動翻訳が進めば、異なる言語の人達が、全員母国語で会話すれば良いことになる。
 これが進めば、中小企業でも多国籍の社員を採用できるし、それによってグローバルなビジネスに進出することも可能になるだろう。
 特に、伝統工芸の分野で言語の壁がなくなれば、技術を継承する後継者としても期待できる。
 
5.一人一台アシストロボット

 AIスピーカーにモニターが付くようになった。スマホに搭載されたAIも性能が上がっている。秘書の機能を持つAIソフトもある。
 これが進化してくれば、個人用のデータを集積し、個人の考え方を理解するAIアプリが登場するだろう。それを10年単位で使い続けることにより、膨大なデータが収集され、真の意味でパーソナルAIが育成される。
 更に、卓上型ロボットと連携し、表情と身振り手振りが付くようになるだろう。音は、スピーカーから流しても良いし、ワイヤレスのイヤホンから流しても良い。
 ロボットとクラウドAIが連携すれば、ロボットがいない場所でも様々なコミュニケーションが可能になる。

6.ロボットパートナー

 「中国で11万円のAI搭載ラブドールが発売」というニュースが飛び込んできた。体温は37度に設定されている。触れば柔らかく温かい。そして、AIによる音声認識で会話ができる。
 これまでは二次元のアイドルに恋していた人も、三次元の恋人に乗り換える人も出てくるかもしれない。
 ベータ対VHSというビデオテープの規格戦争は、アダルトコンテンツが成否の鍵を握った。AI戦争もアダルトコンテンツが鍵を握る可能性もある。
 現在は女性型ロボットが中心だが、男性型ロボットのニーズも高いだろう。こうなると完全に外界と断絶した引きこもり生活も可能になるかもしれない。AI搭載の柔らかく温かいロボットと会話し、セックスする生活。それが普及すれば、結婚制度のあり方も変わるかもしれない。
 
7.見えないスマホ

 平成の時代に生まれ、発展したスマホも、令和の時代に姿を消すだろう。
 画像はメガネ型モニターで確認してもいいし、スマホ本体の機能はスマートウォッチに吸収することも可能だろう。ゲームを楽しみたいなら、ゴーグル型端末も良い。スマホは機能を特化した製品に分解され、様々な端末が開発されるに違いない。
 時計とメガネとイヤホン。これらのいずれかにスマホは吸収され、それぞれが連携する。顔認証技術が進化すれば、おサイフケータイ機能も必要ない。その代わり、全ての人々のデータは管理され、蓄積される。
 ここまで来ると、利便性を追求するのか。それともデジタルを捨てて、アナログに生きることが良いのか、という議論が出てくるに違いない。デジタルは環境に埋め込まれ、意識されることがなくなるのではない。一見するとアナログ時代と変わらないが、見えないデジタル技術が生活をサポートするようになるだろう。
 
8.アナログ回帰

 デジタルが進化すると、デジタル特有のカドが取れて、滑らかな曲線が表現できるようになる。ある意味で、アナログに近づくのだ。
 アナログに近づけば、デジタルとアナログの境界も曖昧になってくる。アナログの良さをデジタルで表現することもできるし、逆にアナログに回帰しようという動きも出てくるだろう。
 アナログ回帰のトレンドは既に表れている。例えば、野球もテレビで観るよりも、球場に出かける人が増えている。音楽もパッケージで聞くだけでなく、ライブやフェスに出かけて五感で感じることが重視されている。
 一方で、3DやVRにより、ライブに近い体験を再現する動きもある。
 アナログの楽しさは、コミュニケーションの楽しさに通じている。デジタルも十分なコミュニケーションが伴えばアナログに近づくと言えるだろう。
 
9.デジタルシルバー

 デジタルネイティブとは、学生時代からインターネットやパソコンのある生活環境で育った世代、70年代後半以降に生まれた世代とされる。令和元年の時点で40歳前後。30年後には70歳前後となる。この世代がデジタルシルバーになるだろう。
 令和になり、シルバー世代もスマホを使う人が増え、ネット通販で買い物する人も増えてきた。今後30年で、ネット通販も当然になり、更に現在の若者のようなライフスタイルを、シルバーとなっても体験するに違いない。
 シルバー世代もゲームをして、ラップを歌い、ダンスをする。自分の健康もスマートウォッチやトイレのセンサーからデータを収集し、管理するだろう。オタクシルバーも元気に活動し、レジェンドと呼ばれるだろう。
 デジタルに親しんだシルバーは、働こうと思えば、高齢になっても働くことはできる。逆に高齢だからという理由だけで、できないことは少なくなる。

10.外国人との養子縁組

 高齢者でも働けるようになれば、経済的に余裕ができる。そうなると、養子縁組が盛んになるかもしれない。
 外国人労働者の定着や治安維持にも、日本人との養子縁組を奨励するかもしれない。
 自動翻訳機能の進化により、誰でも外国人とコミュニケーションを取ることが可能になる。そして、高齢者の国際結婚も増えるかもしれない。初婚は日本人と、高齢婚では外国人を選ぶことにより、異文化体験ができる。
 早急な移民増加は社会を混乱させるが、養子縁組をして、日本人として教育していけば、より摩擦は軽減されるに違いない。それにより、ゆるやかな多民族国家になっていくのではないか。

*有料メルマガj-fashion journal(390.391)を紹介しています。本論文は、2019.5.13~5.20に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。 

平成元年に予測できなかったこと j-fashion journal(388)

1.平成元年に起きたこと

 平成元年は1989年。その年に起きたことを振り返ってみたい。
 1月7日に昭和天皇が崩御され、翌8日に平成の年号が発表された。今回のような晴れやかな改元ではなく、喪服に身を包んでの悲しい改元だったことを覚えている。
 2月14日、グローバル・ポジショニング・システムに必要なGPS衛星24機が地球周回軌道に投入される。これが後に、カーナビやポケモンGOにつながっていく。
 3月2日、欧州経済共同体加盟12カ国が、20世紀末までにフロン類の生産を禁止することで合意する。オゾン層の破壊という新たな環境問題が提起され、地球単位の環境保護という概念が生まれた契機になった。
 4月21日、 任天堂の携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」(GAME BOY) が日本で発売開始される。持ち歩いてゲームをするというスタイルは、その後スマホの登場で更に加速された。
 6月4日、北京で天安門事件が起きる。一時的に日本企業はポスト中国に動いたが、結局中国生産に回帰した。
 6月18日、ミャンマーの軍事政権が同国の英語国号を「Burma」から「Myanmar」に改称した。当時は、チャイナプラスワンでミャンマーが注目されることなど想像もしていなかった。
 10月31日、三菱地所がアメリカのロックフェラー・センターを買収。バブル経済を象徴する事件だった。当時は、日本の地価の合計でアメリカが二つ買えると言われていた。
 11月9日、中国共産党中央委員会第5回全体会議で鄧小平中国共産党中央軍事委員会主席の辞任と、江沢民中国共産党総書記の就任が発表される。ここから中国の経済発展は一段と加速し、2010年にはGDPが日本を抜き、世界第二位の経済大国となった。2017年には、日本の二倍以上の規模に成長した。
 11月10日、ベルリンの壁崩壊。東欧諸国が次々と共産党政権が崩壊し、民主化が進んだ。
 12月3日、アメリカのジョージ・H・W・ブッシュ大統領とソ連のミハイル・ゴルバチョフ最高会議議長がマルタ島で会談し、冷戦の終結を宣言した。
 12月29日、日経平均株価が史上最高値の38,957円44銭(同日終値38,915円87銭)を記録した。ここがバブルの絶頂期である。
 
2.バブル崩壊以降の長期低迷

 バブル絶頂期の平成元年から、バブル崩壊の平成3年までは絶好調が続いた。バブル崩壊後もその余勢で3~4年は消費も堅調だったように記憶している。
 そして、そのまま右肩下がりに転じていく。それでも、当時は数年で景気回復が可能だと考えられていた。
 実際にはバブル景気が異常だったのだ。そして、パブル崩壊の経験は日本企業、日本人を消極的にしていった。リストラが始まり、新卒採用が制限され、企業に対する忠誠心ば瓦解していった。
 それまでの日本企業の強みのほとんどが失われ、その代わりとなる新しい強みは見つからなかった。
 残念ながら、平成元年の時点ではここまで日本経済の低迷が続くとは誰も予測できなかったのである。
 
3.百貨店の衰退

 バブル崩壊後、ファッション業界には二つのブームがやってきた。
 一つは、中国生産による激安ブーム。もう一つは、円高で安くなったラグジュアリーブランドブームである。
 中国生産を活用して最も破壊的なMDを展開したのがユニクロだった。ユニクロの価格設定のおかげで、アパレル商品の価格水準が大幅に低下。特に、ボリュームゾーンの専門店チェーンは価格競争に破れて淘汰された。最早、問屋から仕入れる形態では勝負にならなくなったのだ。
 百貨店の特選売り場で販売されていたラグジュアリーブランドは百貨店のファサードを占領するようになった。百貨店の顔はラグジュアリーブランドとなり、ラグジュアリーブランドが集客した顧客は百貨店内部を回遊することはなかった。
 やがて、百貨店はユニクロをテナントとして誘致するようになった。
 百貨店自主MDの挑戦は結局失敗した。最終的に、百貨店はギンザシックスのようなテナントビルとして生き残るか、インバウンドの顧客を対象に観光拠点として生き残るしかないのかもしれない。
 平成元年の時点で、三越と伊勢丹が合併したり、西武とそごうが合併し、更にイトーヨーカ堂グループの傘下に入ることは予測できなかった。

4.ファッション市場の衰退

 平成になって、アパレルの主役は問屋から小売店へと交代した。問屋と小売店のコストを価格に乗せることは難しくなり、小売店が商社を通じて中国の工場から商品を仕入れることになったからだ。
 世界的にもファッション市場は動いていった。先進国から周辺の新興工業国に生産拠点が移り、先進国の製造業は空洞化した。そして、豊かになった新興工業国には膨大な中間層が生まれ、ファッションを楽しみたいというニーズが高まった。そこで登場したのが、低価格でも素早くトレンドを取り入れた商品を展開したファストファッションである。
 更に、先進国ではファッション離れが進んだ。インターネットの通信費、パソコンや携帯、スマホに支出する金額が増え、ファッションはファストファッションで十分と考える人が増えたからだ。
 海外生産の低価格商品が普及し、商品の単価が下落した。物価の下落は、市場を縮小させ、給料も上がらなくなった。低価格商品しか売れなくなり、ますます価格は下落し、市場が縮小するというデフレスパイラルが始まった。
 単価の下落した分を数量でカバーしようとしたが、それが在庫過多となり、衣料品の大量廃棄は資源の無駄遣いとして批判されるようになった。

5.SNS普及とメディアの変化

 日本でインターネット接続が始まったのは、平成4年(1992年)だった。世界で初めてWEBが作られたのは平成3年(1991年)、日本で初めてWEBが作られたのが平成4年(1992年)。誰もが出版社、放送局を持てる時代が到来したと言われた。
 と言っても、WEBは企業が主体であり、個人の利用はブログの登場を待つことになる。平成14年(2002年)頃から、日本でブログが急速に普及する。
 ツイッターのサービスが始まったのは平成18年(2006年)、平成20年(2008年)に日本語版のサービスが始まった。
 フェイスブックは平成16年(2004年)に創業。平成20年(2008年)に日本語版のサービスが始まった。
 SNSの普及は世界を大きく動かした。平成22年(2010年)12月18日に始まったチュニジアのジャスミン革命から、アラブ世界に波及した「アラブの春」はSNSの果たした役割も大きかったと言われている。
 平成26年(2014年)に独立を宣言したISILも、インターネットなどによるプロパガンダを行った。WEBやSNS、動画共有サイトなどを利用して、世界各国から若者を兵士として募った。
 アメリカのトランプ氏もSNSを最大限に活用し、大統領になった。彼は既存のメディアをフェイクであると断じ、ツイッターを通じてダイレクトに情報発信を行っている。
 SNSの普及により、新聞、雑誌、テレビなどのメディアは影響力を弱め、淘汰の危機に瀕している。ビジネスも政治もファッションもSNSを軸に回っているのだ。

6.オタク文化がメジャーに

 オタクという言葉は、70年代に生まれた昭和の言葉だ。もちろん、平成元年にもオタクは存在している。しかし、当時はオタクと聞くと、「社会に同調できず、特定の仲間とアイドルやマンガ、アニメなどについて、電子掲示板等で語り合う人」、「健全な男女の交際ができない大人になれない精神的に未成熟の人」「変態に近い気持ち悪い人」というマイナスのイメージが強かった。
 それが平成の間に熟成し、グローバルに拡大した。海外の人にとって「オタクは一つのことに強い興味を持つ純粋な人」であり、自ら「私はオタクです」と胸を張る人も少なくない。
 また、キリスト教的価値観、西欧的価値観でタブーとされている暴力やロリータ趣味、ゴスロリなどを認める日本をクールと評価するようになった。
 元々、日本国内でもマンガ、アニメ、ゲーム、フィギュア、ストリートファッション、ビジュアル系ロックなどは、良識ある大人からは眉を顰められていた。しかし、海外から評価されて、次第に文化として認識されるようになった。
 最早、オタク文化は日本を代表するポップカルチャーであり、その市場は拡大し続けている。同時に、マンガやアニメにより日本を知り、日本に憧れる外国人も増えている。マンガ、アニメは日本文化を紹介するメディアとしても機能しているのだ。

7.ゲームカルチャーとeスポーツ

 任天堂フアミコンが発売されたのは、1983年、昭和58年である。それ以前の任天堂は花札のメーカーとして知られていたが、ファミコン以降、世界市場に進出し、世界のトップ企業に成長した。
 ゲームは遊びではなく、ストーリーを体験するメディアとなり、ゲーム体験は同世代に共通する文化体験となっている。ゲームは、小説や映画の機能を獲得したとも言えるだろう。
 シューティングや格闘技のゲームは、反射神経と運動神経を競い合うものでもあり、それがeスポーツへと発展した。今後も更なる発展を遂げるだろう。瞬発力を競うゲーム、持久力を競うゲーム、記憶力、表現力など、人間が持つあらゆる機能を競い合うことが可能になるからだ。
 令和の時代に、オリンピック種目になることは間違いないし、eスポーツだけのワールドカップが開催されるかもしれない。
 
8.日本再発見とインバウンドの増加

 平成元年の頃、日本はバブル経済の真っ只中で、世界中の不動産、美術品、ブランド商品を買い漁っていた。当時の日本、日本人は傍若無人の成り金として嫌われていた。
 経済成長が止まり、バブル崩壊を経験し、日本人が謙虚さを取り戻した頃から、日本人の若者の評価が変わってきた。お金持ちで、礼儀正しく、センスの良い東洋人。それが日本人だった。
 1970年代、80年代生まれの世界中の若者は日本のアニメを見て育った。日本の放映が終わったアニメ作品を格安で海外に輸出したためだ。
 アニメの中には日本の風習、文化、生活が紹介されていた。日本のお弁当、ランドセル、どら焼、コタツ、押し入れなどをアニメで知り、そこから、日本語や日本の音楽に興味を持ち、大人になってから日本に旅行するようになった。
 更に、寿司などの日本料理人気や円安の為替も追い風になった。中国、タイ、韓国、台湾などの中間層が増加し、日本へのビザ取得条件も緩和された。日本に来てみると、日本人は親切で、日本の都市は清潔で安全だった。日本で販売されている製品は品質が良く安価だった。それらがインターネットを通じて、拡散し、加速度的にインバウンドが増えた。
 平成元年の頃は、アウトバウンドが主流であり、インバウンドは珍しかった。それが逆転するとは予想もしていなかった。 
 
9.スマホとクラウドの進化

 平成元年にはインターネットもなかったのだから、その後のスマホやクラウドについて予測できなかったのも当然だろう。
 スマホの凄さは、個人に高性能のデジタル端末を安価で配布したことだ。これにより、市場の分母が一気に広がり、アプリ、広告、ゲーム等のビジネスが発展した。
 加えて、ネット回線が高速になり、クラウド上のサーバーの活用が広がった。音楽や映像のダウンロードも可能になり、パッケージ販売からダウンロード販売へと、音楽ビジネスが大きく変化した。
 高性能のデジタルカメラを一般の生活者が持ち、様々な画像がSNSにアップするようになり、新たなメディアが誕生し、旧来のメディアの存在意義が問われた。
 更に、5G回線が普及すれば更なる革新が生まれるに違いない。最早、スマホは生活インフラである。

10.ICT分野における日本と中国

 平成元年の時点では、中国生産は繊維産業が中心だった。日本はICT分野でリードしており、付加価値の低い製造業は中国に譲っても良いと考えていた。
 現在は、繊維関連商品、靴、玩具、楽器等に加え、携帯、スマホ、パソコン、サーバー機器などのICT関連商品の生産でも世界一であり、既に世界の工場として確固とした位置を占めている。
 アメリカは、中国がICT分野でアメリカをリードするのを恐れており、様々な制裁を課しているが、現実には中国の部品や製品がなければ米軍の装備も調達できないところまできている。
 日本の技術は高性能であってもコストが高く、国際競争力がない。そのため、あらゆる分野で中国にリードを許している。
 自動車産業は日本が世界をリードしているが、電気自動車の時代になるとそれも変わるだろう。ドローン、3Dプリンター、自動車の自動運転技術など、新しい分野では中国がリードしているのだ。
 平成の時代に日本はGDPで中国に追い越された。そして、最新分野でもリードを許そうとしている。これも全く予測できなかったことだ。
予測できてもできなくても、現実は目の前に存在している。次の時代は現在の現実の上に積み重なっていくのだ。

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キカクノキ塾 j-fashion journal(387)

1.元々、いい加減なコンセプトでしょ?

 私は常に新しいプロジェクトに取り組んでいます。最近は、会社から依頼されることより、こちらから新プロジェクトを提案し、そこから契約にこぎつけるというケースが増えました。昔なら、待ってるだけで相手から新たなプロジェクトが舞い込んできたのですが、時代も変わったものです。
 本来なら、時代が変わっているので、新しいプロジェクトのニーズは高いはずです。余裕のある会社は新規プロジェクトに取り組んでいますが、繊維アパレル業界では、新しいプロジェクトに取り組もうという気運も欠如しています。新しいことに取り組んだ経験もなく、今の仕事だけやっていても、給料は保証されています。新しいプロジェクトに関わって失敗すれば、現在の仕事さえ失うかもしれません。そんなリスクを冒したくないのも当然といえば当然ですが。
 最近は、繊維ファッション業界の企業ではなく、周辺の業界や個人から新しいプロジェクトの相談を受けることが多くなりました。
 嬉しいことではありますが、とにかく、何をどのように進めたらいいのか分からない人が多いのです。こちらは百戦錬磨ですが、相手は素人。なかなか言葉も通じません。
 そこで同じく百戦錬磨の友人を呼んで会議をするのですが、プロ同士はアウンの呼吸で話してしまいます。思いつきの与太話のような内容の中で、現在の状況やクライアントの関わり方やビジネスモデルをどうしようか、を確認していきます。
 その間に、ジャストアイディアの面白話を出し合うのですが、それらも荒唐無稽の話ではなく、互いの背景を知っているので、実現の可能性があることも分かります。しかし、初めてきく人には何のことだか分かりません。全体がいい加減な話に聞こえるというわけです。
 こちらにしたら、かなり練り込まれたコンセプトも、それを聞いている人には「いい加減なコンセプト」に聞こえてしまいます。
 本来ならば、素人の人に対して、一つ一つの言葉の意味、会話の内容を事細かく解説しなければなりません。でも、そんなことをしていたら、議論が白熱しないし、頭の回転が止まってしまう。だから、現場で解説することはできません。

2.企画のキから解説する

 そこで、どこかで企画のキの字から解説しなければならないと思っています。
 どんな企画でも、最初に、プロジェクト全体の目的、ビジョン、参加するメンバー構成、ざくっとしたスケジュールと予算規模などを確認しなければなりません。その上で、面白いアイディア、ユニークなアイディア、誰もやったことがないアイディア、今やったら成功しそうなアイディアを出します。
 アイディアなしにプロジェクトを始めるのはとても危険です。ありふれた内容では、話題にもならないし、期待もされません。売り込むのも大変だし、プロモーションのコピーさえ作れません。
 最初が肝心です。正直に言えば、その最初の段階だけでも、プロを参加させてほしいと思います。そこで、「これなら行けそうだ」というラフプランを作れれば、その後の詳細な予算やビジネスプランを社内の頭の良いスタッフに任せることもできます。
 最初の段階は、頭の良い人だけでは駄目です。頭が良い人でも、アイディアは出てこない。むしろ、少しばかり頭がおかしい人を入れるべきです。企画のキという意味は、奇人のキでもあり、感情に訴える気でもあります。
 
3.具体論じゃないと始まらない

 企画や発想に関する書籍は数多く存在しますが、その内容は抽象的な概念の説明に終始することが多いようです。具体的な内容は、企業が公開を嫌がるので掲載できないことが多いからです。
 しかし、抽象論だけでは、企画は立てられません。消費者意識の変化、ビジネス環境の変化、その会社が持っている資産や能力、取引先との関係等々の具体的な情報がなければ企画立案はできないのです。具体的な事案の中にこそ情報があります。そして、具体的な課題を解決することが、企画の目的です。
 これはどんなことにも共通しています。職場の改善、商品開発、イベント企画、ブランド企画、新しいショップ開発、新業態開発、人材育成の企画等々。すべては具体的な課題が提示されないと考えられません。
 プロの企画マンは課題を必要としています。課題がないと思考停止に追い込まれます。それを防ぐために、誰からも仕事が与えられなかったとしても、常に世の中の課題を見つけて、その解決策を考える訓練を続けています。
 新規事業の失敗を見るたびに、「最初に相談してほしかったな」と思います。私に相談しても必ず成功する保証はありませんが、失敗するポイントや可能性は分かったと思います。もちろん、「このままでは失敗しますよ」と言っても信じない人も多いし、偉い人がかけた号令に逆うのも困難です。それは外部の人間の仕事です。
 日本の企業の多くは、予算の立案と企画の立案を混同しています。「○年後に何十億の売り上げを達成する。そのためにこれだけの投資をする。社内にも専属のチームを作る」ここまでやれば、「あとは担当者に任せて、尻を蹴飛ばせばいい」と考えてしまうのです。
 この段階には企画立案が何もありません。企画がないのに、目標だけ設定してプロジェクトがスタートする。凄い話です。
 担当者はアイディアを評価するのも苦手です。「ろくでもないアイディア」でも偉い人が言えば、それに従います。そして失敗します。

4.キャスティングが成功の鍵

 ハリウッド映画で銀行強盗をする場面を見たことがあると思います。そこでは、まずキャスティングが問題になります。金庫破りの名人、運転の名人、ハッキングの名人、銃や格闘の名人など。これができるのは、コイツとコイツだ。プロジェクトを成功させるには、刑務所から脱獄させてでも、人材を揃える。それでなければプロジェクトは成功しないと分かっているのです。
 一方、日本の企業はどうでしょう。そもそも、外部からスカウトする発想がありません。どんなことも社員にやらせます。もちろん、社員の中にプロジェクトを成功させるスキルを持った専門家がいれば問題ありません。それには、癖はあっても多様な専門家を採用できる独自の採用方法が必要になるでしょう。そんな入社試験を行っている会社なら、社員だけでプロジェクトを推進できます。しかし、多くの会社は、決められた仕事を素直に行う人を優遇します。上司に逆らうような人は敬遠されるのです。素直な人に新しいプロジェクトを任せて、成功するのでしょうか。
 中国市場進出でも、多くの事例を見てきました。中国のことを勉強もせず、中国語も話せず、中国人に親戚も友人もいない、中国が好きでもない人を単身で中国に送り込んで、プロジェクトを任せる。
 予算だけ与えられて、本人も不安でいっぱい。そんな時に、親切な中国通の日本人や、日本語が話せて中国共産党の幹部ともつきあいがある中国人が現れます。あるいは、日本語が話せて一流大学を卒業しながら、なぜかスナックで働いている美人の中国人女性と出会います。
 これで騙されない方がおかしいと思いませんか。
 新規プロジェクトを始めるならば、最初にどんな人材が必要かをリストアップしましょう。そして、プロジェクトリーダーを決める。あるいは、スカウトする。リーダーを中心に、必要な人材を集めチームを作ります。これがスタート地点です。
 多くの日本企業のプロジェクトの失敗はキャスティングの失敗です。できない人にプロジェクトを任せて、結果的に失敗する事例が非常に多いのです。
 
5.具体的な問題解決をするキカクノキ塾

 そんな企業のみなさま、特に担当者のみなさまの課題を解決するのがキカクノキ塾です。
 ここでは、企画を基本から教えるだけでなく、具体的な事例を取り上げて、その解決策を考えます。
 塾に参加する人は、課題を持参していただきます。起業しようと思っている人でもいいし、企業内で新規事業を任されているプロジェクトリーダー、経営に悩む中小企業の社長、地域起こしを考える自治体の担当者等々のみなさまには必ずお役に立てると思います。
 基本的に塾内で聞いたことは秘密厳守です。受講生には機密保持契約書に署名していただきます。
 その上で、私も含めて、塾生みんなで課題解決策を考えていきます。そして、次回までに行うべきことをリストアップします。そして、次回、進行の状況を発表していただきます。補足はチャットで行っても良いと思います。
 これを繰り返すことで、塾生の企画スキルは向上します。トレーニングには、多くの課題に取り組むことが必要です。通常の会社内ではそれを経験することかできませんし、相談相手もいません。
 企画に関するノウハウを取得し、トレーニングを積むことがキカクノキ塾の目的です。そして、新規プロジェクトを数多く立ち上げ、成功させ、世の中を面白くしていきましょう。

*有料メルマガj-fashion journal(387)を紹介しています。本論文は、2019.4.22に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。  

環境問題と個人の生活 j-fashion journal(386)

1.企業の利益と個人の幸せ
 
 日本で就職すると、個人より会社を優先するように周囲から求められる。個人より会社は上位にあり、上位の利益を優先せよ、ということだ。
 ところが、企業の利益を守るために、社員が情報の隠蔽や偽証をすると、企業より上位の国が損害を受けることもある。そして、個人が国から処罰を受ける。企業の利益を守るために、個人を犠牲にしたにも関わらず、更に上位の国が個人を罰するのだ。
 もし、個人の利益を優先するなら、国の法律を犯すのはリスキーだ。しかし、社員が国のために企業に損害を与えることも許されない。社員である以上、所属する企業と敵対すれば昇進も昇給も望めない。というより、企業から追い出されるに違いない。
 この問題を解決するには、二つの方法がある。第一は、企業が国を裏切らないこと。犯罪を犯さないこと。
 第二は、個人が企業に依存しないこと。退職しても、すぐに、次の会社に就職できて、法律を遵守したことがプラスに評価されれば問題はない。あるいは、会社に所属せずに個人で仕事ができれば問題ない。
 更に、個人と企業と国の利益に合致していても、地球全体で考えるとマイナスになる場合もある。例えば、環境破壊だ。国は企業が海外進出先で環境破壊しても問題にしない。進出先の新興国も経済成長を優先し、環境基準も甘い。そして、地球は汚染される。
 これをすべて解決する方法はあるのか。
 
2.無限の成長を望むのは罪か

 企業の理想は無限の成長だ。無限に成長するためには、競合他社を潰し、そのビジネスを吸収していく必要がある。競争原理で動いていくと、最終的には数社しか生き残れない。しかし、独占が進むと、独占企業だけが利益を搾取し、市民の利益を圧迫してしまう。そこで独占禁止法が登場する。
 競争を禁止すると、今度は個人も企業も社会も停滞する。ルーチンワークだけに終始し、イノベーションも生まれない。地球が許容する一定の枠組みの中で競争することが必要だ。もし、一部の国や企業だけが成長を続ければ、その他の国や企業は利益を得ることができなくなり、貧困や飢餓を生み出すだろう。
 そもそも、人口が無限に増え続ければ、どこかで限界が来る。ここでも、地球規模に合わせた制限が必要になる。
 これらの制限を強権的に発動すれば、人々は人権侵害を訴えるだろう。しかし、成長だけを追求すれば、人間の生存が危うくなる。
 同様のことは、個人の生活にも共通する。食欲に負ければ肥満し、最終的には命を縮めてしまう。そして、ダイエットを行う。
 ダイエットを成功させるには、自己管理が必要である。しかし、自己管理を強制することはできないのだ。これは個人、企業、国にも共通している。
 
3.成長段階と環境保護

 人類の歴史は、貧しい時代からスタートして、次第に産業が発展し、人々の生活も向上してきた。人口が少なかった頃は、自然が持つ浄化機能で十分だった。環境問題は存在しなかったのだ。
 世界は同時に発展したわけではない。最初に発展した先進国で環境問題が発生し、次第に新興工業国にも拡大していく。やがて、環境問題は地域的な問題から地球規模の問題に変化していった。
 どの地域も、最初に経済発展を目指し、経済発展の結果、環境問題が起きる。そして、環境問題への取り組みも、経済発展の段階によって異なる。
 従って、先進国と新興国を同じ基準で環境保護を強制するのは難しい。しかし、既に環境問題は地球規模に達しており、猶予はできない。
 我々は今、ここにいる。問題は分かっている。しかし、解決策は難しい。経済成長も捨てることはできない。しかし、このまま突き進めば、人類全体の生存が危うい。
 そして、経済格差が進み、貧困が増える中で、我々個人は自分の生活を守らなければならない。その時に環境問題を考える余裕はあるだろうか。
 
4.我々が目指すべき生き方

 個人の生活で環境を考える場合、なるべく資源やエネルギーを使わず、格差が広からないような生活を心がけることだろう。
 例えば、大量生産大量販売システムから外れる。大量生産大量販売が可能なのは、資本力のある大企業である。この仕組みに飲み込まれると、大企業だけが反映し、中小企業や零細企業は淘汰される。そして格差が拡大する。
 大手スーパーよりも、地元の商店を選ぶ。大手スーパーでも、産直の商品を選ぶ。
 気を付けたいのは、品質が良くて安い商品という理由で、商品を選ばないことだ。むしろ、外見よりも中身を重視する。大きさや形が不揃いだったり、色づきが悪くても、味や栄養が同じならば、それらを食べるようにしたい。廃棄されるリスクを考えるならば、賞味期限に近いものを選ぶことも重要だ。必要以上に新しいものを選ぶことは、結果的に廃棄物を増やすことになる。
 社会活動、ボランティア活動、社会的な企業に参加する。あるいは、環境や人権を守る企業を支持すること。買い物というのは、所有するための手段だけでなく、企業を評価する行動であることを認識したい。
 身の丈に合った生活スタイルを確立する。なるべく資源を使わずにスケールダウンした生活を心がける。余分なモノは買わないし、買ったものは長く使う。最近流行している断捨離の精神も重要だ。
 プライスレスなモノやコトを大切にする。貨幣経済に依存した楽しみではなく、内面を豊かにすることを考える。
 こうした生活スタイルは、若者よりも高齢者に向いているだろう。今後の時代は、高齢者が新たな消費スタイルを構築していくべきである。効率より真の豊かさと個人の幸福を優先したい。

*有料メルマガj-fashion journal(386)を紹介しています。本論文は、2019.4.15に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。  

西日暮里でニット講座を j-fashion journal(385)

1.アパレル起業はニットから始めよう
 
 アパレルで起業するなら布帛よりニットだ。私は昔からそう考えている。
 布帛の商品を作るには、資本力が必要だ。例えば、オリジナルの色をつけたいと思っても、染色ロットがある。
 ニットなら好きな糸を選べば、オリジナルの色の商品ができる。1キロでも染色することが可能だ。
 布帛製品を生産するにはミシンが必要だ。手編みなら編み棒あればよい。
 ニットは簡単に様々なアイテムを作ることができる。プルオーバー、カーディガンだけでなく、スカートやパンツ、ワンピースも作れるし、帽子やバッグ、アクセサリーを作ることもできる。
 何よりも、ニットデザイナーの数が少ない。ファッション専門学校の卒業生はほとんどが布帛の製品を作る。布帛とニットでは全く作り方が異なる。ニットの企画や生産について知る人が少ないのである。
 数が少なければ、競争が少ない。知名度を上げるのも有名になるのも比較的容易だ。
 
2.縫製工場とニッターの違い

 縫製工場とニッターとビジネスの形態が異なる。日本の縫製工場は、アパレル企業が所有する生地を預かって、一枚あたりいくらかの縫製工賃を受け取る。
 ニッターは糸を仕入れて、自社でニット製品に加工して製品を販売する。
 つまり、縫製工場で縫製してもらうには、生地を仕入れなければならないのだ。生地の仕入れは反物(50メートル)で仕入れるのが一般的だ。
 ニッターなら製品で仕入れることができる。この違いはお金の問題だけではない。手間の問題なのだ。製品の原価管理は非常に煩雑な作業である。
 もし、布帛を作るなら、海外の縫製工場の活用を検討した方が良いだろう。生地や付属を自社で仕入れるところが多いし、製品単位で仕入れることができる。
 
3.布帛製品とニット製品の違い
 
 生地はタテ糸とヨコ糸で構成される。基本的にタテにもヨコにも伸びない。
 ニットはループで構成される。タテにもヨコにも伸びる。伸縮性があるのだ。
 伸びない布帛は、正確な寸法で作ることが基本だ。その点、ニットと曖昧である。寸法も置き方で変わるし、仕上げの時に軽く引っ張っただけで変わる。
 布帛製品は正確なパターンを基に生産されるが、ニット製品は指示書の寸法を基に生産される。最近では、寸法も出さずに製品の写真を持ってきて、「こんな感じでお願いします」と発注することも少なくない。ニッターは写真を見て、寸法を想定して生産することができる。
 ニット製品の企画は、テキスタイルデザインの要素が強い。糸を選び、色を選び、編み地を選ぶことが重要だ。服の形は一般的でも差別化ができる。
 もちろん、逆のアプローチもある。色を絞り、編み地も絞り、形で勝負する。そんなニットも魅力的だ。
 布帛は布をまとう服だが、ニットは糸をまとう服だ。糸から作れる分だけ、ニット製品の方がバリエーションが多い。それだけに、差別化も容易だ。
 
4.アクセサリー的なアイテム

 布帛に比べるとニットはカジュアルであり、アクセサリー的でもある。ニット製品は布帛製品よりも自由な色を疲れる。コートやジャケットて派手な色は難しいが、ニットならどな色でも使える。ある意味で、服と服飾雑貨の中間的なアイテムといえる。
 ニットは、コーディネートの中でアクセントカラーの機能も果たす。地味な布帛アイテムに派手なニットを合わせることは可能だが、派手な布帛に地味なニットを合わせるのは難しい。
 また、糸の特徴がダイレクトに伝わるので、高級な糸を使えばその製品も高級になる。カシミヤやアルパカなどの獣毛を自由に使えるのもニットの醍醐味だろう。布帛で高級な商品を作るには、品質の高い生地を扱っているテキスタイルメーカー、高い技術を持った縫製工場、それらを活かせるデザインなどが揃わなければならないが、ニットはもっとダイレクトに素材の力が生きる。
 
5.ニッターとのコミュニケーション

 ニット製品を量産するには、ニッター(ニット工場)とのコミュニケーションが欠かせない。ニッターは編み機を所有し、それを稼働させなければならない。ニット製品の注文を待っている。
 通常、ニットアパレルは最初にサンプルを生産し、それを展示会にかけて小売店から注文を取る。基本的には受注生産である。
 小売店ではなく、顧客から注文を取ることも可能だが、ある程度のまとまった受注ができないとビジネスが成立しない。顧客を対象にした受注イベントも有効だろう。
 イベントの集客には、継続した情報発信が重要である。デザイナーの個性、製品の特徴等を常に発信し、ファンを獲得することだ。
 ニット製品の企画は、編み機と糸に依存する。ニッターが所有している編み機を理解し、生産設備に見合った商品を企画しなければならない。あるいは、最初からデザイナーの個性と相性の良いニッターを探すことが重要である。クラフト的なニットデザインを得意としているのに、ベーシックな商品を量産しているニッターでは相性が悪い。ニッターとデザイナーはパートナーである。
 在庫している糸があるのかも確認しなければならない。つきあいのある糸商も確認しよう。
 長期的な取り組みになる可能性があれば、多少の糸在庫は持ってくれるだろう。しかし、一つのデザインだけのために、特殊な糸を使うような要求には応えないはずだ。最終的に糸を残すことにつながり、利益を確保することかできないからだ。

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日暮里繊維街でテキスタイル講座を j-fashion journal(384)

1.ハンガーサンプル、スワッチ見本を読む
 

 アパレルが生地問屋から生地を仕入れる場合、展示会等でハンガーサンプルを見て、生地を選ぶことが多い。
 ハンガーサンプルとは、生地を幅いっぱいに1メートルカットし、紙製のハンガーヘッドを付けたもの。
 生地から洋服を発想する時には、1メートル程度あれば、ワンピース、ジャケット、スカートなどの製品を想像しやすい。あまり小さい生地では服にしたときの姿を想像できないからだ。
 ハンガーサンプルから候補となる生地をセレクトし、スワッチサンプルを請求することから始まる。スワッチサンプルとは、A4サイズの台紙に生地をカットしてピンか、ホチキスで留め、必要なデータを記入したもの。この大きさは、指で風合いを感じる最低限の大きさである。つまり、A4程度の大きさがあれば、生地の風合いを理解できるということだ。それより小さなサンプルは、色を見ることはできるが、生地の風合いは分からない。
 スワッチサンプルに記載してある情報は以下の通り。「規格」は生地幅と生地の長さ。生地幅は国際的な基本がダブル幅で、148~150センチ幅である。織機は基本的にインチで表現するので、58インチ「ゴッパチ」と呼ぶこともある。
 日本国内では、広幅と呼ばれる112センチ幅も多い。44インチ、「ヨンヨン」と呼ばれる。
 最近はほとんど見られないが、一部の裏地などで92センチ幅、36インチ「サブロク」もある。
 生地長は、ほとんどが50メートル。50メートル乱とつくと、「大体50メートルだが反物によってバラツキがあります」という意味になる。
 次に混用率、混率が表記されている。生地の混用率は原料の重量比で表記されるが、スワッチ見本には、経(タテイト)に2/60(ロクマル双糸)、緯(ヨコイト)に1/48(ヨンパチ単糸)のように、経と緯で分けて表記することもあるし、合繊も糸の製品名で記載することが多い。
 記載されている場合もあるし、自分で確認しなければならないのが、納期と価格である。
 納期は、着分納期と原反(現反)納期がある。
 価格は、直接買いつける場合、商社経由の場合等によって価格が異なるので、「どんなルートでいくらか」を確認する必要がある。
 海外では生地の厚みを表現するのに、重量を表記する。糸番手はイレギュラーな太さも多いので表記されないことが多い。日本はJIS規格と番手による原料の相場感があるので、糸番手の表記を重視し、重量は省略することが多い。
 重量は1ヤード(91.4センチ四方)の場合と1メートル四方の場合があるので注意が必要だ。
 
2.生地を読む
 
 スワッチ見本からデータを読み取ることも可能だが、混用率や詳しいデータがない見本もある。
 素材が分からない場合には、外見と燃焼試験等によって類推するしかない。糸を抜いて、ライターで燃焼させると、綿や麻は炎を上げて燃えるが、ウールは独特の臭いがして黒く固まる。ポリエステルやナイロン等の石油原料の合繊は燃える前に溶ける。
 生地を観察する場合、表裏とタテヨコの向きを確認しなければならない。組織的には表裏が同じでも、整理の段階で表はきれいに仕上げられているので、間違えないように注意する。
 生地を観察する場合には、テキスタイル用ルーペを使う。生地の組織と糸密度を数えることができる。
 テキスタイルの糸密度は、通常1インチ(2.54センチ)に何本の糸があるかを数える。経(タテイト)と緯(ヨコイト)で糸の太さや密度が異なる場合があるので、タテとヨコを間違いないように観察し、記録する。
 
3.生地の名称について

 生地の名称は、古典的な素材の名称が基本になり、原材料の名称×組織の名称×加工の名称×イメージ×キャッチーなコピー等により決定される。テキスタイルのパリエーションはあまりにも多岐に渡るため、全ての差別化要素を名称で表現することには無理がある。
 綿の平織では、キャンバス(元は麻の太い糸で厚く丈夫に居られた布)、帆布(和船の帆に使われた綿の厚手の平織)、ブロードクロス(布地に繊細な横畝を表した平織の綿織物、緯が少し太い場合も)、ポプリン(元来は絹と毛の交織の効果な織物。細い横畝のある手触りの良い綿の平織。綿ポプリンが正式名称)、ローン(元はフランスのローン地方のリネン。薄地平織の高級綿布。60~100番手の細糸を使用)、キャラコ(正しくはキャリコ。薄地平織綿織物で、強く糊付けしツヤを出したもの)、ネル(フランネルの略。正式には綿フランネル。平織、綾織で表面を起毛したもの)など。
 綿の綾織(ツイル、トゥイル)では、チノクロス(チーノーはアメリカの軍用に使われる丈夫な綾織綿布。チーノーズはチノクロスで作ったパンツ)、デニム(経に染め糸、緯に白糸を使った綾織の綿織物、デニム製品の代表的なものがジーンズ)など。
 一つ一つ書き出してもきりがないので、この辺にしておきたい。

4.生地の風合いについて

 生地で重要なのは風合いである。布の風合いを見る時、利き手の親指、人指し指、中指で、生地をつかみ、曲げ、表面を撫で、生地の厚み、固さや柔らかさ、弾力、表面の感触等を感じ取る。それらの性能全てを「風合い」という。視覚だけでなく、重さや触感が加わった複合的な評価基準である。
 風合いを表現する言葉をいくつか提示しておきたい。
 基本は、ソフトとハード。ソフトな風合いとは、シルクのように繊維そのものが柔らかく、曲がりやすいこと。あるいは、薄く軽いこと。表面がピーチスキンのように繊細な起毛がしてあり、手触りが柔らかいことなどが複合して感じる。
 ハードな風合いとは、麻のように繊維そのものが固いことや曲がりにくいこと。表面が緻密なこと。あるいは、ツイードのようにチクチクした手触りのものなどが複合的に表現される風合いである。
 ハリ(感)とオチ(感)は、服のシルエットに直結した表現である。ハリは服にした時に張りが強く、タイトで立体的なシルエットが出やすい。オチとはドレープ性であり、身体に布をかけるだけで、引力できれいなドレープが出るような素材である。
 粗野なという意味の「ラスティック」という言葉も使われる。固く、手に刺す感じがあり、粗く織られたというイメージだ。
 ツイーディーは、ツイードのようなという意味であり、表面が粗く、糸が固い感触を指す。
 「コンパクト」という表現も使われる。高密議で表面が緻密なもの。凹凸がある場合も、細かく緻密な凹凸であり、視覚的には平面に見える。

5.生地の後加工について

 生地の付加価値を高めるために、後加工を施すことがある。代表的な後加工がプリント(捺染)と刺繍、キルティングである。
 アナログなプリントは、ロールプリント、スクリーンプリント、手描きプリント等がある。ロールプリントは金属のロールの表面を彫刻し、くぼみに染料は入り、それを布に写し取る。切れ目のない連続模様が可能である。生産ロットは大きく、大量生産に適している。
 スクリーンプリントは、木版画のように一色ずつスクリーンで色を重ねていく。木枠に紗を張り、白く残す部分にフィルムを焼き付け、空いている部分に糊で溶いた染料をスキージでこすりつける。Tシャツのプリントも多くはスクリーンプリントである。
 染料で染める染料プリントと、顔料で染める顔料プリントがある。染料プリントは柔らかく、生地の風合いを活かした加工だが、染料を定着させるための前処理や、布を水蒸気で蒸す後処理が必要である。
 顔料プリントはバインダーで顔料を定着させるので、どうしても生地が固くなる。
 最近は、製版を行わず、フルカラー表現が可能なデジタルプリントが進化している。
 デジタルプリントには、前処理した布に直接染料や顔料を吹きつけるインクジェットプリントと、一度、転写紙にインクジェットで柄を吹きつけ、転写紙と布を重ねてプレスすることで、染料が気化して布に定着する昇華転写がある。昇華転写は堅牢度も高いが、基本的にはポリエステルに限定される。
 インクジェットは天然素材でも可能だが、スクリーンプリント同様、前処理と定着させるための蒸し工程が必要になる。
 刺繍には、反物に刺繍をする場合と所定の場所に部分的に刺繍をする場合がある。現在はほとんどが多頭式のコンピュータ刺繍機を使用している。
 反物に刺繍する時に、表布、中綿、不織布等を重ねるとキルティング刺繍になる。元々、キルティングの機械はカムによって幾何学的な連続模様で縫うもので、柄を変えるにはカムを変えなければならない。主に大量生産の寝具、インテリア等に使われている。
 コンピュータ刺繍機を使えば、そうした手間は必要ないので、衣料分野ではコンピュータ刺繍機を使うことが多い。

*有料メルマガj-fashion journal(384)を紹介しています。本論文は、2019.4.1に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。  

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